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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第5章 〜レイナの暮らし〜
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第2話 秘めたる力

 レイナは自分の魔力に気づくことなく、毎日を過ごしていた。ただ、夜中にうなされるのは続いている、とウォルターからの報告があった。


 レイナの強い魔力がレイナに夢を見させるのだろうとゴードン国王は言うが、マックスはそれだけではない何かを感じていた。


 


 そして、穏やかな時間が流れて行き、12才になったレイナは溢れるような美しさと優しい思いやりを備えた、誰からも愛される女性になっていた。




*** *** ***




 マックスは子供達に人気があった。いつ 'シリウス' に行っても、なぜか子供達はわさわさとマックスの周りに集まってしまう。小さい子は膝の上に乗りたがって膝の取り合いをする。大きい子は誰がマックスの隣に座るかで揉める。


 結局 'マックスおじさん順番表' を子供達が考え出し、なんとか平和を保っている。


 マックスの妻メグはいつもその様子を見て、笑っている。


 メグは以前はよく5人の子供を連れて 'シリウス' に手伝いに来ていたが、子供達も大きくなって最近1人で来ることが増えてきた。王妃ライラ殿もやって来て、2人で楽しそうに子供達の世話をしている。




 マックスの子供達は全員男の子で、名付け親はリリウ爺に頼んだ。


 長男が16歳のユピル。

 マックスによく似た面立ちの青い大陸アズールの騎士学校の2年生。卒業したらルーカス王太子殿下の親衛隊に入りたいと言っている。


 次男が15歳のマルス。

 兄の後を追い今年、騎士学校に入った。成績はかなりいいと言う。


 三男が14歳のメルク。

 父親と2人の兄を見て、騎士に憧れている。騎士学校に入るために学業に力を入れている。


 12才の双子。四男がネプト。五男がウラヌ。

 母親のメグに青い布でマント作ってもらい、それをひるがえして騎士ごっこをしていたのが嘘のように大人びてきた。




 リリウ爺は矍鑠たる爺さまになり、マックスの家に遊びに来ては子供達に魔力の扱い方を指導している。子供達はリリウに会えるのを楽しみにしていて、まるで血の繋がった祖父と孫のようだ。


 5人の子供達はそれぞれ特別な力を持っている、そして、その力に因んだ名前をつけたのだとリリウは言う。


 長男のユピルは宇宙を掌る。

 次男のマルスは火を操る。

 三男メルクは水を操る。

 双子の四男ウラヌは空を操る。

 五男のネプトは海を操る。

 

 ただし、その力を正しく使うために厳しい指導が必要なのだとリリウは言って、マックスの家に来ては5人の子供達を鍛えていた。


 子供達も魔力の研鑽には真剣に向き合って来た。


ーこの力をこの星のために、そして人々を守るために…。


 それが合言葉のようになっていて、いつもは喧嘩ばかりの兄弟も、魔力に関してはお互いの力を認め合っている。


 マックスがリリウに、なぜ息子達にそんな力があるのだろう、と聞くと、必要だから備わっているのだろうよ…それしかわからんな、とリリウは答えた。





 そんなある日のこと、マックス一家に事件が起きた。


 5人の息子達が揃ってレイナが好きという事が判明して、マックスの家は大騒ぎになってしまったのだ。


 それは、騎士学校の休みの日に家に帰ってきた16才の長男ユピルが真剣な顔で、両親の顔を見た所から始まった。


「父上、母上。お願いがあります。

 私はレイナと結婚したいと思っています。あと3年、レイナが15才になるまで待ちます。でも、愛するレイナを誰かに取られないように、婚約だけはしておきたいのです…。」


 と言い出した。それを聞いた15才の次男マルスが


「あ…兄上、ちょっと待った!

 それは今、私が父上と母上に願おうとしていたのです!

