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22 トマとアークシュリラの話し合い

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 トマとアークシュリラの二人は、宿屋の自分たちに宛がわれている部屋でギルドから届いた手紙について話し合っていた。

 届いた手紙の内容はゴブリンを退治するためにトマとアークシュリラへ協力を依頼するモノだった。

 しかし、その依頼主がどうしてこの街の領主でなくてギルドからかを。


「でも、領主が街で発生する問題の受付だけを、いつも商業と冒険者の両ギルドに依頼していたら、どう」

「それならば受付だけで無くて、その処置も依頼すると思うけどね」

「自己保身のために兵士とか実力部隊とかの戦力は、自分の手から離さない場合もあるよ。まして街の問題は戦う以外にもあるし」


 トマの意見を聞いて、アークシュリラは少々考え込んだ。


「確かにトマの言う通りでその理由もあるけど、それだとゴブリンくらいの魔物を倒せる冒険者がギルドや街中にも居ないと云うのが、ボクには全く理解が出来ないけどね。それに強制退去って話も聞いたしね」


 トマは確かにそうだと思った。

 初心者とか怪我をした者とかで全ての冒険者がゴブリンを倒せなくても、少しは倒せる人がいるハズである。

 ファリチスの冒険者ギルドにも、その程度の冒険者なら街で生まれ育った者の中にだって何人も居た。


「アークシュリラはこの街に強い冒険者が居ないのは、領主の所為と云うの」

「その事はスゴく気になっているんだ。もし、住民以外の冒険者を強制的に退去させながら、住民の冒険者も追放していたのなら納得が出来るけどね。領主じゃなければ、街に居られない様にするんだから、それに近い人かも知れないけど」


 旅の冒険者は強制退去でも、この街で生まれ育った住民の中に少し腕の立つ冒険者が居てもおかしくはない。

 その人たちも何処かへ連れて行かれたと、アークシュリラは考えているのだとトマは感じた。


「じゃアークシュリラは冒険者が寄り付かない街になってしまったから、クーデターを起こしたと云うの。街にいる人々は幸せそうだったから、税金が高いとかはないよね」

「まぁ権力争いは当事者しか、本当の理由は判んないよ」


 それはそうだ。住民には上手いコトを言っておけば、変に詮索などはされない。

 それに虐げる様なコトもしなければ、領主などは誰がやっていても構わないと云うのが住民たちの基本的なスタンスだ。


「だとすると、バルゼンもグルなの」

「そこは判んないけど、一応クーデターを起こした奴らは警備の人を派遣して、それで自分たちで対応出来ずにギルドマスターへ泣きついたって感じだよね」

「そうね」


 自分たちで対応出来ない……アークシュリラはしばらく一人でぶつぶつと呟いてから言った。


「そういうコトか! 今はクーデターを起こした奴らは、権限や権力の掌握に務めているんだよ。だから警備の人たちに無理に戦えとは言えない感じかなぁ」

「そんな感じかもね」

「それで、トマ。ゴブリンは何匹居たって書いてあったの」


 トマは、ギルドから届いた手紙を見直して言った。

「50匹以上だって」

「その数なら、キングもきっと居るね。書物で30匹くらいの規模ならば、キングが居ると本で読んだコトがあるんだよ。だから警備の人たちでは退治をするのが無理だと、判断したってところかなぁ」


 トマも、ゴブリンキングはゴブリンよりも大きくて、その上強いなどと本に書いてあったと記憶している。


「もし、クーデターが新しい街を作るために実行されたのなら、私たちが最悪の時期にゴブリンの情報をもたらしたね」

「警備の人たちをまだ掌握していないなら……トマ、やっぱり倒しに行こうか」

「どうして」

「恩を売るなら、高値のウチでないと勿体ないよ」


 トマはアークシュリラが云う組織を掌握しても、数日でゴブリンキングを倒せるほど成長するとは思っていない。

 さすがに住民に被害が出たらそんな悠長なことは言ってられないから、決死隊を編成するかも知れないけど……

 そうなればわざわざトマとアークシュリラの二人に頼らなくても、自分たちで問題を解決するコトが出来る。


「アークシュリラ、私たちが勝手に倒しに行くのではなくて、行くのならバルゼンにだけは伝えたら。それが気に入らなければ、ギルドに連絡だけはしておこうよ」

「そうだね。領主からの依頼は当分来ないと思うから、今からギルドマスターに伝えに行ってその足で倒しちゃおう。折角トマが手紙を書いたのに、無駄に成っちゃったね。ゴメン」


