102 ナニをしたら……
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
二人はギルド内にある図書室の壁に掲示されていた地図から、本棚に目を移した。
「あまり、本はないね」
「そうだね。あのぶ厚いのは魔物図鑑だと思うけど、他のはナンだろうね」
「同じようなのが、随分あるけど……」
二人は本棚に近付いて、あまり厚くはない本の中から一冊をそれぞれが手にとった。
そして、目次を開いて、それを眺めた。
「ナンかこれって、この周辺のコトが書いてあるみたいだよ」
「私のは、この街の規則集だね」
「初めてこの街に来た冒険者でも、困らないようにしてるって感じだね」
ほとんどのギルドには、その街に関する決まりごとが書かれたモノが設置されている。
それが置いてあるのは、アークシュリラが語ったとおりで、初めてこの街にやって来たモノにもルールを知って貰うためであった。
「この本って、ギルドで発行しているんじゃないみたい」
「本当だ。これって街が発行してるんだね。だったら、図書館や商業ギルドとかにもあるんだよね」
「あると思うよ。もし置いてなければ、ここに来て読めば良いだけだよ」
まぁ、街で発行している本なら、その街にある図書館にも蔵書がされている可能性が高いと感じる。
しかし、発刊の目的がこの街にやって来た冒険者や商人を対象にしているなら、図書館にはないかも知れない。
「その他は……薄いけど魔物図鑑があるね」
「それはダイジェスト版なんだろうね」
ぶ厚い方の魔物図鑑は、知れ渡っているほぼ全ての魔物についての解説と図解が書かれたモノであるのに対して、薄い方はこの街の付近に生息する魔物をピックアップしているようだった。
魔物について調べるにしても、海の中や高い山とか砂漠などの特定の場所にしか生息していない珍しい魔物について知りたいモノと、この街の周辺で出くわす魔物だけで良い場合がある。
後者の場合に、いちいちぶ厚い書物で調べていては、目的の魔物を見つけるのにとても時間がかかってしまうので、忙しい冒険者たちなら薄いのがあった方が有り難いだろう。
「これ以上の場所を見るには、ギルドの職員に許可を取らないとダメだよ」
「だいたい分かったから、宿屋へ帰ろうか」
「そうだね」
二人は階段を下って、一階に戻った。
一階に大勢居た冒険者たちも、少しは帰ったようで人数は随分と減っていた。
しかし、受付のある所はまだ賑わっているモノの、さっきまでの喧騒はかなり落ち着いて来ているようだった。
「アークシュリラ。まだ騒いでるモノも居るけど、見ている?」
「いいよ、宿屋へ帰ろう」
二人は宿屋へ戻った。
そして、出された食事を取って、今は部屋でくつろいでいる。
二人が情報収集を兼ねて食堂でうわさ話とかを聞いていなかったのは、彼女たちが食事をしている時には客がいなかったからであった。
「今日一日でかなり調べられたけど、明日も冒険者ギルドへ行くの?」
「ギルドに行っても仕方ないような気もするし、図書館へ行って他の資料を読むのも違う気がするんだよ。だけど、ナニをすれば良いかは、残念ながらボクには分かんないんだけどね」
「アークシュリラもそう感じるんだね。図書館で今日読んだ以外の本を見て、トトのコトやオルデェーファについて知る前に、やるコトがあるような気が私もするんだよ。だからと言って、私もナニをやれば良いかは分かんないけどね」
二人は今日分かった内容で充分だとは思ってはいないが、調査をするより他にやるコトがあるのではと云う、朧気な感覚を覚えていた。
それが単なる虫の知らせなのか、今まで係わった神々からのお告げなのかを判断するコトは出来ないまま二人は眠りについた。
翌朝になってもやるコトが見つけられずにいた二人だったが、いつものように食堂に行って朝食を頼んだ。
少しすると、こちらもいつもの何かの肉を焼いたモノが出て来た。
二人は、その肉を適当な大きさに切り分けて食べ始める。
「あのまま眠っちゃったけど、アークシュリラはナニかやることは思いついた」
「ナンにも、思いつかなかったよ」
「そうだよね。そんなに上手くいかないよね」
「仕方ないから、今日はオルデェーファなどを調べに行こうか? 調べている内にナニか思いつくかも知れないから……」
アークシュリラと話しながら朝食を取っていたトマだったが、その一欠片にかぶりついたときに突然ヒラメキが降りた。
「アークシュリラ。今日ナンだけど、オルデェーファを調べるんじゃなくって、魔法使いギルドへ行こうと思うんだよ」
「魔法使いだろうと商業であっても、それらのギルドへ行っても仕方ないんじゃないの?」
「ラジースザイクトスやオルデェーファについて調べるんじゃなくて、かなり昔に破壊されたハズなのに昨日まで冒険者たちが知らなかった方だよ」
「そっちね」
「そう。そんな魔法が本当にあって、ただ、私が知らないだけかも知れないからね」
「分かったよ」
トマがこの街に魔法使いギルドが、冒険者ギルドと別にあると思いついたのは、昨日冒険者ギルド内を見て回ったけど、魔法に関する書物が本棚に一冊も無かったからであった。
これでは、ここを訪れる冒険者たちに、魔法について知ってもらう――イヤ、調べてもらうコトが出来ない。
そんな冒険者ギルドでは、魔法使いギルドの役割を十全とは云わないまでも全く果たすことは出来ない。
トマ自身が持っているような、魔道書に近い魔法の本を置いておく必要性はないが、簡単な魔法について解説した本は、遭遇した敵によっては魔法使いでなくても調べるコトはあるからであった。
二人は朝食を済ませて、魔法使いギルドを探すコトにした。
冒険者や商業と名の付くギルドは街なら絶対にあって、更に建物自体も巨大なので結構目立つ。
もし目立たなくても大勢のモノたちが行くので、門番に場所を聞けば怪しまれもせずに教えてくれるし、案内板などがある処も多い。
しかし、職業的な個別の専門ギルドとなると、その街に有るのかさえ不明なので、街に到着して直ぐに門番に尋ねるモノもいない。
そのために、門番も場所を把握していないコトもある。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
●今回は、トマとアークシュリラの二人は、相変わらず調査の仕方が上手くないので困ってしまうお話です。
オルデェーファやトトについて調べたいが、それをやりだすと違った方向に行きそうで、でも、ナニをしたら良いか判らないってこんなことは実際にもありますよね。
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