 私は心からレイナを愛しています。絶対幸せにしますから、結婚をお許しいただきたいのです。」


 と言い出して睨み合った。すると14才の三男メルクが、


「ふふん、兄上達は年が離れすぎですよ。私ぐらいの年齢差がちょうど良いのです。私はレイナを心の底から愛しています。騎士になってレイナをちゃんと幸せにして見せます。

 父上、母上、どうか私とレイナの結婚をお許しください。」


 と、大人びた事を言った。その横で、ネプトとウラヌが


「レイナは俺たち2人のものだ!誰にも渡さない。」


 と言い出して、大騒ぎになった。


 結局マックスが、レイナの気持ちを聞くしかあるまい、と丸く収めようとしたが、息子達はなかなか収まらなかった。




 その話を聞いたゴードン国王陛下はお腹を抱えて笑った。


「若いってすばらしいよね〜。兄弟でレイナの取り合いね。

皆、がんばれ、って感じだねぇ〜。」


 ウォルターはゴードンに、笑い事ではないですよ、と言った。'シリウス' でも男の子達がレイナの取り合いになっていると心配げだ。


「困ったねぇ〜。いっそ、城で預かっちゃおうか?

 僕んちはルーカス君1人しか子供がいないからさ、ライラは喜ぶと思うんだよね。

 おっ!それともさ、ルーカス君の嫁にしちゃう?」


 などとゴードンはいつもの通りにふざけた調子だったが、すっと真面目な顔になって言った。


「このままだと…レイナは誰とも結婚しないよ。ウエディングドレス姿が見えない。マックスのそばで笑ってるところは見えるんだけど…なぜだろうね?」


「えええ〜っ!俺は子供に好かれるたちのようですからねぇ。まぁ、それでしょう。」


「年は関係ないさ!レイナが好きなものは好きなんだ。

 マックス、困ったねぇ〜。息子達と揉めるね!


 まぁ、大事なことは…

 レイナの魔力が出てこないように見ている事かな。マックスに封じてもらってから、もう7年たった。まだ大丈夫そうだけど。少し心配だね。」


 その言葉にマックスとウォルターは顔を曇らせた。





 その頃、レイナはマックスの妻メグに、お料理を教えて欲しいと願っていた。


「メグおばさまにお料理を習ったら、ネプトとウラヌそれに上の3人のお兄様達が喜んで食べてくださるでしょう?もしかしたら、マックスおじさまも喜んでくださるかもしれない。

 ね、おばさま!お願い!

 そんな難しいものはまだ無理だけど…。クッキーとかパンケーキとか。少しづつでいいの。教えてください!」


「そんなこと言って…。レイナが食べて欲しいのは、本当はマックスだけでしょう?

 いいわよ〜!教えてあげる!

 マックスの大好物はアップルパイなの。でも、いきなりはちょっと難しいから、クッキーから始めてみましょうね。」



 レイナがメグにお料理を習う、というのは他の子達にも伝わって、結局 'シリウス' でのお料理教室になり、月に1回、クッキー作りから始まった。


 レイナはお小遣いから材料費を出して何回も練習した。そして、出来上がった物の中からきれいにできたのをかわいい紙袋に入れてリボンをかけ、マックスが 'シリウス' に来るのを待っていた。


「マックスおじさま、これ、レイナが作ったの。食べてくださいね。」


 目をキラキラさせてマックスにクッキーを渡すと、レイナはにっこりと微笑んで走っていってしまった。それを見ていたウォルターが笑いながら言った


「マックス、ゴードン陛下のお言葉は本当かもな。」

「…なんと!」


 


 マックスとメグは今でもイチャイチャするのが好きだ。

 マックスの親衛隊長の姿を見るたびに、メグはステキ、と言ってマックスに抱きついてなかなか離れないし、そんなメグにキスをすると、マックスの唇はメグからなかなか離れない。


 5人の息子達は、またかよ…という顔をして、いつも2人を見ている。


 2人の夜は若い頃と変わらず、結界を張っていることが多い。そんな夜にメグがマックスに言った。


「レイナはマックスの事好きなんだね。かわいい!うちの子にしちゃいたい。」

「…なんと!

