45 出入り口が
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
トマとアークシュリラの二人は、一本道の通路をランタンの灯りを頼りに戻って行く。
「トマ。先に明かりが見えないけど……」
「そうだね」
前方にあるハズの穴が、全く見えない。
この通路を照らす明かりはランタンの明るさしかないのだから、外から差し込む光を認識出来ないコトは考え難い。
いくら今が夜だとしても、星々の輝きがあるから完全な暗闇と云うことはない。
二人は更に進むと、この通路は行き止まりになっていた。
一本道なので、道を間違えるコトは有り得ない。
そう、地震で壁が崩れたコトにより出来た出入り口が、今は綺麗に塞がっている。
「アークシュリラ。出入り口が塞がっているよ」
「本当だね。誰が塞いだんだろうね」
「わざわざ塞ぎに来たんだったら、祈っていけば良いのにね」
この場所を守っているモノが塞いだのなら、中が荒らされていないのかを確認しないコトは考えにくい。
それは、ここに住んで居るのなら確認しないのも判るけど、この周辺には村はおろか家の一軒も建ってなかったのだから……
さらに第三者や冒険者だったら、こんなに怪しい洞窟を探索しないで塞ぐ意味が理解出来ない。
出入り口が無くなったコトにより、二人は袋の鼠状態を脱して――言葉の意味的には全然脱してないが、言葉の感じからするとまだ袋なら出入りする所がある。
出られる所があるならば、力ずくで突破するコトが二人には可能だ。
しかし今の状況は出られる所がない、それは八法塞がりとか進退窮まった状態と言った感じに変わった。
「トマ。魔法で突き当たりの壁に穴を開けられる?」
「開けられると思うけど……」
トマはここまで言って、ふと思いついた。
自分たちがこの壁を修復したモノに遭遇していないのは、まだ修復をしていないのではないかと。
そうなると、今いるここは別の空間か、幻影になる。
だが幻影だと見た目だけで実体を伴わないから触れようとすれば判るけど、ここにある壁は確実に存在しているのだから幻影の可能性は薄い。
そうなると、これは魔法で創った空間なのか、それとも違う方法で生み出した処かは判らないが、自分たちが入ってきた所ではないコトになる。
しかし、ここが確実に別空間だと云える物証を、トマは提示するコトが出来ない。
アークシュリラは、トマが話の途中でナニか別のコトを思いついたと感じて、話の続きを黙って待った。
「ここが、本当に私たちが入った場所ならね」
「どう言う意味? 一本道だから間違え様はないと思うけど……」
「ここが魔法で創られた空間と云うコトだよ。確かに通路は一本道だから間違えようがないから、偶像があった空間から出ると違う空間につながっているんじゃ無いかと思ったんだ。だって修復したモノに私たちは会っても無いし、その気配すら感じなかったんだからね」
「ここが魔法の空間と云うコトだね。でも、トマの想像でしょ」
「確かにそれを確かめる方法はないよ。でも、修復したモノが中を確認しないコトは考えにくいよ」
「そうだね。ボクたちだって中に居るんだからね。でも、それを確認するために、壁に穴を開けてみる?」
「私の考えが間違ってたら、開けて、これを修復したモノが湖の周りに居たら面倒だよ」
「そっか。じゃ、魔方陣は」
「魔方陣で外へ出ることは出来ると思うけど、もう一度ここに来られるかは判んないよ」
閉じられていない空間なら、魔方陣によって発動した魔法の効果を防ぐコトは困難だ。
街などにある結界や耐魔法は、必ず対象範囲を決めてから発動させる。
対象エリアを決めないでかけるコトはない。
なので、ここも湖やこの通路と偶像があった空間を対象に、結界や耐魔法をかけるコトはできる。
それでも、何度も挑戦してその範囲外に魔方陣の行き先を指定すれば、ここから脱出するコトは出来ると思えた。
しかし、ここへ外から転移が可能かと聞かれれば、絶対に出来るとトマには言えなかった。
ここに結界や耐魔法が施されているとは、トマには感じられないが……
だがしかし、絶対に出来ないと言うつもりもない。
「ならば、さっきの所へ戻って、保存食でも食べようよ」
「そうだね。ここだと、外に壁を修繕したモノが居たらいつやって来るか判んないし、別の空間だとどこから現れるかも知れないからね」
実際に修復したのなら、この僅かな時間に壁を塞ぐのは魔法以外あり得ない。
更に中に居た自分たちが気付くコトが無かったコトを踏まえると、ここにだけ魔力を放出したコトを意味する。
そんな魔力の範囲を自由に定められるモノは、高位の魔法使いだろう。
普通なら魔力が周囲に漂うから……
トマは、外に居るモノが物理的な攻撃しかしない相手なら、アークシュリラ一人でも突破出来ると考えた。
しかし残念ながら外に居るモノは、魔法を使う。それも高度な魔法をだ。
そうなるとアークシュリラでは太刀打ちできない。
かと言って、自分がそのモノと魔法で撃ち合って勝てる保障は、非常に薄い。
アークシュリラと、そんなコトを思っているトマの二人は、偶像が安置されている空間の出入り口に戻って来た。
そこで、ゆっくりと顔を出して、中を覗いて見る。
誰かが居るとか偶像が動いているとか、はたまた空間内や床のマークが変わっているなどと云う変化は全く感じなかった。
「変化はないね」
「アークシュリラ。ここから見えない位置って、祭壇の後ろだけだよね」
「偶像の後ろ側にも、少しのスペースがあったよ」
「じゃ、そこに行って、食事にしよう」
「そうだね。来るか来ないか判んない状態では、落ち着いて食べれないね」
トマとアークシュリラは階段を上がって、燭台からローソクを外した。
そして元の位置に仕舞ってから、偶像の後ろ側にあるスペースに行った。
「案外広いね」
「そうなんだよ。それにここって、祭壇から見えない構造になっているからね」
偶像の後ろ側に辿り着いたトマとアークシュリラの二人は、それぞれアイテム袋から保存食を取り出す。
そして、それを囓った。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが食事をするために通路を戻るお話です。
出入り口が塞がってしまいました。
どうやってここから脱出させようかなぁ。




