100 図書館での調査 その2
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
図書館にある閲覧室で、オルデェーファについて書かれた書物を読み終えたトマとアークシュリラは、書かれていたその内容を話し合っていた。
「アークシュリラ。私の本にはラジースザイクトスが幾つかの大陸を割ったと書いてあったけど、そっちはどんなコトをしたって書いてあった?」
「ボクのは、一つの大陸を沈めたって書いてあったよ。その時に発生した津波でその他の大陸に甚大な被害を与えたって、トマのヤツとはちょっと違うね」
「それって、大陸を割って沈めたのかなぁ? それだと同じコトだけど……」
同じ出来事の記録であっても、書き手によってニアンスや記述の仕方が変わる事は多々ある。
今回の場合だと、大陸を割ると云った当時では考えられない事件の方が大事だと、トマの選んだ本の書き手は考えたのだろう。
その一方で、アークシュリラの選択した本の作者は、大陸が沈んだコトによって発生した津波の被害の方が大切と思ったようだ。
それに本を作ったモノたちも、ラジースザイクトスによる被害を直接的に被った訳でなくって、それを受けた人から聞いただけかも知れない。
「同じなのかなぁ……きっと同じだよね。でも、大陸を割るってどんのくらいの力だろうね」
「普通に強力な魔法じゃ大陸を沈める……イヤ、割るコトなんかは出来ないから、とんでもない威力だと思うよ」
「そうだよね。小さな島でも沈めたり、消し去ったりなんて出来ないもんね」
今でも領主や街の実力者たちが海や川などで護岸工事をしたり、崖などが崩れないように法面工事をしたりするコトがあるが、それらがどんなに強力な魔法を使った作業であったとしても、大陸全土に影響を与えるモノでは決してない。
「防御と言うか、物理攻撃や魔法が一切効かないってのもすごかったけど、そうなると攻撃手段もえげつないよね。本当に私たちと同じ人間であるトトが、これほどのモノを封印出来たのかなぁって感じるよ」
「そうだよね。大陸を壊す力なんかを受けたら、ひとたまりもないよね」
「アークシュリラの本には、戦闘についてナンか書いてあった?」
「イヤ、大陸を割ったラジースザイクトスを封印したと、書かれているだけだよ。その後は各街にそいつと戦った妖術師が現れての復旧する内容がメインだね。そう言うトマの方は?」
「私のモノは割ったラジースザイクトスをトトが封印したとだけ書いてあるけど、どのように封印したかまでは書かれてないよ」
封印したモノはトトで間違いがないようだが、その方法やそれまでの戦いなどは一切記載がなかった。
それが、トマとアークシュリラがオルデェーファについての本が見つからずにいた時に思った、封印に関しての詳細は一般に知られてはいけないようにも感じるし、更にトトが実在の人物ではなく、ラジースザイクトスを封印するためだけに作られた、物語上の偶像のようにも感じた。
「もしかしてトトって云うのは個人の名前ではなくって、沢山の記録がない人たちのコトじゃないかなぁ」
「そう言うコト。だから、誰かの名前に似ていない、珍しい名前にしたんだね」
ラジースザイクトスとの戦いになったら、尋常じゃない数の犠牲者が出るし、建物とかの被害も途方もないだろう。
その犠牲になったモノの一人一人を記載するのは、紙幅の都合上でどうしても無理な話になる。
なので、個別の戦いを細かく書くとスゴイ力を持った魔物なら問題はないが、人間だと離れた場所で戦うコトや何日も続けての戦闘をやるコトは、その魔物と同じか、それ以上の力がないと話の筋が通らなくなってしまう。
しかし、この話はあくまでも神話なので、詳細を記載しないで多少のスーパーパワーを持っていたとしても、目くじらを立てて咎めるモノは少ないだろう。
「それだからボクの本では、各地で復興の手助けを沢山していたんだね。それと手伝っていたのは、一人だけじゃなかったのかもね」
「本に書かれている大部分が、大勢のモノたちのやったコトかも知れないけど、オルデェーファだけは妖術師が建てたと私は思うよ」
「ナンで?」
「あすこでは魔力を全く感じなかったから、大勢の人たちが協力して建てたとすると、一人くらいは魔力を使うモノが居ると思うんだよ」
「偶然、妖術師だけを選んだってコトは?」
「当時、どれほどの数の妖術師が居たかは知らないけど、その確率は少ないと思うよ」
今ならランダムに選んだモノの全てが、妖術師になるコトはまず有り得ない。
イヤ、妖術師がその中に入る方が希有である。
「でも、これらの本では魔道具を持って戦った人は出てこないけど、魔物図鑑には通常武器って記載があったから、通常でない武器を所持したモノが居て、きっと戦ったと思うんだよ。でなければこんな書き方はしないハズだけど、違うかなぁ」
「だったら、ほかの本も読んで見ようよ。この二冊だけでも書かれている内容はこんなにも違うんだから」
「そうだよね。でも、一度冒険者ギルドに行って、今の状況を確認しようよ」
「報酬が決まったとか、ないとは思うけど、募集が終わっているってコトもあるしね」
二人は本を元も位置に返してから、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドについた二人の目に先ず入って来たのは、建物の出入り口やその周りなどで大勢の冒険者たちや周辺で暮らすモノたちが集まって騒然としている風景だった。
「外がこの状態だけど、中へ行く?」
「アークシュリラ、行こうよ」
「分かったよ」
中に二人が入ると、彼女たちが出る前と何ら変わらず……イヤ、受付付近はもっと酷い状況になって冒険者だけでなく大勢の旅人も加わっている感じで、非常にごった返していた。
しかし、その大勢のモノの中で騒いで居るモノは、誰一人としていなかった。
「まだ受付は大変そうだね」
「だったら、掲示板を見に行こうか」
トマとアークシュリラが掲示板に貼られたオルデェーファやラジースザイクトスに関する用紙を見ると、先ほど聞いた内容以上の掲示物はなかった。
「変わってないようだね」
「まぁ、各街だって、直ぐに話をまとめるコトは出来ないだろうから、明日も同じかもね」
「じゃ、ギルド内を探索しようか」
「そうだね。もう少しすると陽もくれるから、ギルド内を見て宿屋へ帰ろうよ」
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
●今回も、トマとアークシュリラが図書館で調査するお話の続きです。
前回の書き切れなかったモノをメモ書きしていたら、これを話さないと読者の方が付いて来られないと思い”その2”を追加しました。
そのために、前回も”その1”にタイトルを変えました。
さて、ラジースザイクトス退治に二人は名乗り出るのでしょうか。それとも自分たちでは勝負にならないと諦めるのでしょうか。
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