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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第5章 〜レイナの暮らし〜
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第4話 アレックスとマックス

  俺は隠れ家の窓辺に座って夜空を眺めながら、恋人が来るのを待っていた。


 赤い月と青い月の輝きはいつもと変わらない。その2つの月を眺めながら、俺は物思いに耽っていた。


ー最近、何かがおかしい…。


 赤い大陸スカーレットでは、この所、地震が増えている。ピリオネル山の噴火の前はそんなに地震はなかったから、噴火の影響だと学者は言う。


 本当にそうなのだろうか?


 地震だけではない。


 大型の嵐が続けて大陸を直撃したり、夏に寒波が来たり…とこの大陸の何かがおかしくなっているのではないか、と俺は考えている。


ー何が起きているというのだ、この大陸に…。




「アレックス…。」


 囁く様な声がして振り返ると、王妃ゾーイが姿を現した。俺達は時々こうして、こっそりと会っている。


 王妃であるゾーイが人目を避け俺に会いにここに来て、俺の胸に飛び込んでくる。こうして2人で会うようになって何年経つのだろう。16才だったあの頃と少しも変わらないゾーイを見ると、愛おしさで胸がいっぱいになる。


 待ってた、とゾーイを抱きしめ、何度もキスをした。


 ゾーイは俺を見つめて涙ぐんだ。

「会いたかったの。なかなか会えなくて、寂しかった。」


 

 ゾーイはベッドの中で俺に甘えながら、涙を目に溜めている。


「あのね、最近、なぜだかはわからないのだけど…。すぐ不安になるの。涙が出てしまって…。恥ずかしい。」

「大丈夫だ、今は俺がそばにいる。そうだろ?」

「うん。でも…もっと会いたい。」

「そうだな…。時間をつくろうな。」


 うん、と頷くとゾーイは俺の唇に唇を重ねる。

 そうは言ったが、俺は魔力の強いゾーイも自分と同じように何かを感じている事に愕然とした。


ー嫌な予感がする。

 これは、何かの前触れなのだろうか?

 マックスとリリウに会わねばならない。


 そう思いながら、俺の胸に顔を埋めるゾーイを抱きしめてた。




 2人で抱き合いながら微睡んでいると、ゆらゆらと大地が揺れ始めた。


「ゾーイ、城に戻れ。いいか、慌てるな。城にいれば安全だからな。行け!」

 

 最後に俺の唇にキスをして、ゾーイは消えて行った。ゾーイが消えた瞬間、大地が大きく揺れた。今までにない程の揺れに俺は唇を噛み締めた。


 王太子エレノア殿下の親衛隊隊長の俺はエレノア殿下の元に飛び、警戒体制を整えた。副隊長のエメリーは既にエレノア殿下の後ろに控えている。

 

 大きく揺れたが、堅固な城の中の被害は出なかったと報告があった。ゾーイも無事に違いない。そばにセオドラ国王がついているはずだから、心配はないだろう。


 自衛軍はマイケル司令官の素早い采配で、すでに大陸中に隊員を派遣している。


 翌日、マイケル司令官から、国中の被害は甚大であったが死者はいない、と聞きホッと胸を撫で下ろした時、不吉な報告を俺は受けた。大陸を走る亀裂が現れたと。しかも、真っ直ぐ一直線に亀裂が走っているという。


 亀裂を確認しに行くと、深い亀裂はまだ跨いで通れる程の幅しかないが、定規で線を引いたように真っ直ぐだった。その両端が目では確認出来ないほど、長く長く続いている。


 中を覗いてみると、俺の目には亀裂の奥深くに邪悪な感情が渦巻いているのが感じられた。それは、強い魔力を持つ者にしか感じられないほど、この星の奥底にある。


ーなんだ、これは…。

 月の姫君と黒い影みまつわる出来事が終わって数年が経つ平和なこの星に、一体何が起きるというのだろう。


 俺は昼でも輝く大きな赤い月と青い月を見上げて大きく息を吐いた。


  


 俺はリリウの元に飛んだ。リリウが何か知っているのではないか、と思ったのだが、リリウは大きく首を振った。


「地の底に邪悪な感情だと?

 …そんな事は聞いたこともない。


 青い大陸アズールでも再生魔力を持つ娘が現れて、マックスがつい最近相談しに来たばかりだ。

 何が起きているのだろうな。」


「えっ?再生魔力…?」


 俺は耳を疑った。もう何千年も現れていない魔力…。


ーなぜ、今?


