表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/103

16 何かがいるね

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 林の中を少し進んだ処で、アークシュリラは振り返って後ろを見るとすぐさま前方を見る。


「アークシュリラ、どうしたの?」

「左側の林の方に、何者かが潜んでいるね。この道を行き来する人々を観察してるのかなぁ」

「ここは、そんなに危険な所って感じではないよ」

「じゃ、もしかしたら、そのモノたちが襲って来るかもね。周りで剣を持っているのはあの人とボクだけで、魔法使いはトマ以外に居そうにないから……」


 トマも周囲に目をやる。

 子供を連れた若い女性が、二人の少し後方を歩いているのが目に入った。

 剣を持っている人は随分先にいる。

 あの人を呼び止めるのは少し無理かなぁと、トマは感じた。


「アークシュリラだけでは、対応出来ない数なの?」

「数はそんなに多くないと思うよ。で、来るとしたら、さっき通り過ぎた木の辺りからだと思うんだ。ボクに向かって来てくれれば、一人でも退治出来ると思うけど、木々があるからボク以外の方向に行かれたらちょっと面倒かな」

「それなら、後ろを歩く親子が行ったら、先制攻撃をしようか。私の攻撃魔法は全部直進しかしないから、この木々の中ではあまり期待しないでね」

「そっか、判った。ならばトマはここに残って、往来する人たちにそのことを伝えててよ。下手に騒がれたり林の方に行かれたりしたら大変だからね。それにこの場所なら魔法も使えるでしょ」

「ここならば、確かに使えるよ」

「ならば相手が出て来るのを待っていても仕方ないから、ボク一人で林の中に行ってくるね」


 二人は道の端に寄って、親子が通り過ぎるのを待った。

 子供が立ち止まっているトマとアークシュリラを不思議そうに見てから、少し笑った様に見えた。


「じゃ、行ってくるよ」

「あんまり無理をしないでね」

「トマの方が大変だけど、よろしくね」


 アークシュリラが音を消して木々の間を縫って行くと、直ぐに醜い小鬼たちの姿を見付けた。

 こいつらだったら、街道を行き来する人々を警備して居る訳ではなさそうだねとアークシュリラは思った。


 小鬼たちは道を行き来する獲物を物色するのに忙しく、まだアークシュリラの存在に気付いてはいない。

 アークシュリラは相手に気付かれる前に、近くにいた小鬼を斬りつけた。


 アークシュリラが林の中に入って直ぐに、剣と剣が撃ち合う音がトマにも聞こえだした。

 トマは錫杖を構えながら、大声で言った。

「魔物が居るので早く通り過ぎて! 絶対に立ち止まらないで! 早く通れない人は、私の友達が今倒しているから、その場所で少し止まってて!」


 その声を聞いて道を通っている人々は、足早にそこから遠のいてくれたり、少し離れた所で立ち止まったりしてくれた。

 その道に居た人々が旅慣れた人々だったのかも知れないが、誰一人としてパニックになる者はいなかった。

 それとトマが持っていた杖が一般的な魔法使いが使うモノでなく、錫杖だったコトで音が鳴ったコトも人々が注意を向けてくれるのに役立った。


 アークシュリラの方は、小鬼がウルフの様に一撃で倒せなくて取り囲まれていた。

 しかし、アークシュリラがその様になっていたのは、小鬼たちに自分が弱いと錯覚させて全員が自身を攻撃させるためである。


 最初から敵わない相手だと小鬼たちに思われて街道へ行かれたら、一人で道を行き交う人々を見ながら小鬼に攻撃するのは、トマに負担が大き過ぎると考えてのことである。

 それが、自分が行くまでの僅かな時間であっても……


 アークシュリラがそう考えたのは、通行する人々全てがトマの云うコトを素直に聞いてくれれば簡単なコトだ。しかし、そこに居る人たちも自分が万が一にも怪我や死亡するかもと云う状況では、そんなコトを期待する方がどだい無理な話である。


 この様な訳で、決して小鬼たちの戦い方が上手かったから、アークシュリラが囲まれている訳ではない。

 なのでアークシュリラはそんな中でも、冷静に周りの状況にも注意を向けられていた。

 少し前にトマの叫ぶ声がアークシュリラの耳に届いていた。そして人々がパニックになっている雰囲気がなかったので、彼女は少し戦い方を変えるコトにした。


「少しは腕が立つ様だね。でも、残念だけどその程度では、ボクにケガをさせるコトは天地がひっくり返ってもないよ。もう遊びはお終いにしようか」

 アークシュリラはそう独白した。

 小鬼たちはアークシュリラの言った言葉を理解出来ていないから、相変わらず剣で向かって来る。


 ボクの方へ自分から来てくれると、本当に助かるよとアークシュリラは思った。

 そして一匹一匹と、自分に血しぶきが掛からない場所から小鬼の首を刎ねていく。

 この刀は、本当に良く切れるね。


 アークシュリラが全ての小鬼たちを始末し終えたと思っていた所、林の奥から更に四体の小鬼たちがやって来た。

 数こそ多いモノの、もう戦闘と言うよりアークシュリラにとっては作業――そう試し斬りのテストみたいなモノである。


 ウルフで出来なかった剣の向きを考えて打ち込んだり、突いてみたりもしていた。

 全ての小鬼が倒れたので辺りが元の静寂に包まれだす。

 トマが、人々に対して叫んでいる声が再びアークシュリラにも聞こえて来た。


 アークシュリラは少し様子をみていたが、再び小鬼たちが現れるコトはなかった。

 アークシュリラは、声のする方向に向かって叫んだ。

「トマ! 終わったよ。お疲れさん!」


 少し経ってから、トマの声が聞こえた。

「うん、判ったよ!」


●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、アークシュリラが久しぶりに戦う?お話です。

この程度の小鬼たちでは相手にならないくらいにアークシュリラは強いです。

手に汗握る戦闘シーンを期待していた人ごめんなさい。

もともと期待してないよって、言わないで下さいね。

致命的なダメージを受けますから……


次回のお話は、2月17日0時0分に公開する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