20 街での捜索?
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
宿泊を一週間延ばしたコトにより、トマとアークシュリラの二人にはこの街で使える時間が出来た。
二人は2日目に警備の人々が林へ派遣されたことを、顔馴染みになった店から教えてもらった。
二人はどの街でも、一泊、長くても二泊しかしていなかったので、あえて馴染みの店などを作る必要性はなかった。しかし、今回は一週間も居るのだからと、いくつかの商店では馴染みの客となっている。
元来、警戒されずに人の懐に入るのが上手い――いや持って生まれた性分、天性って感じのアークシュリラにとっては、それは意図も容易いコトであった。
本人としてはそのお店を情報源にしようなどと云う思いはまったくなく、自分たちにとってその方が楽しく過ごせると考えての行動だった。
「本当に剣を持っているのって、アークシュリラだけだね」
「そうだね。お店の人たちに聞いたけど、別に剣を持って出歩いたらいけないと云う決まりはないって言っていたよ。それに魔法使いもトマしかいないよね」
街を散策していて強そうな人も見掛けたが、それは漁師や店員などであって冒険者には誰一人として出会うコトはなかった。
「それとお店の人たちが言っていたけど、少し前までは冒険者は街に居ることが出来なかったそうだね」
「強制退去って話だよね」
「そう、だから宿屋の人もいつもの調子で、ボクたちが泊まる時にあんな質問をしたんだね」
「冒険者がいくら強くても街を支配するなんて出来ないのに、そんなコトをして何に成るのだろうね」
「領主にとっては、ただの自己満足か保身かなぁ」
今では宿屋から海岸への散歩は、既に完璧な日課となっている。
店員だけでなくて舟を出して魚を取ってくる何人かとも、直ぐに打ち解けて世間話をする仲になっていた。
そして、舟で海上に出てみないかと、何人かに誘われもしていた。
しかし、二人とも舟に乗って海上へ行くことに踏ん切りがつかず、未だに行けないでいた。
それは、しょっぱい水――海水に入りたくないだけで、決して二人が泳げない訳ではない。
この状況では、泊まっている間に海上へ行ける確率は、悲しい話になるけどかなり低い。
今日も日課となっている海を見に行こうと歩いていると、前方に見覚えのある姿を見つけた。
あの男、やっぱり居るじゃんとトマは思って、アークシュリラに小声で話し掛けた。
「林に居たのは、あの男性だったよね」
「そうだね。あの剣は、間違いないよ」
今も居るってコトは、警備の人でなくてもこの街の住民である可能性が高いとトマは思った。
「あの人が警備の人か、確認する方法ってあるかなぁ」
「トマ、その前に名前を知らないことには、調査のしようがないよ」
「確かに」
いつものように海までの道のりにあるお店で世間話のついでに、警備の人の格好などを聞いた。
「あの人って強そうだけど、ボクに剣術を教えてくれないかなぁ」
「どの人だい」
「あすこに居る、剣をぶら下げている人」
「ワーグスか、止めときな。腕は良いらしいが性格が悪いからな」
「そうなの。じゃ止めるね。教えてくれてありがとう」
難なく男の名前が判り、海から帰る時にはワーグスが警備隊の副隊長であるとかの情報も入手が出来た。
翌日も砂浜で幾つかの貝殻を拾ってから、トマとアークシュリラはそこに座って海を眺めていた。
「ねぇトマ。この海って、どこまで続いているのかなぁ」
「舟に乗っている人たちは、ずっと続いているって言っていたよね」
「終わりは無いのかなぁ」
「どこかに、あるんじゃないかなぁ」
「そこって、どうなっているんだろうね。高い壁が有って水が流れていかない様に成っているのかなぁ」
トマとアークシュリラは2、3日こんな会話をしていた。
この星が丸いと占星術師や一部の船乗りらは言っているが、まだ一般的な考えには成っていない。
「ところでアークシュリラ。どうして最近になって、街に冒険者が居られる様になったのかなぁ」
「それは、それを決めていた領主が、もうこの世に居ないからだよ」
アークシュリラが爆弾発言をした。
「領主が亡くなったなら、新しい領主が就任するでしょう。それに街中でも、領主が亡くなったって騒いでなかったよ」
「普通に亡くなって居たらね。ボクの考えでは暗殺かなぁ。それも一族皆殺しのクーデターだよ」
トマはどうしてアークシュリラがその結論に至ったかを知りたかった。
「えっ、どうしてなの」
「この街で暮らしている人たちが一切知らないのに、ボクたちがいても強制追放になってないからだね」
「そうか。冒険者らを街の外に連れ出すのって、屈強な店員でも簡単なコトではないと言うんだね」
「そうだね。ボクなんかでも暴れれば事件になるよ」
アークシュリラは自分が弱いと思っている感じだが、決して弱くはない。もし剣を抜いたらば、5人以上の訓練を受けた人は欲しいとトマは思った。
ここでアークシュリラは強いよと言ったら、話は違う方向に進んでしまう。
トマがどう返事をしようかと少し考えていたら、アークシュリラが続けて話しだした。
「今まで冒険者たちを追放していた人たちが、最近になって機能していないとボクは感じたんだ。どうして機能していないかを考えて、それで指揮命令を出す人がいないとの結論に達したんだ」
「でも……そうだね」
トマは隊長などが不在でもそうなると思ったが、直ぐにその上が命令を出せば済むこととの考えに至った。
なんせ、この街で一番偉い人が決めたルールなのだからね。
なのでアークシュリラの話は突拍子もないが、そんなに外れてはいないとトマは思えた。
しかし、このコトを街の人々に確認をする訳にはいかない。
トマとアークシュリラは出来るだけ街中を散歩して、そのコト――いや、些細な違和感を汲み取ろうとトマは考えていた。
また、アークシュリラも自身の言った話の証拠を見つけようと思っていた。
何日かをその様にして過ごした。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが街中で話を聞き回るお話です。
最初は台本?って感じになってしまったので、ずいぶんを推敲しました。
私自身はナゼそう言ったかとか、その結論に至ったかを一度書いているので理解出来ますが、推敲したことによって初見のみなさんとっては読みにくくなっている箇所もあるかも知れませんね。
すみみません。
次回のお話は、3月1日0時0分に公開する予定です。