 トマとアークシュリラはギルドへ行って、バルゼンに面会をした。


「警備の人を派遣した所、ゴブリンの数があまりにも多くて対応が出来ないそうです」

「そうですか。今回の件で住民の中から冒険者……いや屈強な者を自主的に集めるコトも出来ますが、ナゼそれをやらないのですか? また、街の人たちに被害が出ていない今だと、放置するコトも出来ますよね。いくら私たちがゴブリンを倒したからと云っても、大人数のパーティーでなく2人しか居ませんよ」

「それは……」

 バルゼンはトマの放った質問が、非常に答えにくそうな感じに見えた。

 ならば話易い質問――いや話せる質問に変えていくだけだとトマは思った。


「それでは、質問を変えますね。私たちが来るまでの領主の名前を教えて下さい。それと今の領主も」

「貴女方は、何か知っているのですか?」

「質問に質問で答えるのは反則ですよ」

「それは……来る前はエルセントです。今は……それでは何を知っているのですか?」


 トマは今の領主が誰かを聞き取れなかったが、知るつもりは端からないのでバルゼンの質問に答えた。


「この街には、まともな冒険者が居ないことです」

「そうですか、貴女方くらいの冒険者なら判ってしまいますよね」

 バルゼンは少し悲しそうにそう言った。


「あっ、ゴブリンはボクたちで倒しに行くけど良いですか」

「えっ、それは街を救ってくれると云うことですか」

 今度は、バルゼンが嬉しそうにそう話した。

 喜怒哀楽がとても激しい人だと、トマとアークシュリラの二人は感じた。


「救うかどうかは判りませんが、ボクたちが倒しに行くコトは事実です。それとボクは、クーデターとか革命は肯定も否定もしないです。それにここはボクの暮らす街でないので、どちら側にも加勢も支援もしませんよ」


 バルゼンはその言葉を聞いて、トマとアークシュリラがある程度の事実を知っていると感じ取った。

 実際にはまだ想像の段階で、トマもアークシュリラも全く証拠の入手はしていない、

 なのでバルゼンの感じ取ったのは違っていて、事実は一欠片も得ていなかった。


 それでもゴブリンを退治すると言ってくれているのだから、隠し立てして話を反古にされては困る。

 バルゼンは隠し立てしても意味のないコトと判断をして、自分が知っているコトを話してくれた。


 その内容は、トマとアークシュリラが宿屋で話し合ったコトと大まかにズレてはいなかった。

 違っていたのは領主一族はまだ死んでおらず、今もどこかに幽閉をされて居るらしいコトだけだった。

 これは公開処刑をするためであって、罪を赦している訳では決してなかった。

 バルゼンはその場所とかも語っていたが、それをトマとアークシュリラの二人は全く理解が出来なかった。

 二人が詳しく尋ねていて話の腰を折る様な真似をすると、ようやく語り出したバルゼンが話をやめる場合があると思ったからである。


 領主を幽閉したのも、領主がこの街に冒険者が来ると強制的に退去させてしまう様になったので、旅人や商人も来る数が減ってしまった。

 当初は街中で暴れる冒険者だけだったが、次第に総ての冒険者になっていった。

 そして最近になって、この街で生まれ育った冒険者も追放する様になってしまい、この街から護衛として派遣も出来ない状況になってしまった。

 それにより、更に旅人や商人も減ってきた。


 このままでは街の経済が回らなくなって、遠くない将来必ず破綻して滅びるのを待つコトになる。

 なので、領主に考えを改めるよう何年にも亘って、幾度となく進言をしてきた。


 しかし聞き入れてもらえずに、ついに領主一族を拘束して幽閉するコトを決めて、10日程度前に決行したそうである。

 その上、領主は歳を重ねるに従って頑固になっていき、この街のためにならないルールも制定しようとしていたとも言っていた。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、前回の続きでトマとアークシュリラが宿屋で語るところから話はスタートします。

そしてギルへ行ってバルゼンと話し合います。

今までの答え合わせにもなっていますが、書き込んでないコトも出て来てなんでそう言う結論になったってこともあるかも知れないですね。

推理小説でないので、描写を詳しく書いていると長たらしくなってしまうので……


次回のお話は、3月7日0時0分に公開する予定です。

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