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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第5章 〜レイナの暮らし〜
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第9話 大きな虹にキス

第五章  〜レイナの日常〜 を読んでいただき、ありがとうございます。第五章は、今回で 完 となります。次回から2話続けて -愛する者たち- を載せます。毎週、月、水、金の10:00に更新いたします。

 この星の時間が巻き戻った。


 ユピルとレイナが会った日に全てが戻った。ハデスとの戦いや黒雲に覆われたこの星のことを知っているのは、ユピルとレイナだけだった。


 この星にはいつも通りの時間が流れて、人々はただ普通の日々を続けていった。




*** *** ***




 レイナは青い大陸アズールの子ども園 'シリウス' で育った。聞き分けの良い子で誰からも愛され、誰もがレイナの世話をしたがった。

 

 ユピルは時間があるとレイナに会いに行った。ユピルの4人の弟達も一緒に遊んでいるが、イタズラしそうになるとユピルが睨むのでおとなしかった。


 レイナはいつもユピルに両手を伸ばして抱っこをせがんだ。ユピルも抱っこしたレイナをなかなか離そうとしなかった。


 マックスの妻メグがそんな2人を見て、レイナをウチで預かろうか、と言った。

「だって、ウチは男の子ばかりだから、女の子がいたら楽しいかなって思うんだよね。」


 マックスがその事を言うと、8歳のユピルは眉を寄せて言った。


「父上と母上はレイナを養女にしようとしていますね?

 ダメです。そんな事したら、私とレイナは兄妹になってしまう…結婚できなくなるじゃないですか!」


 マックスはゴードン国王に笑いながら話した。

「ユピルは頑なにレイナと結婚すると言い張るのですよ。」


 ゴードン国王は、そうだねぇ〜とマックスに言った。

「僕にはレイナのウエディングドレス姿が見えるよ。隣にいるのはユピルでさ、マックスとユピルの弟達が号泣してるんだよ。ユピルの弟達もレイナが好きなんだろうな…。でも、なぜか、あの4人はユピルの言うことをよく聞くよね。ユピルには敵わないのかな?ま、大泣きするしかないんだな…。


 前にさ、僕がマックスの子供は5人プラス1って言ったでしょ?6人じゃなかったのは、レイナがプラス1だったんだね。養女にしたいけどならない。プラス1なんだよ。もう少ししたらレイナは義理の娘になるね。楽しみだね。」


 

 レイナが5歳になったある日、'シリウス' で遊んでいたウラヌとネプトが2人揃って蛇に噛まれた。レイナもそばにいて3人で大泣きした。ウラヌとネプトは治癒魔力を持つ医師に見せて大事には至らなかったが、レイナは様子を見に来たユピルにしがみついて泣いていた。


「ウラヌとネプトが…痛くてかわいそう…」

「可哀想だけど…でも、助けられなかったのは、レイナのせいじゃないんだよ。レイナが悪いんじゃない。

 あの力はもう使わなくていいんだ。だから、泣かないで。私がそばにいるからね。」

 そう言ってユピルはレイナの頬にキスをした。ユピルに抱っこされたレイナは、ユピルの胸に顔を埋めて泣き寝入りしていた。




 穏やかな時間が流れて行き、12才になったレイナは溢れるような美しさと優しい思いやりを備えた、誰からも愛される女性になっていた。


 その年、ユピルは17歳になり騎士学校を卒業した。


 ユピルとレイナは、レイナが15歳になるのを待って結婚したいとマックスとメグに願った。


 マルス、メルク、ウラヌ、ネプトの4人があわあわと

「あ、兄上!お待ちください。私もレイナが…」

と言ったが、ユピルがちろりと睨むとしゅんとして、大人しくなった。


 マックスが、うんうんと頷き、メグがレイナを抱きしめて、おめでとうと言った。


 ユピルは可愛い婚約指輪をレイナの左薬指にそっとはめた。レイナはポロポロと涙を流しながら、ユピルに言った。

「ずっと、ずっと一緒にいてね。」

「あぁ、これから先もずっと一緒にいるよ。」

 

 口付けを交わした2人の唇はなかなか離れなかった。その様子を見た4人の弟達は目に涙を溜め、鼻水を啜り上げながら祝福した。



 レイナはメグに料理を習った。まずはクッキーから始めましょうとメグが言って 'シリウス' の料理教室が始まった。

 

 レイナはお小遣いで材料を買い、何度も練習して上手にできたのを可愛い袋に入れリボンをかけた。そして、ユピルが 'シリウス' に来るのを待っていた。

 

 ユピルが訪ねてきた日、レイナは駆け寄ってユピルにキスしながら言った。

「ユピルが来るのをずっと待ってたの。メグお母様から習って、私が作ったクッキーを渡したくて…。」

 ユピルは嬉しそうな顔をしてレイナを抱きしめた。

「ありがとう。本当に嬉しい!カフェテリアで紅茶を飲みながら2人で食べようか?」

 2人は手を繋ぎながら、楽しそうに 'シリウス' のカフェテリアに入って行った。




 ユピルは20歳になった。


 ユピルは父であるマックスにそっくりな顔立ちの凛々しい男になり、ルーカス王太子殿下の親衛隊の隊長に抜擢され、ルーカス王太子殿下の腹心の部下と言われるようになっていた。


