第6話 流れ星にキス
第三章 〜マックスの友情〜 を読んでいただき、ありがとうございます。第三章は、今回で 完 となります。次回は、アレックスとマックスの修行時代のお話 〜2人の進む道〜を載せます。毎週、月、水、金の10:00に更新いたします。
俺はゴードンの屋敷に飛んだ。屋敷を守り抜いたウォルターが、終わったみたいだな、と言ってホッとした顔を見せた。
話は後で…と言うゴードンをつれて、俺は城に飛んだ。
城は黒い影もなくなり、王と王妃のお二人も拘束を解かれて、休んでいた。王と王妃、そして城を守った騎士達も少しづつ元に戻っていた。
城の様子を確認し、落ち着いたゴードンはやっと自分の屋敷に戻った。
俺はゴードンとウォルターに全てを話した。
今回の首謀者は俺とアレックスの父親カイルだった事。その居場所を見つけ出し、アレックスと2人でカイルと闘った事。その果てに、カイルは動く事も話す事も出来なくなった事…
カイルの事はある場所に連れて行った。そこは何もできない場所だから、もう悪事を働く事もできない。あとは命の絶えるまでそこにいるだけ、生きているだけだ、とだけ話した。
カイルは他にもかなりの数の悪事に手を染めていた事がわかっている。だから、本当は生きている値打ちもないのだけれど、自分達は父親を始末する事ができなかった。
だから…、と俺はゴードンの前に片膝を着いて頭を垂れて言った。
「ゴードン殿下、私は親衛隊も騎士も辞めさせていただきたいと思います。そして、父に代わり罰を受ける事をお許しください。実の父親、カイルのした事は許されない事だから…。どんな罰でも受ける覚悟ができております。」
ゴードンは、にやりと笑って言った。
「うん、分かった。騎士も親衛隊も辞めても良いよ。
でもねぇ、すぐに再雇用だからね。僕、マックスのこと、誰にも渡さないから!何回でも、すぐに再雇用する!
どこまでも追いかけていって、再雇用する!!
逃がさないよ。
それでも、辞めたい?」
俺の眼に涙が浮かんでるのを見て、ゴードンは言った。
「でもなぁ、罰は与えたい、かなぁ〜。
うん、そうだ!
1週間、城に来る事を禁止する。休暇を取りなさい!メグとイチャイチャする事!
笑ってるウォルターもだよ。1週間、家族とゆっくり過ごして。
2人とも、よくやってくれたね。ありがとう。」
ウォルターと俺は感激してしまった。
少しして、落ち着いた俺とウォルターにゴードンは話し始めた。
「今度の事では、黒い影が色々な事をしているのだけれど、何なのだろう?父上達の周りにまとわりついていたり、ライラをさらったり、城を飲み込みそうにもなっていた。
ウォルター、何か気づいた事はあるかい?」
ウォルターは黒い影を怨念の塊だと言う。ウォルターはそれを感じる力を持っていた。
長年の怨念が形を作りつつあるようだ。何に対する怨みなのかはわからない。でも、きっと今回だけでは終わらない。また、我々を襲ってくるだろう。だから、対策を練らなければいけないと、ウォルターは考えながら言った。
「ウォルターも、そう思うかい?僕も同じような事を見たんだ。ちょっと先の未来。この星が真っ暗になるんだ。多分、あの黒い影に全部覆われる。
でもね、その後に、僕の息子が僕の前で片膝をついて、父上って言った後、笑うんだ。今はそれしか分からないんだけど…。きっと、明るい未来なんだと思う。
だから、きっと大丈夫。僕達のやろうとしている事の方向性は間違っていないんだよ。
自信を持って進んでいこうね。協力しあってさ。」
3人で、うんうんと頷きあった。俺達は主と従者なんだけど、それ以上の繋がりがある。ゴードンに心からの忠誠を誓おうと俺は思った。
