13 久しぶりの街
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
崖沿いを歩いていて思いがけず動物などが出て来たら、大変な事態になると二人は考えた。
なので崖から少し戻って、進路を右に変更した。
二人が左側に崖を見ながら進んでいると、右手に人の往来が見えてきた。
「アークシュリラ! あすこに何人もの人が歩いているよ。あれって道が有るんじゃない」
「それっぽいね。人々の格好が軽装だから、近くに街も有りそうだね」
「そうだね。塩とかが残り少なかったから、助かったね」
「ウルフの毛皮とかを売って、不足気味なモノを補充しよう」
2人は足取りも軽く草原から街道にやって来て、今までと同じ進行方向に進んでいく。
そうすると、直ぐに城が見えてきた。
「トマ、あれってお城だよね」
「多分ね」
トマもアークシュリラも、物語の挿し絵以外でお城を見たコトは当然ない。
なのでこの城が大きいのか、はたまた小さいのかの区別は出来ない。
そして初めてそれを見た興奮が強くて、もう城の造りや築年数なんかも全く関係なくなっていた。
「お城があるから、王様が居るのかなぁ」
「悪いお妃や家来とかが、居るかもよ」
「そうだね。その者たちが、世界征服を狙って居るかもね」
二人は、物語で読んだコトのある人物像を話している。
それが、一般常識と酷くかけ離れているかなどとは、微塵も思ってもいない。
もし、そんな酷い王様やお妃だったら、物語ですら懲らしめられているのだから、とっくの昔に成敗されているハズである。
それは、この世界には凄腕の冒険者だって、何人も居るからだ。
居たとして、領民や配下などを苦しめている小悪人くらいだろう。
他の人に聞かれたら、とても恥ずかしい会話をしながら二人は歩いている。
お城は徐々に大きくなっていき、街自体を取り囲む高い壁も見えてきた。
それに設けられた出入り口に、二人は少しずつ近付いていく。
今までの街では、そこへの出入りは自由に出来ていたから、二人は何で人々が並んでいるかが判らなかった。
しかし、誰一人として並ばずに直接街に入ってはいないので、取り敢えず二人も他の旅人と同じ様に列に並んだ。
そこで前に並ぶ人たちの行動を観察したり、聞き耳を立てたりしていた。
「まさか、ギルドカードが街の出入りに必要とは思わなかったよ」
「身分を証明するのに、都合が良いんだろうね」
なんとか無事に、二人は街の中へ入るコトが出来た。
二人は怪しまれずと思っていたが、キョロキョロしていたから端から見ればとても怪しい動きだった。
しかし、並んでいた旅人も何度もこの街へ来ているし、守衛の人も昨日今日やり始めた初心者ではない。
街に来る者の中で月に何人かは同じ様にキョロキョロして居るから、他のモノたちは気にも留めていないだけだった。
街の中にある道には、ずっと先まで石畳が敷き詰められている。更に、建物も見える範囲で言うと、レンガや石造りがほとんどであった。
ファリチスに建っている様な、木で出来た家はない。
二人はこの様な街が初めてなので、まるで物語の世界、そう夢の国に来た様に感じた。
「高そうだから、モノを売って最低限だけにしようか」
「そうだね、アークシュリラ。今回は宿屋で宿泊するのを諦めよう」
もう、二人は完璧なお上りさん状態である。
先ず二人は、いつも通り冒険者ギルドへ向かうコトにする。
ここは今までとは違い、冒険者ギルドと商業ギルドが完全に別々の建物になっていた。
更に公式なギルドではないが、魔法使いとか僧侶や戦士などの職業別のギルドもあるらしい。
公式でないとは全世界共通でないと云う意味であり、この街からは正式に認められた組織である。
そのために、ぼったくりとかアウトローの怪しい人物が運営しているとかでは決してない。
二人は道すがらに並ぶお店とか通行する人にギルドの場所を聞いていたので、それらの情報を入手するコトが出来た。
「トマ。売っているモノは、それ程高くはないね。これなら塩とかも沢山買えるかもよ」
「まぁ、沢山は要らないけど、少し多めに買うのは良いかなぁ」
そうこうしていると、冒険者ギルドの建物に到着した。
二人にとって五層の石で出来ている建物は、来るモノを選別している様にしか見えない。
そんな建物なので入るのに二の足を踏むが、アークシュリラが勇気を持って冒険者ギルドの扉を引いて中に入った。
続いてトマも中に入る。
「アークシュリラ、中はあんまり他のギルドと変わんない感じだね」
「本当に良かったよ。先ずは掲示板だね」
二人は緊張しながらも、いつも通りに掲示物を確認していく。
「トマ、たいした討伐の依頼はないね」
「そうだね。警護とかが多いかなぁ」
「ここでは冒険者じゃなくて、兵隊が倒しているのかも」
「騎士とか?」
「そうかもね」
次第に、二人の緊張が解けだしていく。
「じゃ、受付に行って不要なモノを売っちゃおう」
「そうだね」
二人は受付で結構な量の毛皮や魔石を売って、現金に変えた。
「大金持ちだね」
「アークシュリラ。何人かがこっちを見ているよ」
トマがアークシュリラの耳元で囁く。
そのモノたちは、トマとアークシュリラがギルドに入って来たときには、なんだ初心者冒険者かと思って一瞥しただけだった。
しかし、二人が毛皮とかを大量にアイテム袋から取り出したので、興味が湧いて見ていたのだった。
なので、アークシュリラが言った大金持ちと云う言葉に反応した訳ではなかった。
「アイツらなら平気だよ」
「知り合い?」
「知らない人。でも、全く強くないよ。なんならウルフの方が強いかなぁ」
トマとアークシュリラがギルド内に居る間は、そのモノたちは視線をたまに向けるだけで動かなかった。
トマはよかったと安堵した。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが久しぶりに街にやって来たお話です。
なんか怪しい人たちに目をつけれらたみたいですね。
次回のお話は、2月9日0時0分に公開する予定です。




