12 行き止まりだ
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
ふたりはウルフの解体をし終えて、塊に出来なかった切れ端を焼いて食べることにした。
二人の家でも、ウルフの肉は食卓に出ていたから味は知っている。
獲れたてに係わらず、この肉はそれ自体が獣くさいので決して美味しくはない。
これなら、カエルの魔物であるグルヌイユの方が美味しい。
生きている姿や加工されるまでなら、ボツボツがあって気持ち悪いグルヌイユよりも、毛並みの綺麗なウルフの方が何倍もましだが……
それに焼いたからなのか、とても噛み応えが増している。
魔物の肉なので、毒があると云う訳では決してない。
この世界の人々は、どんな生き物の肉でも熱を加えずに食べると、食あたりの危険があるので基本的に生で食べるコトはしない。
だから、普通は肉を良く焼いたり、煮たりしてから食べている。
そもそも、この世界の陸上で暮らしている生き物たちは、どれも噛み応えのあるモノばかりである。
それは、決して魔物であるからと云う訳でもはない。
この星で魔物に分類されているモノは、魔石を体内に保持しているモノである。
なので人々を襲うとか、魔法を使ってくるとかは全く考慮されていない。
あまり多くはないが、魔石を体内に持っていない生き物でも、魔法を使うモノはいる。
また、魔石を体内に持っている生き物でも、人々を襲わないモノもいる。
そんな世の中なので、何で魔石がある生き物と、そうでない生き物の二種類が存在するのかを、知っているモノや気にして居るモノもいないだろう。
そんなウルフの肉だが6匹分も手に入ったので、二人にとって当分の間は狩りをしないで済む様になった。
軽い食事が終わって、二人はまた歩き始めた。
二人が草原を何日も進んでいるうちに、ウルフの肉を食べて在庫量を減らしたり、逆にウルフの襲撃に遭って肉の量が増加したりを繰り返していた。
まぁ二人は、ウルフ以外にもボアやマダーフォンとかも倒しているから、食べる肉の種類がいつも同じと云うことはなく、選択が出来る様にもなって来ていた。
トマも未だに慣れない手つきだが、文句を言うでもなく倒した生き物の解体をしている。
かなりの距離を歩いて来たが、獣道以外の道は全く現れてこない。
その間に村と云うのか集落は幾つかあったので、肉や毛皮と交換して水など必要最低限のモノのみを補充していた。
やはり小さな集落では、毛皮や肉との交換はとてもありがられた。
相手が喜んでくれるので、トマとアークシュリラもあえてお金での支払いをしていない。
水は井戸や池がある処だと少ない量で交換に応じてくれるが、それがない処だと交渉すらもままならない。
その時は無理に話をせずに、諦めていた。
トマとアークシュリラが魔法や剣で語り合うと決心さえすれば、ほとんどの相手は二人の云うことを聞くだろう。
当然のことながら、わざわざそうまでして手に入れる様なコトはやっていない。
二人が草原をいつもの様に歩いていると、前方に随分と深い崖になっている所にぶち当たった。
その崖の下は、再びなだらかな草原が続いている。
多分バッファローだろうか、大型で四本足の集団がゆっくりと、その崖下にある草原を歩いているのが見える。
その崖はほぼ垂直に切り立っており、断崖と云う言葉がしっくりくる。
なだらかと云うには、甚だ語弊がある。
今まで通り真っ直ぐ進むには、この崖を下りるしかない。
二人は崖の上から眺めながら、出っ張った岩や窪みを利用して行けそうか確認をしてみた。
何度もコース設定を変えて、シミュレーションした。
崖の途中には岩や窪みがない処があるし、途中で手足が疲れてきて無事に下までたどり着ける距離ではないと判断した。
その上、二人が今所持しているロープを結び合わせても崖の中程にも到着しないから、途中からは命綱がない状態になる。
そんな危ないコトは出来ない。
「トマ。これじゃ、直進するコトは無理だね」
「そうだね。こんな感じで、先に進めない所も有るんだね。それにしても、良い眺めだね」
「確かに眺めは良いよね」
二人はこれ以上直進するのを諦めて、しばらくの間、崖の上から崖下の草原などを眺めていた。
空にはファルケやイーグルと思われる、大形の鳥が何羽も舞っている。
その下には、きっと獲物になる生き物が居るのだろう。
「あれって、バッファローだよね」
「ここからじゃ良く判んないけど、そうじゃないの」
「この先には、ファリチスじゃ居ない生き物も居るんだね」
「危険なヤツも居そうだよ。あの空に居るヤツらとかさぁ」
「アイツらに攻撃をされたら、厄介だね」
アークシュリラとしては手の届く範囲内ならファルケやイーグルなんか恐れる必要はないと思っているが、上空に行かれたら攻撃をする手段がないから、そこから石とかを落とされると面倒極まりない。
まぁ、ファルケやイーグルもアークシュリラの手の届く位置に来ることは出来ないから、戦いになっても有効な攻撃手段は無い。
「下の草原には、見える範囲で大きな街とかはなさそうだね」
「ないね。で、右側と左側のどっちに行こうか?」
「街を出たとき右側に進んだから、また右に行こうか」
「そうだね」
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、ウルフを倒してからのお話です。
野生動物全般に言えることですが、ウルフの肉って霜降りで無いだろうからやはり固いのでしょうね。
それとタイトルにある通り行き止まりに来ました。
いつかは崖下の草原にも行くことでしょうね。
次回のお話は、2月6日0時0分に公開する予定です。