 俺はマックスに会いに行くことにした。リリウも行くと言ったが、爺さまは昼寝しててくれと俺が言ったら、ぶつぶつと言いながらも素直に横になっていた。


ーリリウ、体は大事にしてほしい。もう、歳なんだから

と、いう言葉は飲み込んだ。




*** *** ***




「マックス!ぼっとしてどうしたの?」


 と、メグが俺の頬にキスをして笑った。子供達は皆騎士になって宿舎で生活を始め、俺とメグはこの屋敷に2人きりになった。


 ここに移り住んだ時の事は鮮明に思い出せる。


 俺が有らぬ疑いで投獄された時、王太子だったゴードンに助けられて、そのまま俺は王太子の親衛隊に入った。

 その日の内にこの家を用意してくれたのもゴードンだった。


「赤い月と青い月を見てた。そしたら、ここに引っ越した日のことを思い出した。あの日、メグは俺にしがみついて離れなかったよな。あの頃も可愛かったけど、今もすごく可愛い!愛してるよ…」


 そう言いながらキスをするとメグは俺の胸に顔を擦り寄せる。


「マックス、大好き!」


 なんかいい雰囲気になった時、屋敷の中にふわりとした気配を感じた。


「…誰か来たようだな。」


 しばらくすると、俺だ、アレックスだ。お邪魔するよ、と声がした。


「ほんとにおじゃま、だったかな?」

と、笑うアレックスに、メグはそんなことないよ、と首を横に振った。


「もう直ぐ、王妃ライラ様が私をお迎えに来てくれるの。2人で 'シリウス' に行って、パンケーキを焼くんだ。子供達のお料理教室なんだよ。

 だから、アレックス、ごゆっくりね。

 マックス、アップルパイがあるよ。アレックスも好きだもんね。全部食べて帰ってね。」


 俺にキスをしたメグはキラキラとした笑顔で外に出て行った。すぐに王妃ライラ様が飛んで来た気配があり、2人の楽しそうな声が聞こえた。そして王妃ライラ様の、参りましょう、という声がして2人は 'シリウス' に飛んで行った。


「メグちゃん、やっぱり、かわいいな。

 お前に惚れてるし…。」


 俺は、ふふん…と笑いながらアップルパイと紅茶を用意した。メグのアップルパイは最高に美味いので、2人でダウム爺さんのりんごジャムの話などしながら、ペロリとたいらげた。


「で、何があった?」


 ゆっくりと紅茶を飲みながら、実は…とアレックスが赤い大陸スカーレットで起きている異変について話し始めた。そして、リリウに青い大陸アズールに再生魔力を持つ者が現れたと聞いたよ、と言った。


 俺が、そうなんだよ…と言った時、部屋の中に何かの気配が現れた。俺とマックスは臨戦態勢に入り、魔力を発動させた。


 それは、自分の張ったシールドの中でゆっくりと形を現し、俺達に笑いかけた。


「アレックスさんとマックスさんですな?ご機嫌よう!

 そんな怖い顔をしないでくださいよ。私は何もしませんからね。」


 姿を現したのは、見たことのない男だった。


 真っ白な肌に真っ白の髪、黒く丸いレンズのサングラスを掛けて、白い足首まであるコートをきっちりと来ていた。白い中折れ帽には白い鳥の羽が1つ付けてあった。足元は白のロングブーツで、何から何まで真っ白な男という印象の男だった。


「お前は誰だ!」

「名乗るほどの事もない男ですが…

 まぁ、突然現れた男ですし、お知りになりたいでしょうね。」


 男はサングラスを外し、にっこりと笑った。サングラスから現れた眼は淡いグレーだった。


「ハデス、と申します。陽の光が苦手でしてねぇ。外ではサングラスなしでは辛いのですよ。」


 勧められてもいないのに、ハデスと名乗った男は椅子に座った。


「さてさて、ご挨拶もすみましたので、本題です。

 私達の女王陛下をお渡し願います。

 …あ、これはお願いではなく、もらいに来るよ、と言う宣言です。」

「なんのことだ!」

「まあ、そのうち分かりますのでね。余り抵抗すると苦しむのはあなた達ですから、先にお知らせしておくようにと私のご主人様が言うものですから…。

 私はね、そんな事しないでさっさとやってしまおう…って言ったんですけど。こちらにも色々とありましてね。こんなに遅くなってしまった…。

 でも、まあ、女王陛下を大きく育てていただきましたので、少しはお礼もしないと、とご主人様が言うのですよ。それで、こうやって先にお知らせに参った次第です。


 では、では、お知らせしましたよ。」


 そう言うと、ハデスはサングラスを掛け、笑いながら俺達に手を振って消えていった。


 俺達2人はしばらく無言だった。


 

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