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18 魚のいるところ

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 宿屋に着いた二人は、店の中に居る店員に声をかけた。


「一泊したいんだけど出来る」

「ところでお前さんたちは冒険者なのか、それとも旅の途中かね」

「旅の途中だよ」

「判った、なら泊まっていってくれ。一泊だな、部屋は二人部屋で良いか、それとも個室か」

「二人部屋でお願い」



 宿屋の店員が何で冒険者と聞いて来たのかが二人は疑問に感じたが、不興を買って宿泊出来ないとマズいので敢えて尋ねなかった。


 この街で一泊するコトにしたのは、ずっと野宿ばっかりだったので体を休めることが主な目的だが、その間村や集落で必要なモノを物々交換をしていたとは云え、やっぱり不足気味の品物はある。

 それらを補充するコトも兼ねてであった。


 いくら自分たちが不足気味の品物を補充と云っても、お店で必ず売っているとは限らない。まして、物珍しいモノや見たことのない商品があるかも知れない。

 なので、トマもアークシュリラも宿泊は久しぶりだったから、のんびりと部屋で過ごしても良かったが先ずは二人で街の散策を楽しむコトにした。


「トマ。この街って、魚を売っているお店が多いね」

「そうだね。それも干物でないモノだね」

「ファリチスでも、たまに干した魚は売ってたよね」

「そうだけど。ファリチスの近くにも、魚が獲れる場所ってあったのかなぁ。でも、これだけ多くあるんだから、この街って絶対に魚が獲れる所が近くにあるハズだよ」

「そうだね。ちょっと店員さんに聞いてくるよ」


 アークシュリラは店内に居た人に魚が獲れる場所――そう、海の場所を聞いた。


「トマ! ここから南へ行けば直ぐだって」

「アークシュリラ。南って、どっち?」

「えっと、確か神殿は南向きに建てるハズだよ」

「じゃ、さぁ、アークシュリラ。その神殿は一体どこにあるの」

「無いよねぇ……それじゃ……夜になれば星の位置で判るよ」

 トマは少しあきれてアークシュリラを放置したまま、店の人に南の方角――海のある場所を聞きに行った。


「判ったよ。あっちらしいよ」

 トマが腕を上げて指差した。

「こっちか、ボクたちって今まで南へ進んでいたんだね」

「そうなるね」


 アークシュリラがどうしても欲しいと云うので、途中にあった雑貨店で手のひらに載るおもちゃみたいな小さな方位磁石を購入した。

 トマは『あんたって星の位置で方角が判るんじゃないの』と、喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。


 このような無駄と思える買い物をするコトもある。

 そんな些細なことでも、二人旅の楽しさでもある。

 また、同じ雑貨店で今持っているロープよりずっと長いモノや虫めがねとか、鏡も手に入れるコトが出来た。


 と言っても、二人が持っているロープを全てつなぎ合わせても、崖下には全然届かない長さである。

 それと、二人は鏡を最初から持っていたけど、ここで買ったのは今まで二人が持っていた鏡より随分と小さなモノで、ポケットに納まるサイズのモノであった。


 ついでに言えば、コショウなどの香辛料もこの街では売ってはいたが、値段はとても高かった。

 雑貨店に来るまでの幾つかのお店から、香辛料の薫りが漂うコトがあったが、二人にとっては匂いと商品が一致していないし、使い方も良く分からないので全く欲しいと思うモノではなかった。


 そもそも二人の持っているアイテム袋は入れておけば肉などは腐ることも無く、いつでも獲れたての状態をキープしてくれているのだから、塩だけで充分に食べるコトが出来た。

 なので、あえて香辛料などの薫りで、誤魔化す必要も無かった。

 しかし、肉の匂い消しに使える物もあるので、ウルフなどの肉も獣臭を和らげてくれるのだがね。


 二人はそのまま南へ進んで行った。

 もう既に前方に海が見えているが、海を見たことのない二人には、少し違和感のある空だと思っていた。

 更に進んで違和感がある空だと思っていたモノが、水がたくさんあるモノだとようやく気付いた。


「トマ、ここに魚が居るんだね」

「アークシュリラ。とっても大きいね」


 アークシュリラは波打ち際で、しゃがんで海水を両手で掬い匂いを確認した。


「トマ、この匂いだよ。さっきから感じていたモノは」

 わざわざそのようにしなくても、磯の香りは分かる。

 アークシュリラがそうしたのは、この街の空気自体がそうなのか海水がそうなのかを確かめるためだった。

 アークシュリラの行動を見て、トマも両手で海水を掬って匂いを嗅いでから飲んでみた。

「この水ってしょっぱいよ。こんなにあるのにこれじゃ飲めないよ」

 アークシュリラももう一度海水を掬って飲んでみた。

「本当だ。こんなにしょっぱいのに、ここで暮らしている魚がしょっぱくならないのが不思議だね」


「私たちって、本当に知らないコトが多いと気付いたよ。世の中にはこんな所があるんだね。今の私たちではこの先へは行けないけど、アークシュリラ、イツか行きたいね」

「トマは水の上じゃなくって、水の中に行きたいんでしょ」

「そっちの方が興味があるかなぁ。上ならあの乗り物で行けるしね」


 トマは水上に浮かぶ漁船――二人にとっては乗り物に腕を向けた。

 そして波打ち際で生まれて初めて見る貝殻などを拾ったり、周りに居る人たちに様々なコトを聞いたりした。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラの二人が、久しぶりに街で過ごすお話です。

ファリチスは海に面して居ない街なので、行商の人がお店に持ってきた時だけ販売されるかんじですかね。

干してあれば直ぐには腐らないし……

でも、ファリチスの街では、潮の香りがたまにするので海とそんなには離れて居ませんよ。

しょっちゅうで無い事から、強風の時だけかも……


宿屋の店主の聞き方がおかしかったりとなんかありそうですね。


次回のお話は、2月23日0時0分に公開する予定です。

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