3 旅立つ
済みません!
1月2日お昼以前に読んで下さった皆さん、前回の後書きで次回の公開日を書き忘れました。
三が日ですので、今日も公開致します。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●私の作品である『異世界に転移した様だけれども……でも、一人きりじゃ無い!!』と『実は、私アルケミストなんですよ』で登場する人物やエピソードを使用していますが、展開や結末は異なることが多少あります。その為に両作品を読んでいる最中に、この物語を読むことはお薦めしません。
一週間の間にトマとアークシュリラの二人は、親や友達、そして馴染みの人々に旅に出ることを伝えた。
話を聞いた人々は、二人が思っていた通りの反応を返してくれた。中には心配をしてくれる者も居たが、ほとんどの人々は快く二人の旅立ちを祝ってくれた。
「親を含めて、ボクたちが旅に出ることを反対をする人は、いないと思っていたけど……」
アークシュリラが言った。
「そうだね。やってみると思ったほどじゃなかったね。それで、どっちに行く」
二人は、街の中央部を横断しているメインストリートに立っている。
ナゼ、その様に街を横断しているかと云うと、そもそもこの街自体が、街道の両側に家々が建って出来たものだからである。
街の発展に伴って、イツしか街道は街のメインストリートと化していった。
「左側の道は、二日でここより大きな街に着くよ。右側はどうなんだろう」
「アークシュリラは、その街の先がどうなっているのかを知らないよね」
「知らないよ」
「なら、全く判っていない右側に行こうか」
「そうだね」
二人にとっては、赤ちゃんのときから今日まで暮らしてきた街なのだから、寒くなる前に暖房で使用する薪を集めに林に行ったり、薬草拾いや草花摘みなどに付近の草原に出向いたりもしていたから、二人とも半日から一日程度の範囲にあるモノは、いくら知らないと云っても当然のことながら知っている。
しかし何日も掛けてたどり着く距離になると、話に聞いたくらいで行ったことが無いからほとんど判らない状態だった。
そんな二人が今、自分たちの知らない世界に足を踏み出そうとしていた。
「アークシュリラ。通常食って持って来ているの?」
「肉とかは重たいから、持ってきていないよ。トマは持ってきたの?」
「私も持ってきてはいないけど、もしも持ってきてたら先に食べないと痛んじゃうから聞いたんだよ」
「だったら、ボクたちは平気だね。でも、暗くなる前に木の実や食べられる草とか、動物を狩らないといけないかなぁ」
「そうだね。初日から保存食を食べていてはダメだよね」
二人は街道を歩いている。
街道と言っても、長い年月の間に大勢の人々が歩いたことにより土が固められて出来た、草の生えていない所がイツしか道になったモノである。
ほとんどの街道は、この様に人々が往来するコトにより自然に出来たモノがほとんどで、計画的に造られた道や石畳で覆われている道もあるコトはあるが、その数は非常に少ない。
二人の他にも何人もの人々が、その道を行き来している。
時折、馬車や騎乗の人たちとすれ違うことはあるが、ほとんどの人たちは徒歩である。
ゆっくり歩く者、早足で進む者など様々だし、道の端や草原に行って休憩する者も居る。
二人は喋りながら街道を進んでいく。
途中で持って来た飲み物を飲んだり、それと腹は減ってはいないが少しの干し肉を齧ったりしていた。
「まだ何も無いね」
アークシュリラはトマに尋ねた。
「まだ、太陽は……」
とトマが言いかけて、太陽が随分と西に傾いて居ることに初めて気が付いた。
「そう、もう直ぐ日が暮れるよ。野宿になるから適当な所を見付けようよ」
「そうだね」
トマはこの時になって、自分も旅に出た高揚感で周りが見えていないコトを感じた。
ダメだな私って。
「もう狩りをしている時間は無いけど、お腹も減っていないから朝まで休息で良いよね、トマ」
「良いよ。さっき保存食を少し齧ったから」
「それなら、街道から草原の方に逸れて、野宿をする場所を決めないといけないね」
二人はあまり街道に近いと馬車や騎乗の人が突っ込んで来ると感じたから、少し離れたまだ街道は見える所で野宿をするコトに決めた。
「あんまり街道に近いと危険だし、逆に離れ過ぎると危ないから、この辺りで良いかな」
「良いよ。場所を探していて夜になったら危険だからね。トマは火を熾せるの?」
「熾せるけど、燃えるモノがないと一時間程度で消えちゃうよ」
「どうせ今日は寝られそうにないから、ここいらに火を熾して」
【燃焼!】
トマは火を熾す魔法を詠唱して、火を点けた。
「うん。スゴいね」
「へっへヘ。そうかなぁ」
「そうだよ。木材もなく火を灯せるんだからね。トマはボクが断ったら、一人でも旅に出るつもりだったの?」
「アークシュリラが断ったら行かないよ」
「そうなんだ」
アークシュリラはそれだけを言うと黙り込んで、暮れていく空を眺めた。
しばらくの間、静寂が二人を包み込んでいた。
その後は、夜中に動物や魔物が現れて襲われるコトもなく、二人はとりとめのない様々な話をした。
夜空は次第に白み始めた。
まぁ動物や魔物たちも、いくら人々が居るからと言って街道の傍で襲えば、護衛などを連れて居る人が多いので返り討ちに遭う場合が高い。
そう、自分たちが逆に死ぬ確率が高いから、わざわざ街道の傍では襲って来ない。
動物や魔物だって知恵は持っているし、死を恐れない訳ではない。
また、ギルドや領主などからの依頼で、街道付近の危険な生き物や魔物たちはほぼ討伐されているために、この付近にはそう言うモノたちは出現こそあまりない。
「アークシュリラ、もう直ぐ朝日が昇るよ」
「そうだね。そろそろ出発しよう。今日は計画的に行動して狩りとかもしたいしね」
「そうだね」
二人は街道に戻って、再び歩み出す。
昼をちょっと過ぎたころ、前方に街が見えてきた。
「トマ、街があるよ」
「そうだね。私たちの所と建物の感じは同じようだね」
「そんなに遠い場所じゃないから、私たちのファリチスと同じ感じかなぁ」
「反対にある街は違ったの?」
「私には同じに感じたよ。確かイーハヌと言ってたかなぁ」
「ならここも同じやないのかなぁ」
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが旅立つお話です。
準備とかで延々引っ張ると私自身が飽きてくるので、二人には旅立ってもらいました。
次回の公開は、1月10日0時20分を予定しています。