ウォルターが俺に、アルカディア山で戦っていた時に、ゴードンの声を聞いたか、と尋ねた。
「うん、突然、 'ライラ、帰っておいで。僕のライラ。愛しているよ。' って聞こえた。」
と俺が言うとゴードンは、
「見えたんだよ、ライラの姿。あの時だけね。帰ってきて欲しかったから、そう言ったんだ。
ん〜!これも僕の新しい力なんだろうか?よくわからないけど。」
ウォルターはゴードンがその時、涙を流してたと言った。
「ゴードンは本当にライラを愛してるんだなって思ったんだ。つられて泣きそうになった。」
すると、ゴードンが突然ウォルターに '30人!' と言った。珍しくウォルターが、へっ?と言った。
「子供が30人くらいウォルターの周りで笑ってる。」
子供、ですか?そんなには作れない…いまさら…無理だ。妻もそんなに若くないし…。えっ?他所に女…?とウォルターがビビった。
ウォルター、やるねぇ…。と言った俺にゴードンが言った。
「マックスは、5人、いや…プラス1。」
ゴードンは無邪気な顔で、楽しいね、これからも!と笑った。
1週間の休みをもらった俺は、まっすぐ自分の家に戻り、メグと心ゆくまでイチャイチャした。
俺と離れていた間、心細かったのだろう。メグは俺に抱きついて離れようとしなかった。
私はマックスの事こんなに好きなのに…マックスのバカ!私の事をほっとくなんて…とメグは泣きながら俺の唇に何度もキスをした。
そして、こんなに傷だらけになって…とまた涙ぐみ、早く治るおまじないね、と俺の傷1つ1つにキスをしていった。
夜が白々と明ける頃、メグはやっと静かな寝息を立てた。メグの寝顔を見て、暖かで優しい感情が俺の心に溢れた。
ー俺、やっぱメグのこと愛してる!
そしてまた、夜が来た。俺はメグに言った。
「目をつぶって…。」
俺はメグの唇にキスをすると2人で飛んだ。
着いたのは、青い大陸アズールの海岸。大きな青い月と赤い月に照らされ、静かに波が打ち寄せる場所。
「メグ、目を開けて…。」
メグはビックリして俺にしがみついた後、俺の顔を見て微笑んだ。
「マックスって魔力を持ってたんだね。
素敵!かっこいい!最高!愛してる!
いっぱいキスして!」
俺は長いキスをした後、メグの前に跪きその手を取って言った。
「Will you marry me?
結婚してください。
たくさん心配かけると思うけど、一生大事にする。
俺の人生を賭けて幸せにする。
だから、俺と結婚してください!」
メグは俺に聞いた、子供は何人? と。
俺は思わず、5人プラス1、と答えた。
「子沢山夫婦になるね。幸せになろうね、2人で。
答えはもちろん YES!だよ。」
とメグは俺に言ってにっこりと笑った。
おれはメグの左手薬指にそっと指輪をはめた。それは赤い月と青い月に照らされて七色に輝く石を嵌め込んだ指輪だった。
メグはポロポロと涙をこぼして、ありがとう。と呟いた。
俺達は2人で海岸に座り、二つの月を眺めて抱き合った。
程なくして、カイルが死んだとリリウから連絡が来た。俺とアレックスは月の姫君の元に飛んだ。
「マックス、アレックス。カイルの最後は穏やかだった。私は何もしてやれなかったが、最後まで見ていたよ。
最後にカイルは私を見て微笑んでいたように見えた。お前達2人に幸せになって欲しいと思っていただろうよ。」
月の姫君はそう言うと、一筋の光の中で揺らめいた。
リリウと共に俺とアレックスはカイルを荼毘に付し、埋葬した。以前にリリウが埋葬した骨は跡形もなく消えていた。
墓の中で親父カイルは母のクインになんと言っているのだろう。何となくカイルはクインを抱きしめて、泣いているように思えた。
