第三話 イルカとクジラ
「私のライバルです!」
え~っと、どういうことだろう?
「あれはサポートウォッチ養成所の頃・・・」
回想行くのな。
くじらは養成所の優等生だった。
『転生者に対する配慮』
『励ましの心理学』
『スキル 大全』
あらゆる本を読み漁り、かつては神童と呼ばれた。
だが、新入生に天才がいると友達に聞いた。
それが『いるか』だった。
「おはようございますあなたの事はよく知っていますあの神童ですよねすごいですよね全科目オール5だなんていや流石です尊敬しますもしよかったらこんどお茶でも」
彼は思った。
どうやったらそんな早く口を動かせるのかと。
くじらは早口の特訓をした。
「青は藍より出でて藍よりはほ!舌嚙んだ!」
そしてくじらは聞いてしまった。いるかの特訓の方法を!
「あいつ毎日、『貨客船の旅客 中小商工業振興会議 乗客の訓練 栗の木の切り口 規格価格が駆け引き価格か 危険区域区画区域』って言ってるらしいぞ!」
「ストーップ!」
「へ?」
争いの理由がしょうもなさすぎる。
「早口言葉のライバルってこと?」
「そういうことです」
ガサガサ
木の葉が揺らいだ。
誰かが近づいてくる・・・?
紅王か?
足音が聞こえてくる。
「めろん・・・?」
「紅王!」
そこにいたのは紛れもなく紅王だった。
「やった~!仲間だ!」
「僕も嬉しいよ・・・」
笑顔で手を振る。
「所で食べ物ある?私この世界で三日三晩何も食べてないの」
最後の方声消えかけてたぞ。
「木の実食べればいいのに」
懐から木の実を取り出し、紅王に渡す。
一気に食いつく紅王。
「いや、出て来た場所が雪原だったんで、木の実のならない木しか生えてないの・・・それよりこのでっかい塔は・・・?」
「黒煙の巨塔。ダンジョンだ」
「面白そう!」
目を輝かせる紅王をめろんは複雑な表情で見つめる。
「僕一回死んでるんだけど・・・」
「ん?なんて?」
「だから・・・」
いや、よしておこう。世の中知らない方がいい事もある。
こうして二人はダンジョンに侵入したのであった。
1f。魔力探知を覚えためろんの手助けにより突破。
2f。ゴブリンをめろんが瞬殺。
そして10f。
「やっと10階か・・・」
「私は楽しかったよ?」
紅王がキョトンとして言う。
めろん、くじら、いるかは気がついていた。
彼女は〔スキル〕を何も持っていないが、『よける』能力に非常に秀でている。
「この階に強烈な魔力の反応があります恐らくボスと言った所でしょうかねブツブツ」
その時だった。
壁を突き破りボスが出て来た。
ボス【ガラスを投げてくるおじいさん】。
「雨針!」
無数の氷の結晶がおじいさんを襲う。
「ふ~ん!」
おじいさんがガラス片を投げ、結晶を粉砕する。
「なんて手捌き・・・」
「ふにょふにょふにょふにょ!」
おじいさんはガラス片を紅王に向かって投げつける。
「ほっ!」
妙なポーズでよける紅王。
「なんてポーズだ・・・」
くじらが呆れる。
「隙あり!【火円】!」
おじいさんは灰になって消えた。
スキル本が残された。
「えっと・・・【憑依】。動物の能力などが使用可能になります・・・か。役に立つか分からないけどまぁ解析しとくか」
くじらといるかに本をかざす。
「【憑依】!」
紅王が叫ぶ。
バラエティー番組で着替えするときのボムン!ってやつが鳴る。
紅王の頭に猫耳があって、尻尾も生えている。
「すごいよこれ、思った動物を憑依できるんだ・・・」
20f石投げおばあさん、30f辞典投げ角ありヤンキーを突破。
遂に最上階にたどり着いた。
グラァァァァァァァ!
出迎えたのは黒煙の龍ルベザオクだ。
奥に檻があるのが見える。
「助けてくれ~!」
叫んでいる人がいる・・・萩原だ。
「お前かい!」