第八話 仕事探し
ソリティアは、女神はもうすぐ結界を破壊する、いつ来るかも分からない時に備えろとだけ言って去っていった・・・
「好き!」
ベルリは家で叫んだ。
「すぅきすぅきすぅきすぅき♪」
あの子、めろんっていう名前だったよね?
あぁ!めろん!
「すぅきすぅきすぅきすぅき」
めろんが震える。
「風邪か?もうすぐ冬だしな・・・」
「いや、ただの悪寒だよ」
スキル屋【レクレク】。
「なんか買っていくかい?」
「それじゃあ・・・」
「気を付けろ」
小声で祐樹が言う。
「え?」
「こういう所には偽物もあるんだ。【魔力探知】で判別する」
「・・・【魔力探知】」
見える。三つのスキル本の内二つは全くスキルパワーを発していない。
一つだけ、強くスキルパワーを放っている本。
「これは?」
「それは【露防】だよ、10万ゴールド」
「ジュ、ジュウマン!?」
10万ゴールド・・・この前大図書館で稼いだ金なんか目じゃないほどの金額だ。
でも、女神討伐には備えておきたい。
「それ、買います」
めろんが言う。
「でも、あんたら金は?」
店主が言う。
「そのスキル本を取っておいて下さい。お金を渡しに来ます」
「ホントだね?」
そう言いながら店主は奥へ本を置きに行った。
帰ってくると、店主は三人に冊子を差し出した。
「求人情報誌だ。使いな」
「ありがとうございます!」
近くのベンチに座る三人。
「『レストラン【ベクトラ】』日給1000ゴールド・・・駄目だ。間に合う気がしない」
祐樹が言う。
「もっと短期・・・一日とかで、高収入のを何個かやればいいんじゃない?」
紅王がめろんの持つ情報誌を覗き込む。
「短期高収入・・・『新薬の人体実験 安全保証なし 誓約書記入』、『人間はどれくらい高い所から落ちても平気なのか 安全保証なし』・・・駄目だ。怪しすぎ。というか、二つ目はただの阿呆じゃん」
「『爆発薬が人体に与える影響』・・・何これ、人爆発させるってこと?」
その時ベルリが歩いてきた。
「仕事探し?私の行きつけの店がバイト募集してるんだけど・・・短期で高収入って話題の店なんだよね」
三人は同時にベンチから立ち上がった。
同時にベルリに近づく。
「ありがとうございます!」
「いえいえ」
(これでめろんの私に対する好感度アップ間違いないない!)
居酒屋【レクイエム】。
「よろしくお願いいたします!」
「うむ。よろしく!」
店主はパドン。
居酒屋の店主というよりかは、レスラーの様な体格だ。
「早速皿洗いをしてもらう!」
店主が言う。
30分後。
「なんでそうなった」
めろんが思わず突っ込みを入れる。
紅王の足元には大量の割れ皿。
手は血まみれ。
めろんは綺麗に皿を洗い、なぜか隣には皿洗いの達人がいる。
祐樹は地道に洗っている。
「皿洗いはもういい・・・」
店主が気を落として言う。
その時ドアが開いてアイトが入ってきた。
「やぁ、アイト」
ベルリが言う。
「いつものを」
アイトが言うと、店主が奥からジャンボベリーパフェデラックスを持ってくる。
「ギャップ・・・ってやつ?」
紅王が言う。
「女神討伐はこの五人なの?」
祐樹がカウンター越しにベルリに尋ねる。
「いや、六人。試験には来られなかったけど、後【殲滅の呪術師】クラウドが来るわ」
「彼は呪術を使いこなす呪術師・・・」
アイトが言葉を継ぐ。
「600人ものアバーハイトを葬った呪術、【黄昏圧殺】。そのスキルを起動した後彼の視界に全身を移された者は死亡する」
「ヤバ・・・」
紅王があんぐりと口を大きく開ける。
「女神もそんな人がいたら楽勝じゃない」
「違う」
ベルリがきっぱりと言う。
「女神は巨大な触腕と万物を凍らせるスキルで攻撃する。それに万物を凍らせるスキルは視認できない。さらに触腕にも気を付ける必要がある。呪いをかけられそうになった女神は間違いなく触腕で体を覆う」
「とんでもない強敵だな・・・」
祐樹が言う。
「だからヨネヘスとホテスは討伐ではなく封印を行ったんだ。強すぎた。現に結界をもう今にも破ろうとしている」
その時轟音が響いた。その後何かが割れるような音。
「今にもが予想より早く来たみたいだ・・・」
ベルリとアイトが外に飛び出す。三人も追う。
「結界が・・・」
割れた。
欠片が宙を舞っている。
「もう戦いの火蓋は切られたといったところか・・・」
アイトがそう呟いた。
次回予告 第九話 全知全能の女神