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10 トマがアークシュリラを叱る

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 二人が草原を一時間程度歩くと、何かの小動物が動いているのに気が付いた。


「トマ、あそこに何かがいるね」

「この距離だし私が魔法で仕留める? それともアークシュリラがやる?」

「トマは仕留める自信があるの? あるなら魔法で良いよ。私が近付いて行って、逃げられたら面倒だしね」

「そう、判った」


氷針アイスニードル!】

 トマがそう唱えると、数本の針みたいな細い氷が目標に向かって飛んでいった。


「アークシュリラ、仕留めたよ。じゃ食事にしよう」

「そうだね」


 トマとアークシュリラが小動物に近付くと、先程トマが放った針は溶けたのか何処にも無く、血まみれで動かない一匹のヴィーゼルが居た。


「やっぱり魔物だったんだね。よかった」

「あのさぁ、アークシュリラ! 魔物じゃ無くて普通の動物だったら倒さないの?」

 トマはアークシュリラの発言が、これから旅を続けていく上で問題になりそうだったからあえて強く言った。


「なんか小動物を倒すのって、やっぱり可哀想だよ」

 トマは回答を聞いて、アークシュリラは本当に優しいなと感じた。しかし、話をここで終わらせたら言いだした意味が無くなるとトマは考えた。


「小動物はカワイイ見た目だけど、そいつも畑では作物を食い荒らすよ」

「そうだけど……」

「じゃさぁ。アークシュリラは植物のように水と空気、それと太陽だけで生きていけるの?」

「もちろん違うし、無理だね」

「もし、旅をするから倒さないといけないと考えているのなら、それは違うよ。あなただって、街で暮らしていても肉や魚は食べているでしょ」

「街では肉は解体されているから気にならなかったけど、確かにそうだったね」


 トマはようやく、自分の言いたいことがアークシュリラに伝わったと少し感じた。


「人に有益とかも関係ないよ」

「どう言うこと?」

「蜂は花から花へ蜜を集めてくれるし、実がなるのに必要だよね」

「そう教わったよ。それに魔物であるヴェスペも、蜜を集めるらしいし……」


 アークシュリラは蜂じゃなくて、魔物の方に話をそらしにいった。

 確かに蜂もヴェスペも花から蜜を集めるし、植物が実を付けるのを手助けもしている。


「でもね、蜂だって人を刺すこともあるよ。どんな生き物も長短を併せて持っているんだ」

 トマは話をヴェスペの方へは発展させなかった。


「それは判るよ。人だって全員が善人じゃ無くて、悪人も居るからね。じゃ無ければ、私の所属していた自警団なんて組織は不要だね」

「そうだね」

「でも貰ったアイテム袋のお陰で肉とかは腐らないから、出来るだけウルフやボアとかの討伐対象の中型魔物を倒そうよ」

「その方が確かに効率は良いけど……」


 アークシュリラにはまだ小動物を殺すのに抵抗がありそうだとトマは思ったが、これ以上言うとへそを曲げそうなのであえて言葉を濁した。


 小腹がすいたらアークシュリラも、道を歩きながら保存食を摘まんで食べていた。

 どれほどの期間に亘り自分たちが旅を続けるかは分からないが、ずっと保存食を食べている訳にはいかないコトはアークシュリラだって判って居る。

 いつかは狩りをしないといけないことは、頭では理解が出来る。しかし、心のどこかに引っ掛かるモノがあるのも事実だった。


 それとトマも好き好んで生き物を倒している訳ではないことは、このヴィーゼルを見ても判る。

 食べられる所を少しでも多くするために、今回は細い針の魔法を使ったと感じる。

 トマには気取られないつもりで、何度も狩りをすると言っていたけど……それにボクたちがやろうとしているのは、物語にあるような貴族がする娯楽の狩りではないとアークシュリラは自分を戒めた。


 アークシュリラは、このヴィーゼルを有り難く頂こうと思った。


「トマ、ヴィーゼルを解体するよ。一匹しかないから私がやるから見てて。皮はギルドで高くはないけど売れるからね」

「うん、判った」


 アークシュリラはトマに教えながら、ヴィーゼルを解体していく。


「基本どんな魔物でも毛皮は売れるよ。だから出来るだけ丁寧に剥いでね。そしたら魔石を取るよ」

「これだね」

 トマがアークシュリラの邪魔に成らない様に指を指す。

「うん、だいたいがこの辺りに有るよ」


 アークシュリラはヴィーゼルの小さな緑色の魔石をダガーで外すと、トマの方へ転がした。


「魔法の練習で魔物は倒していると思うけど、これは今回ボクたちが旅に出て最初の獲物から採取した魔石だからね」

「うん、記念に持っておくよ」

 トマはそう言って魔石を手に取ってよく見てから、アイテム袋にしまった。


「後は内臓と肉を別けて、内臓は土に埋めたら終わりだね。判った?」

「見た雰囲気は、出来そうかなぁ」


 ヴィーゼルの肉を焼いて二人で食べた。

 無理矢理自分を納得させたけど、やはりアークシュリラにはまだこの肉の味は苦いモノだった。


 翌日になって少し歩くと、泉が湧いている箇所を見付けた。

 そこでカラになりかけていた水囊に補充をして、飲み水を確保した。


「アークシュリラ、良かったね。水場があって」

「もう、水囊がカラに近かったから助かったよ」

「ほん……」

 トマが言い掛けた瞬間、アークシュリラがそれを遮って言った。

「トマ。黙って! ボクたち、ウルフに囲まれている」

「えっ!」

 アークシュリラは神経を研ぎ澄ましている感じで、トマの驚きに反応していない。


「多分6匹だね。どうする?」

 アークシュリラは、あっけらかんと言った。

「6匹!」

「うん、後ろに2匹、左右に2匹ずつ、前はいないかなぁ」

「私の魔法じゃ、どこか一カ所しか……」

「判ったよ、じゃトマは左のをお願い。ボクは後ろと右をやるよ。ちょうどトマの持っている杖の方角で5mくらいだから、そのまま魔法を放ってね」

「判ったよ」


 アークシュリラはトマの返事を聞いて、右後方に走っていった。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマがアークシュリラを叱るお話です。

気の置けない仲の二人なので、互いに指摘や怒ることはあまり無いです。しかしずっと一緒に旅をしていると、やはり気になる処が出て来ますね。

それで時間を置くと逆に言い出しにくくもなりますから、トマもあえてアークシュリラに言ったと言う感じです。


次回のお話は、1月31日0時0分に公開予定です。

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