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26 ワーグスって その1

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 トマとアークシュリラの二人はギルドでバルゼンにゴブリン討伐の結果を報告して、今回の報酬を受け取った。


「それでは今回のコトを、ギルドカードに書き込みますね」

 トマとアークシュリラ二人分のギルドカードは既にバルゼンの手元にあるので、バルゼンはそう言うと自分の机に行って処理を始めた。


 そして二人の居る所へ戻って来た。

「処理が終わりましたので、カードはお返しします。それと外見は変わっていませんが、今回の討伐はギルドにとって、イヤこの街フーフェンを救ったコトになりますので、ギルドマスター印も付けさせて頂きました」

「そのギルドマスター印って何ですか」

 アークシュリラが当然の疑問を言った。


「ギルドマスター印とは、ギルドマスターが国とか街を救ったと認めた冒険者へ与える、勲章的なモノです」

「勲章?」

「そうですね。カードを見ても分からないですが、ギルド内では分かります」

「それって売り買いするだけでも、分かるの?」

「一般的な取引では表示されませんから、気に掛ける必要はないですよ」

「それなら良いけど、ギルドで受付の度に何かを言われたら面倒くさいからね」

 魔物退治の度にギルドマスター印について聞かれるコトになったら、簡単な依頼を受けるのも億劫になる。


「名誉だけの単なる勲章なら、カードに書き込まなくてもバッジとかで良いのではないですか」

 今度はトマがそう言った。


「その印は単なる名誉だけでなく、実際の効果は面識のないギルドマスターとの面会をセッティング出来る様になります。バッジなどでは他の人に渡せますしね」

 バッジなどの品物だと、それを実際に貰っていない人も使える。

 それがセキュリティー上、あまり良いことではないのは理解出来た。


「面会はギルドマスターだけですか」

「私が発行したモノはそうです。同じ様に印を与える権限がある者は、ギルドマスターの他に国王や領主ができます。印を押した者と同格の人との面会がセッティング出来ます。その時は組織の大小は問いません。しかし、必ず面談出来る訳でもありません」


 なので、ギルドマスター印では国王との面会は出来ないと言うことになる。また、その逆も。

 その上、必ず面会が出来る訳でもないらしい。でも、門前払いを喰らわないで、配下の者たちが話ぐらいは聞いてくれる様だ。


 トマとアークシュリラは戻って来たカードをまじまじと見て、何も外観は変わっていないコトと自分のモノに間違い無いコトを確認すると内ポケットにしまった。

 そしてバルゼンとの話し合いも終わって、アークシュリラとトマはギルドを後にした。


 トマはギルドを出てから、何か大事なコトを忘れている様な気がした。

 そして宿屋へ戻る途中で、そのことに気が付いた。


「アークシュリラ。あのワーグスを縛ったままにしちゃったから、私はもう一度あの林に行くけど付いてくる?」

「ゴブリンの処理で大変だったから、忘れてても仕方ないよ。それに何かしてたんでしょ」

「うん、アークシュリラが戦って居る時に魔力を流していたよ」

「あぁ、それで結界を張ったんだね」


 林へ戻って来ると、ワーグスは未だに蔓で体を拘束されて身動きが出来ない状態だった。


「可哀想なコトに、仲間は誰一人として助けに来てくれなかったんだね」

 トマはワーグスがこの様な状況になっている張本人だと云う、自覚が全くない発言をした。

 その言葉が聞こえたのか、はたまたトマとアークシュリラの二人に気付いたのか分からないがワーグスは二人を睨んだ。


「そんなに女の子を見つめたら、ダメだよ。で、貴方はナゼいつも見ているだけなの?」

「……」

「答えてくれないね。照れているのかなぁ」


 ワーグスは自分の能力だけで、副隊長の座を占めた実力を持っていると聞いたから、簡単には口を割る様なコトはないかと二人は考えた。

 仕入れた情報では、決して家柄とかコネで副隊長に成っている訳ではなかった。


「おじさんは仲間や部下が助けてくれると思っているかも知れないけど、それは有り得ないコトだから教えてあげるね」

 そうアークシュリラが言うと、ワーグスの目の形が一瞬変わったのをアークシュリラは見逃さなかった。

 もう少し揺さぶりをかければ、喋ってくれるかも知れないな。


「あっそうだ。手足が使えないからと言って、舌を噛んで死のうなんて考えない方が良いよ。あれは苦しいだけだからね。だったらこのまま放置されて餓死した方が、何倍もましだよ」

「……」


「一言も喋ってくれないね。トマ、まさか魔法で喋れない様にした?」

 アークシュリラは、トマの方を向いてそう聞いた。

「私は、縛り上げただけしかしていないって!」

「判ったよ。騒がないの。でも、このままじゃ何も進展はしないし、どうする?」


 トマとしてはワーグスが、自主的でも無理矢理にでもどちらでも構わないが、喋ってくれるのが一番良いと思っている。

 しかし、その喋らす方法がないので困っている。


 このまま放置して、魔法ショップで自白剤を買って来ても良いかなぁ。でもあれって、精神力が高い者には効かないって聞いたコトがあるしなぁ。

 トマはアークシュリラに見つめられたままで、持っている知識を総動員して思考を巡らせた。


「じゃ、一晩この木に吊して置くから、一人で良く考えてね。もうゴブリンは居ないと思うけど、ウルフは徘徊していると思うから気を付けてね。そして明日また会えたら、良い返事を聞かせてね」


 ワーグスに向かってそう言って、トマは背を向ける。

 喋ってくれと、トマは心の中で念じた。


 しかし誰の声もしない。

 残念だねと思い一歩歩み出した瞬間、ワーグスが何やら音を発した。


「ちょっと待って」

 アークシュリラがトマを呼び止めた。

「どうしたの」

「この人、喋れないんじゃないの」

「だから! 私はそんな魔法は使っていないと、言ったよね!」

「そうではなくて、この人って元々喋れないか、他の誰かにやられたか判んないけど、今は喋れないと思うよ」


 トマはアークシュリラが言う意味を理解した。

 もし、喋れないのだとしたら、じゃ、どうやって意思疎通を図れば良いのだろう。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが、ギルドに報告してワーグスのコトを思い出すお話です。

ようやくワーグスに話が行きました。



次回のお話は、3月20日0時0分に公開する予定です。

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