 ユピルが青い親衛隊のマントを翻しルーカス王太子殿下に従って騎馬で街を行くと、若い女の子達が瞳をキラキラさせて後を追いかけた。女の子達からの差し入れも毎日のように親衛隊あって食べきれず、こども園の子供達におやつとして配られた。


 ユピルは実家のそばに一軒家を買い、レイナと2人で住み始めた。まだ15歳のレイナはメグが自分の本当の母親のように思えて、時々甘えたりしている。メグもそんなレイナが自分の本当の娘の様で、可愛くて仕方ない。


 ユピルの結婚が公になった日は町中に女の子達の悲鳴が響き渡った。甘い物を売る店には女の子達が詰めかけて、涙ながらにお菓子を食べ尽くした。しばらくすると女の子達はユピルを諦めて、騎馬で街を行くユピルの弟マルスとメルクの後を追いかけるようになり、親衛隊への差し入れの数がさらに増えた。


 


 ユピルとレイナの結婚式は城の礼拝堂で行われた。


 ユピルはウェディングドレスのレイナを見て微笑んだ。


「レイナ、本当に綺麗だよ。誰にも見せたくないほど…。」

「ユピル…。こんな素敵な人が私と結婚してくれるなんて…。私は本当に幸せです。これからも私と一緒にいてね。ずっと一緒に。ユピル、大好き、愛してる。」

「私もだよ。私だけのレイナ!これからも私のそばを離れるなよ。」


 式はマックスとメグ、4人の弟、レイナの親代わりのウォルター夫妻が参列し、立会人はルーカス王太子殿下にお願いした。


 城の礼拝堂の窓からは昼でも輝く赤い月と青い月が見えた。2人が月の姫君に永遠の愛を誓い口付けをした時、二つの月の光が強さを増して2人を照らした。


 その時、礼拝堂にいた人々の目に雄々しい姿をした2人が浮かび上がっているのが見えた。女王レイナとその守護ユピルの姿だった。浮かび上がった2人が手を取り合い微笑んで口付けをすると、礼拝堂の中が光で溢れた。


 4人の弟達は、その光の中で自分達も守護の姿が浮かび上がっている事に気がついた。浮かび上がった4人の守護達は女王レイナと守護ユピルの前で片膝をついて跪き、微笑んでいた。


 礼拝堂の中の光が元に戻った時、皆は感動で胸が一杯になり、眼には涙が溢れていた。




 結婚披露宴のパーティーは城の大広間で行われた。


 パーティーにはゴードン国王陛下と王妃ライラ殿もやって来て、大いに盛り上がった。


 青い大陸アズールに幾つもある 'こども園' の管理を任されているウォルターは花嫁の父親がわりに、レイナと腕を組み歩いた。


 こども園 'シリウス' の子供達がレイナの前に花びらを撒いた。


 ゴードン国王はウォルターに言った。

「ね!僕が前に言った通り、30人の子供に囲まれてるでしょう?いやいやいや…30人以上だったね。楽しいね!」



 パーティはルーカス王太子殿下が乾杯のグラスを掲げて始まった。


 'こども園' の子供達が物怖じせずゴードン陛下とライラ殿の周りに集まり、ゴードン陛下の膝によじ登ったりしていた。ゴードン陛下も子供達にお菓子を配ったり、どこで覚えたのか手品を見せたりと楽しそうにしていた。

 

 花婿の父マックスの周りにも、わさわさと子供が集まり、誰が次に抱っこしてもらうのかで揉めていて、マックスが、ほれほれ順番だ、などと言っていた。

 

 花婿の伯父アレックスはそんな様子を見てニコニコと笑っていたが、こども園の年長の女の子達がいつの間にか周りに集まっていた。


 メグはライラ殿とあれこれと花嫁レイナの世話をやいていた。ライラ殿がメグに言った。

「メグちゃんの結婚式を思い出すわね。」


 マルス、メルク、ウラヌ、ネプトの4人は、隅っこで泣いていた。そんな4人に顔馴染みの 'シリウス' の男の子達が肩を叩きながら小さな声で言った。

「心配はいらないよ。ユピル兄ちゃんが結婚したら、女達が弟の兄ちゃん達を放っておかないさ!女はよりどりみどりだよ!よかったな!」


 マックスとユピル、弟達の師匠にあたるリリウは元気いっぱいでパーティに参加した。ますます涙脆くなり、リリウも4人の弟達につられて大泣きした。


 ユピルの同僚の騎士達は、可愛い花嫁に目が釘付けになり、ユピルに睨まれていた。


 ルーカス王太子殿下は呟いていた。

「エレノア…俺達はいつ結婚できるんだよ!」



 披露宴の最中、誰かが大きな声で言った。

「大きな虹!」


 窓の外を見ると空いっぱいに二重の虹がかかっていた。

 ユピルとレイナにはそれがだ誰からの贈り物か、すぐにわかった。


 ユピルは呟いた。

「月の姫君。ありがとう。私達2人は幸せです。」


 ユピルはレイナにキスをした。長く激しいキスをした。


 周りの皆がピューピューと囃し立てた。

 4人の弟達とリリウはまた大泣きした。

 子供達がワアワアと騒いで、走り回った。

 親衛隊の隊員達が何故か踊り出した。


 ユピルとレイナの幸せな1日は、皆に囲まれて穏やかに過ぎていった。


   


        第五章 完

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