 俺はメグだけだから。」

 

 キスをしながら言うマックスの首筋にキスマークを付けて、メグが笑いながら囁く。


「マックスは誰にもあげないよ。私の印、つけてるし!」





 そんなある日、レイナが転んで大怪我をして、すぐ近くの病院に運ばれた。痛いのを我慢して声を立てずに涙を流していたレイナだったが、治癒魔力を持つ医者に見せようとした時、レイナの傷がするするとふさがり、跡形もなく治っていった。


 医者は付き添っていたウォルターに小さな声で尋ねた。


「こ、これは…再生の魔力…?ですかね。」


 ウォルターは目を見開いて、医者を見た。 

 

「…私は初めて見ましたよ。本当にいたのですね。神話の世界の話だと思っていました。

 ご心配なく。私は医者です。

 月の姫君に誓って、患者の秘密は必ず守ります。」


 ウォルターは 'シリウス' にレイナと共に戻った後、城に飛びゴードン国王とマックスにレイナの新しく出現した魔力について報告した。


 ゴードン国王は驚いた顔でマックスを見た。


 再生魔力は大昔、この星の神話より古い時代に現れた事があるとゴードンが眉を顰めた。


 治癒魔力と違い、再生魔力は 'よみがえり' の魔力だ。死者を蘇らせる最強の魔力と言われ、その魔力の持ち主は不死身だ、と語り継がれている。その血や肉はそれを口にした物を死の床から起き上がらせ、持てる力以上の能力を発揮させる、とゴードン国王はつぶやく。


 しかし、再生魔力を持つ者はもう何千年も現れていなかった。


 ゴードン国王、マックス、ウォルターの3人はお互いを見て、黙り込んでしまった。



 しばらくして、ゴードン国王が口を開いた。


「マックス、レイナの再生魔力を封じる事はできない?」


「ゴードン、できないよ。子供の頃、時空飛行の魔力を封じただろう?あれですらもう限界に近いんだ。レイナの力は強すぎて、俺達が封じる事はもうできない。」


 ゴードンは落ち着かない様子で言い出した。


「レイナが子供の頃、拐われそうになった時はこの力はまだ出現してなかった…。誰も知らなかった筈だよね?…そうだよね?

 僕にはレイナがマックスと笑ってる未来しか見えないんだよ。他は何も見えない。


 だから、大丈夫だと思いたい。でも、なんか不安だよ。

 

 マックス、ウォルター、今思っている通りにして。それが一番いいと思うから」


 人の心が読めるゴードンはそう言って2人を見た。


 マックスは師匠のリリウに話を聞きに行き、ウォルターは 'シリウス' の警備体制を強化した。 




 リリウはマックスの話を聞いて、眉を顰めた。


「わしが知っているのは、再生魔力はその力を持つ者が願った事にしか働かない、ということだ

 その事を皆は知らないと思う。何せ、何千年も現れなかった魔力だからな。


 いいか、再生魔力を持つ事を隠し通せ。それが、その娘を守る道だとわしは思う。


 マックス、未来予知のできるゴードン殿にこの事を伝えて、備えを怠るな。」





 リリウとの話を聞いて、ゴードンは決めた。


「やはり、レイナを城で預かる。それがレイナを守り、この国を平和に保つ唯一の方法だと思う。」



 マックスがレイナに再生魔力の事を話し、身を守るためには城に住む事が最善だと伝えると、レイナは涙ぐんだ。


「私にどうしてそんな力があるのでしょう…。その力は誰かを助けるための力…だと思うのに、なぜ隠れなくてはならないのでしょう。悲しい…」


「城は幾重にも結界が張られ、多くの騎士たちが王家の人々を守っている。レイナも城の中では、安心して暮らせるよ」


 泣きながら、レイナは城に移り住むことを受け入れた。



 その時からレイナは、自分の未来について考えるようになった。


ー私の力をこの星の為に使いたい。


 そして、1つの道を見つけ出した。


ー15才になったら、騎士学校に入って騎士になる。私の力はきっとこの国の人々を助けられるはずだから…。


 マックスをはじめ、国王陛下もウォルターも騎士になる事は反対したが、レイナの決意は堅かった。


「自分の身は自分で守れるようになりたいのです。」


 そう言われると、誰も反対する事ができなくなった。


 15才になったレイナは騎士学校に合格した。ネプトとウラヌも騎士学校に合格した。2人の強い魔力はレイナを守るのに充分な力となっていた。


 ユピル、メルク、マルスの3人はすでに騎士となり、3人揃ってルーカス王太子の親衛隊に入っていた。


 マックスとウォルター、ユピル達にも守られながら、レイナは騎士学校を卒業した。そして、マックス隊長ひきいる国王陛下の親衛隊に、ネプト、ウラヌと共に入隊した。


 レイナが自分の本当の力を知るのは、これからだった。

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