リリウの家に戻ると、俺はゴードンの未来予知をリリウとアレックスに話した。
ーちょっと先の未来。この星が真っ暗になるんだ。
多分、あの黒い影に全部覆われる。
でもね、その後に、僕の息子が僕の前で片膝をついて、
父上って言った後、笑うんだ。
今はそれしか分からないんだけど…。
きっと、明るい未来なんだと思う。
ゴードンがそう話したと言うとリリウは、ゴードン殿の予知は間違いないだろう。俺達は今できる事を1つずつやっていくだけだな、と言った。
黒い影の正体は今はまだわからない。でも最後に明るい未来があるなら、それを信じて進んでいくだけだ。
ゴードンが、メグと2人で城に来て欲しい、と言うので行くと、ニコニコとしたゴードンとライラが俺達を待っていた。
「僕達も結婚式に参加していいよね。ダメとは言わせないよ。ウォルター夫婦と僕達とで立ち会い人になるからね。
いつ式をあげるの?その日はこの城の大広間は押さえておくね。
盛大にパーティーだ!楽しみだねぇ〜!」
ライラはメグの手を取り、にっこりとして
「メグちゃん、結婚式の衣装は私に任せてね。2人で素敵なドレスを作りましょうね。
ゴードン様ったら、自分の事みたいにはしゃいでるのよ。そんなゴードン様も素敵!」
と言いながらゴードンにキスをした。
結婚式の日が決まった。
早速リリウに伝えると、喜んだリリウは村の皆にも話したようで、村の皆が来たいと言い出した。大人数だし、城の大広間なのでゴードンにお伺いをたてた。
「よいよい!皆、来るがよい!」
とゴードンが言ったので村中が大騒ぎになった。
月の姫君にも報告すると、姫君は私からも贈り物をしよう、楽しみにしていてほしい、と言われた。
当日の朝早くから、村の皆は馬車に乗って隊列を組んでやって来た。
メグの両親を始め、酒場の常連、近所の皆までも大広間に集まった。
城の大広間にはゴードンが用意してくれた、大量の酒と食べ物。皆は待てずに、式が始まる前から飲んだり食べたりし始めて、大宴会状態になっていた。
俺とメグは城の礼拝堂で月の姫君に愛を誓った。リリウとアレックス、メグの両親が参列した。ゴードンとライラ、ウォルター夫婦は立会人になってくれた。
白いドレスを纏い、ベールを被ったメグは輝く様な美しさだった。こんな美しいメグが俺の妻となるなんて、夢のようだった。
城の大広間に移動すると、皆の歓声と拍手に迎えられた。
メグの両親とリリウは何故か抱き合って泣いていた。
酒場の常連達は王家の美味い酒に、もう酔っ払っていた。
メグの周りには近所の皆と村の娘が集まっていた。
俺の周りには相変わらず子供がわさわさと集まった。
村のじい様達は何故か踊り出していた。
ゴードンとライラは皆の中で揉みくちゃにされていた。滅多に見ない街の人々のどんちゃん騒ぎを、心から楽しんでいるようだった。
ウォルターは5人プラス1!と俺の耳元で言った。
俺は、30人と言い返し、ウォルターの妻を指差した。ウォルターは何故かうなだれた。
アレックスは無言で何度も頷いていた。
すると誰かが、あっ!流れ星だ!と叫んだ。
皆で外を見ると。夜空いっぱいの流れ星。
きっと、月の姫君からのプレゼントに違いない。俺は心の中で何度も姫君に感謝の言葉を言っていた。
ー月の姫君、いつも俺達を見守ってくださってありがとう。
そして、これからもどうぞお守りください。
俺はメグにキスをした。長く激しいキスをした。
周りの皆がピューピューと囃し立てた。
村の娘達は何故か赤くなっていた。
子供達がワアワアと騒いで、走り回った。
村のじい様たちはさらに激しく踊り出した。
幸せな夜は、皆に囲まれて穏やかに過ぎていった。
第三章 完




