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38 街から出発する

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 カングレイホの出現によって先へ進めないとトマとアークシュリラは思っていたが、イデェネルは船に乗らなくても街から出られると言っていた。

 二人も船に乗ってこの街にやって来た訳ではないから、イデェネルがファリチス――イヤこの台地の出身なら、船に乗らないと言ったコトも理解出来る。


 そこで二人は今後のコトを決める為に街の中にあるいくつかのお店で、いろいろな情報を聞き取った。


「別に船に乗らなくても、この街から出れて先へ進めるらしいね」

「川沿いを通って行けば、良いって言っていたよね」

「だったら、ボクたちは明日の朝に出発する?」

「それで行こう。じゃ、私はもう一度図書館へ行きたいな」

「じゃ、充分に英気を養えたから行こうか」


 そして二人は図書館で日が沈むまで本を読みあさった。


 そして翌日の朝を迎えて、二人は宿屋から出た。


「じゃ、先ずは河の方だね」

 コーコディェンとかカングレイホが出現する場所は、ギルドや街中で聞いて居たからおおよその位置は分かる。

 しかし、そこを通らないと船に乗るしかこれ以上進む方法がないのが、少し気掛かりではあった。


「そうだね。今朝は兵士の人たちも急いでいる感じはしなかったから、退治出来たんだろうね」

「そんな感じだよね」

「どんな生き物だったんだろうね。ギルドで展示してくれれば見に行ったのに」


 街から続く道はなだらかに下っていて、住民の家と明らかに異なる営舎らしき建物も建っている。

 そこでは、何名かの兵士たちが木で作られた人形相手に剣を振っていた。

 指導役らしき人が、たまに『相手に正対するな』とか『そんな振り方ではダメだ』と言って、見本を見せてもいる。


 その道を歩いていくと、そのまま河岸にたどり着いた。

 河岸には渡し船が泊まっていて、何人かの旅人たちが船の中に入って行っている。


「あの人たちは、河を渡って行くんだね」

「この河には橋がないから、船で行くしかないよね。それに船も立派だね。しかし大きな河だよね」


 フーフェンで見た漁師が乗っていた漁船を想像していた二人は、船の大きさに驚いている。

 その船は、馬車ごと船に乗せるコトが出来る様になっていて、乗せられる馬車も二、三輌ではなく、五、六輌は乗せるコトが出来そうだった。

 多分、外洋に出ても普通に航海が出来る船を、活用しているのだろう。

 裏を返せば、それだけ馬車を使う人たちがいると言うコトである。


 河の対岸は霞んでいて二人にはハッキリ見えないが、向こう岸にも同様に船着き場があって、そこそこの街があるのだろう。


 魚がたまに水面を跳ねている。

 それがときたま船に当たるが、船を転覆させるほど大きくないから人々も騒ぎ立てない。


「アークシュリラ。私たちはこれから河沿いに遡って行くんだね」

「こっちだよね。それにボクたちは随分下って来たから、もう崖の下まで着てると思うよ」

「じゃ、河を遡って高台が有ったら、そこから調べようか」

「そうだね。崖が見えれば良いけどね」


 トマとアークシュリラの二人は渡し船が出て行くのと同じくして、河を遡り始めた。


 少し進と壁があり、兵士が立っている。


「あすこまでが街の範囲なんだね」

「船着き場の傍は河があったから、門番用の営舎とかを建設出来る場所が限られるからこっちが壁とかを作りやすかっただけかもよ」

「確かに、ここら辺には民家はないよね」


 船着き場からここまでに、家はまばらにしか建っていない。

 その家も、河で漁を営んでいる者たちが作業場所兼倉庫として使っている感じがする。

 守衛にカードなどを見せ出発の手続きをして、壁に設置されている門をくぐった。


 道はそのまま河沿いに並んで敷かれている。

 直ぐ横は草原でなく河が石などを運んできたらしく、川縁には大小様々な石がある。

 そんな所にもかかわらず、少しばかりの植物が生えている。

 よく見ると、結構な数の小さな虫たちもいる。


 その風景を眺めながら、アークシュリラが尋ねた。

「こんな処に、討伐対象の魔物が出たんだね」

「もっとエサになるモノが多い処に、移れば良いのにね」

「ここいらなら戦えるけど、河の方は水量が多いから大変かなぁ」

「本で調べた魔物は、1メートルぐらいらしいからあの船を転覆させられないよね」

「じゃ、下りてから襲われたのかなぁ」


 さっき出航した船はとても大きかったから、簡単に転覆はしそうもない。

 それに水面から甲板までの距離も随分あったので、水中にいる魔物ならよじ登っては来られないだろう。

 そのような気休めにもならない状況判断を二人はしていた。


 そもそも討伐対象になっているのは、複数の誰かが犠牲になったからであって、ドラゴンなど災害級の魔物でないなら、出現した程度ではそこまで騒ぎにならない。

 また、今回兵士が出撃したってコトは、壁の内側に出現したコトを意味した。


「アークシュリラ。カングレイホはいなくても、コーコディェンもいないね」

「そうだね」


 二人は川沿いの道を歩いているが、コーコディェンとかカングレイホは姿を現さない。

 そもそもカングレイホは退治されたみたいだし、コーコディェンも二人が依頼を見てから二日間もあったから、すでに討伐された可能性も否定出来ない。


 魔物の出現もなく、二人は水音が聞こえる河岸をゆっくりと進んでいく。

 やはり船で河を渡る人が大多数で、あまりこの道を通る人は居なかった。


「トマの魔法って曲がる様になったの」

「弱く発射すれば早く地面に落ちるくらいで、左右はまだ全然ダメだけどね」

「簡単にはいかないね」

「そもそも射出魔法って、なんで直進するんだろうね。射出しない魔法との違いも解んないよ」

「ボクが練習している灯り(ライト)は、手のひらだけだもんね。トマは自由に浮かせられるけど……」


 トマはアークシュリラのこの発言が引っ掛かった。

 私とアークシュリラの唱える呪文は変わりないけど、術者によって浮かせるコトも出来るねぇ……とトマは理論が解らないけど、なんだか手掛かりを得た気がした。


「なんとなく解って来たかも、アークシュリラありがとう」

 アークシュリラは、トマがナゼお礼を言ったのかが判らずにいた。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが街から出発するお話です。

兵士なのか他の冒険者なのか、結局、誰が退治したか分からないけどカングレイホは退治された形にしました。

アークシュリラなら切り刻めそうだし、確か季節は雪の降る時期だったハズなので、美味しいカニ(カングレイホ)鍋を作っても良かったのですが……


特段、こっれって事件も起こらず次の街に行けそうです。


次回のお話は、4月29日0時0分に公開する予定です。

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