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2  旅立つ準備をする

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●私の作品である『異世界に転移した様だけれども……でも、一人きりじゃ無い!!』と『実は、私アルケミストなんですよ』で登場する人物やエピソードを使用していますが、展開や結末は異なることが多少あります。その為に両作品を読んでいる最中に、この物語を読むことはお薦めしません。

 トマとアークシュリラが旅に出るコトを約束してから数日が過ぎ去った。


 アークシュリラは朝早くに訓練場に来て昼頃まで、時間がゆるせば仲間や訓練生などと模擬戦をしたり素振りをしたりと様々な練習を繰り返していた。

 いくらかは訓練に対する真剣度は向上してはいるものの、今の自分自身に足りないモノがナニであるか、それを補うためにはナニを追加する必要があるか判らずにいた。

 はたまた、もしそれらが判明したところで、どういった方法で訓練をすれば良いかも不明だった。


 訓練場に居る者達との模擬戦では、指導者の立場であるアークシュリラでは負けることが有り得なかった。

 そのことが、問題解決の糸口すら見付けられずにいる原因なのだけれども……本人もその点は判ってはいる。

 街には道場と呼ばれるモノは幾つかあった。

 しかし、そこを訓練場と言わずに道場と言うのは、あくまでも初歩的なことを教える場所であり、本格的な剣術を学べる処はこの街にはここだけしかなかった。


 そもそもの話、この世界では十才程度になると自分が将来やりたい職業の訓練を初め出す。

 なので初歩的な道場は、街に複数箇所存在している。


 自分が将来やりたい職業なので、魔力がある者が魔法使い、腕力がある者が剣士と単純な話ではない。中には魔力が少ない者が魔法使い、腕力が他の人より劣る者が剣士をやりたい場合もある。


 家族と相談してその職業が無理だと理解出来れば良いが、納得出来ない者もいる。しかし、訓練によっては非常に上達するコトもあるから、一概に否定も出来ないから困ったコトになる。

 道場は、訓練場に来る前に多少なりとも心構えを持たせる……自分にとってその職業が向いているか、向いてないかを判断させる意味合いが強い。

 それが幾つもあるのは、まだ子供として頭からその行為・考えを否定するのではなく、やりたいのならやらしてみるためである。

 当然のことで、納得が出来るまでに怪我をする場合もあるし、少し囓っただけで無謀なことをして亡くなることもある。


 それを、この世界の人々は可哀想だとは思わない。

 そう云うふうに人々が考えるのは、親や周囲の大人たちがその子が死ぬまで面倒を見られる訳ではないからである。まして危なくなって傍に誰も居なければ、助けてくれることもない。

 親や周囲の人々も子供が十才になれば、一人前の者として対応をする。

 それはイツまでも子供扱いをしていて中途半端に関わっていると、いざという時にも対処してくれると勘違いをするからだ。


 決して放任主義とか、子供に対して無関心と言う訳ではない。

 それにこの世界では、一度選んだ職業でも向いていないと判れば、たとえそれで大怪我を負っても死ななければ職業を変えることは出来るし、何度でもやり直すことも出来るのもある。


 そのような世の中でアークシュリラは何年もの間、訓練と練習を重ねている。

 訓練場へ一緒に入った仲間も、一人また一人と冒険者とか雇われ剣士や兵士などになっていった。

 成功しているとの話を聞くと、私もそろそろ卒業かと思う反面。怪我して体が不自由になったとか、亡くなったとウワサで聞くと、まだまだと訓練場を出て行く気が失せることを繰り返していた。

 早い話、アークシュリラは自分に自信が持てずにいたことで、訓練場を出て行かずイツしか自分が人々を指導する立場に変わっていったのだった。


 トマの方も、自分が魔法を教えて貰った師匠である魔導師(ウィザード)に、何冊かの魔道書を借りて支援魔法の使い方……詠唱方法を複数覚えることが何ヶ月か掛けてようやく出来る様になっていた。

 でもそれは座学の話であり、実際にそれを魔物などに試す機会はなかった。


「まさか街中で発動させる訳にはいかないよね。林でも火球(ファイヤーボール)の使用は無理かなぁ」

 ぽつりと口を突いて言葉が出てくる。

 しかし、火事になるとかを気にしないで良い土壁(ソイルウォール)などは使えるようになっているから、試さないでも平気かと自分自身を納得させていた。


 そんなトマだが、街中を散歩していてアークシュリラに出会うことが幾度かあった。

 ナンか今日のアークシュリラからは上手くいっていない感じが滲み出ているなぁと感じたトマは、アークシュリラに話しかけた。


「悩みがある感じだけど、私で良かったら話を聞くよ」

「ありがとうトマ」

「立ち話もナンだから、どこかのお店に入る? それとも広場へ行く? 別の場所でもいいけど……」

「じゃ、広場で……」

「判った。じゃ行こうか」


 当たり障りのない会話をしながら、二人は広場へ向かった。

 そしてベンチには座らず、芝生に腰を下ろした。


「で、どうしたの?」

「旅立つ練習はしているけど、どんどん自信が無くなってくるんだよ」

「アークシュリラって、少し前に護衛の依頼を受けたことがあったよね」

「うん。その時に隣町まで行ったんだよ。トマには話したと思うけど……」

「その時はナニも出てこなかったっけ?」

「少々の魔物と遭遇したけど……」


 トマは、以前にアークシュリラから護衛の依頼を受けた話を聞いた記憶があった。

 その時の会話の内容を思い出しながら、アークシュリラとの会話を続けた。


「どんな魔物だったの?」

「出て来たのは、ウルフの集団だよ。集団と言っても10匹くらいだったけどね」

「確か、護衛はアークシュリラだけだったよね?」

「うん。まさか街道であんな数が襲って来るとは雇い主も考えて無かったみたいで、ボク一人だったよ」

「それを一人で、かすり傷一つもなくやっつけたんだよね」

「相手はウルフだよ」

「普通の人じゃ、5匹以上の集団が相手だと、かすり傷……いや怪我くらいはするよ」

「そうかなぁ」

「そうだよ。だからアークシュリラはもっと自信を持って良いと思うよ」

「うん。判った」


 アークシュリラはそう答えてきたが、トマにはまだアークシュリラの自信が足りていないと感じた。

 しかし、実戦的なことは私じゃ無理だし、もう強制的に旅立つしか方法はないかなぁと考えだしていた。


「このままじゃ、イツまで経っても旅に出られないから、予定より随分と早くなるけど来週あたりに旅に出ようよ」

 トマはそう言ってアークシュリラの回答を待った。


「うん、そうだね。私の自信がついた時だとイツになるか分かんないよね。それにこの付近なら居てもマダーフォンやウルフくらいだしね」

「そうだよね。書物に出て来るような凶悪な魔物が出現したと云う話は聞かないよね。でも、訓練場の指導者とかは急だと困らないの? ホントに大丈夫なの」

「そこは平気だよ。旅に出ると決めた次の日に、指導する人々には言ってあるからね」

「そっか。安心したよ」

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。


●今回は、二人が旅立つと決めてからの後日譚です。

二人が自分は旅をしても平気かと悩んでいる話にしたかったのですが、この様な回になってしまいました。

トマが魔導師に訓練を受けている話も一応書きましたが、とんでもなくくどくなったのでバッサリとカットしました。

その割りにはアークシュリラの心情描写などが出来ていないので、???が付くと思う点があるかも知れません。

今後ともよろしくお願いします。


≪1月2日、以下追記≫

明日1月3日も0時30分に公開します。

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