36 街を散策する その2
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
トマとアークシュリラの二人は、街の中を当てもなく歩いている。
「アークシュリラ。外から見えた塔って、監視塔だったんだね」
「あんな高い塔だと、さぞ見晴らしが良いんだろうなぁ」
「やっぱり、遠くまで見えるんだろうね」
「塔で監視をするってコトは、攻めて来るモノが居るのかなぁ」
「ここは台地と外をつなぐ唯一の街みたいだから、敵が来る前に見付けて対応しないと他の街や村に影響がでるからだよね」
全身を鎧に身を包んだ屈強そうな人々が、街の中を行き来している。
トマとアークシュリラの二人がこの街に来てからまだそれ程歩いていないのにも係わらず、既に何人かのそう言った人たちとすれ違っていた。
決して街事態の治安が悪い訳ではないから、常日頃からパトロールを兼ねて訓練をしているようだった。
「あすこに武器屋があるよ」
「アークシュリラ。見ていく?」
「必要ないけど、行こうか」
武器屋の扉を引こうとアークシュリラが把手に手を出すと、扉が勢い良く開いたのでアークシュリラは手を扉にぶつけてしまった。
アークシュリラは少し痛がっている。
「すまない。急いでいるので失礼する」
「いくら急いでいても、その態度はないよ。名前ぐらい言いなよ」
トマが店から出て来たその女性に言った。
「そうだな、私はイデェネルと云う。今は銀狼亭に泊まっている。もしケガをしていて治療を受けたなら、代金は支払う。それでは」
その女性は泊まっている宿屋を教えて、街の中心部へと消えていった。
「アークシュリラ、大丈夫?」
「平気だよ」
アークシュリラは手を握ったり開いたりしてみせた。
「大丈夫そうだね」
「突き指していても、右手なら問題はないよ」
アークシュリラは剣を基本的に両手で握るが、利き手である左手だけでも剣を操ることは出来る。
また、脇差しを右手に持っての戦いもしたことがあった。
「じゃ、入ろうか」
「そうだね」
今度は何事もなく店内に入れた。
武器屋の店内は、柱や壁に剣とか盾が飾られている。
「数は結構あるね」
「ところで、アークシュリラは盾って使わないの?」
「盾かぁ。ボクは両手で剣を握るから、使わないよ。それに盾で防ぐよりかは、避けた方が楽かなぁ」
トマは相手の攻撃を盾で防ぐと、その衝撃が必ず来るからアークシュリラの回答に納得した。
「それで、アークシュリラは盾を使わないんだね。見たいモノはありそう?」
「使い捨てのダガーかなぁ。きちんとしたモノは一本あるけど、敵に投げつけるヤツが欲しいかなぁ」
トマとアークシュリラはダガーが並ぶ一角へやって来て、アークシュリラは樽の中に入っている投げ捨て用のダガーを見比べている。
「アークシュリラ。普通のと違うの?」
「トマも手に取れば分かるよ」
トマはアークシュリラの邪魔にならないように、樽の中に入っているダガーを一本取った。
それは柄の部分の作りが甘く、握って切ると刃が外れそうな気がした。
「うん、確かに丈夫じゃ無いね。こっちの柄の無いのは」
「くないだね。切るコトは出来ないけど、ダガーより活用の幅は広いよ」
「この樽の中にあるのと、たいして値段は変わらないね」
「そうだね。ファリチスだともう少し高かったけど、それじゃこれにするよ」
トマには総て同じ様に見えたが、アークシュリラは真剣に並んでいるくないを一本一本確認している。
たまにくない同士を当てて音を確認したり、投げる素振りをしたりして数本を選んだ。
「これも使い捨てなの?」
「剣ほど丈夫ではなさそうだけど、何回か使えるよ」
店員の居るカウンタに行って、選んだくないを渡してアークシュリラが言った。
「これを欲しいんだけど」
「くないか。お前さんの品選びは確かだな」
「大差はなかったよ」
「うちの商品だから不良品はない。俺の言っているのは選び方だ」
「そう。で、他にはないんでしょ」
「今は出ているだけだな。それと持ち運びをするベルトやホルダーとかは、いらないのか」
「今日はいらないよ」
「そうか、必要ならまた来てくれ」
「判ったよ」
アークシュリラは代金を支払って、トマと一緒に店を出た。
店を出るとアークシュリラは両上腕部と両腿と背中にあるホルダーにくないをしまった。
アークシュリラの服は、もともと投げ捨て用武器などを収納出来る様になっていたようである。
アークシュリラの見た目は右側の腰に大小の剣を下げて居るだけだが、実際には左腰にもダガーがある。
そして、今回買ったくないが四肢などに隠してあるから、剣を抜かずとも攻撃手断は幾つも持ち合わせている。
太陽が沈んだので、晩飯を食べに宿屋に戻ることにした。
宿で出て来た食事は他の街と代わり映えしない何かの肉を焼いたモノであったが、周りのテーブルを見ると魚やカニが出ている。
まぁカニと言ってもカングレイホではなく、この街の周辺で獲れる淡水域に生息するカニである。
しかしその大きさは沢ガニのように5センチメートルくらいでは無くって、30センチメートルほどもある。
「カングレイホって、あれを大きくしたヤツなんだよね」
アークシュリラが肉を頬張りながら言った。
「そうだね。2メートルくらいって書いてあったから、手強そうだよね」
「ボクの剣で斬り付けられるかなぁ」
「大丈夫じゃないかなぁ」
二人は追加の料理を注文しなかったので、直ぐに食事が終わって部屋に戻ることにした。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが街の散策するお話の続きです。
一回にしても良かったのですが、4000文字を超えると読むのが大変かと思い二回に分けています。
次回のお話は、4月22日0時0分に公開する予定です。




