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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第3章 〜マックスの友情〜
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第5話 カイルとマックス兄弟

 しばらくして、城の内部で叛乱が起きた。国王と王妃が拘束され、2人を守る騎士達が次々と意識を失って倒れていったと、報告があった。


 ウォルターを屋敷に残し、俺とゴードンは城に飛び、魔力を発動して姿を隠した。


 俺達が見たものは、国王と王妃の周りで渦巻く黒い影。お二人は意識がなく、まっすぐに立っていた。


 ゴードンは一旦屋敷に帰ろうと言った。


「嫌な予感がするんだ…。」




 屋敷ではウォルターが守りを固めていたが、城と比べると屋敷の周りはひっそりと静まり返っている。


 屋敷に戻った俺達の前にライラが走って来た。


「ゴードンさま、わたし、わたし、怖い。…たすけ…て…」


 次の瞬間、ライラが消えた。ゴードンがライラを捕まえようと伸ばした指の先にライラの黒髪が流れた。


「ライラ、ライラーっ!」


 ゴードンは手を伸ばし続けた。辺りには、微かに黒い影が見えた。




 ゴードンは俺とウォルターだけを自分の部屋に呼んだ。息を整えてから、ゴードンはゆっくりと話し始めた。


「今まで皆には黙ってだんだけど…僕ね、見えるんだよ、未来が。ほんの少しなんだけどね。」


 ゴードンの見える未来はまだ不安定で、何を見ているのかわからないことの方が多いらしい。でも、今回のライラがいなくなった事の終わりはしっかりと見えた、という。


 ライラはゴードンに笑って抱きついている。そんなに遠い未来ではない。すぐそこにある未来だと。


 だから…!とゴードンは、俺とウォルターに言った。


「これから起きる事がどんな事でも、自信を持って進んで欲しい。その道は間違っていないはずだから。自分達を信じて!ライラは必ず元気で、僕の腕の中に戻ってくる。いいね、自分達を信じるんだ。」


 ゴードンの真剣な眼差しに俺もウォルターも頷いて答えた。




 そのまま、ライラの行方は全くわからなかった。城では黒い影があたりを覆い尽くそうとしていた。


 


 そんな時、赤い大力スカーレットでも事件が起きていた。ゾーイが何者かに攫われて行った、とアレックスから連絡が入った。ゾーイがセオドラ殿の手からふわっとした風に攫われて行った、と言う。


 俺とアレックスは、リリウの元に飛んで指示を仰いだ。


 リリウは言った。


 「お前達の主の婚約者が同時にいなくなった。それぞれの婚約者をエサにして、2つの大陸の王太子を滅するつもりなのだろう。そして、この星を滅ぼそうとしているとしか思えない。

 お前達2人の真の力を出す時だ。行け!何があっても怯むな。自分の力を信じろ!月の姫君のご加護がお前達にはある事を忘れるな。」


 俺達は眼を閉じて、念じた。ライラのいる場所、ゾーイのいる場所…。どこだ。どこにいる…。


 青い大陸アズールのアルカディア山の山頂にライラはいた。雪の中、ドレス姿のライラは瞬きもせず、まっすぐ前を向いて立っていた。


 赤い大陸スカーレットの使われていない城の中にゾーイはいた。拘束されて身動きも取れず、ぐったりと横たわっていた。


 アレックスが言った。


「ライラをまず助けよう。このままでは凍え死んでしまう。」


 ゾーイでなくていいのか?と俺が聞くと、あいつは強い。俺が助けに来ると信じているはずだ。心が折れないうちに助けるから大丈夫だ、とアレックスは答えた。


 その瞳には確たる自信が溢れていた。俺はこんな時に、アレックスとゾーイの絆の強さを知った。



 俺達はアルカディア山に飛んだ。その瞬間。黒い影が俺達を襲った。ライラは身動き1つせずに立ち続けている。黒い影がライラを包み飲み込もうとした時に、ゴードンの声がした。


 ライラ、戻っておいで。僕のライラ。愛しているよ。


 ライラはふっと気付いたように当たりを見回して、ゴードンさま…とつぶやいた。そして大きな声で、ゴードンさまぁ!と叫んだ。黒い影が一瞬動きを止めた時に、アレックスがライラを抱えてゴードンの元に飛んだ。


 黒い影に包まれそうになった俺は、体中の力を込めて雷を落とした。アルカディア山の頂が吹っ飛んだ。


 俺はアレックスの後を追った。

 


 

 ゴードンの腕の中にライラはいた。ライラは笑ってゴードンに抱きついていた。


 ゴードンは、マックスありがとうと言った。

 

「君ががマックスの双子の兄弟、アレックスだね。ライラを助けて、ここに連れてきてくれてありがとう。2人には心から感謝する。


 ん?…んんん?

 …よくわからないけど…。アレックスとゾーイ殿が抱き合ってキスしているのが見えるよ。そんなに遠くない、すぐそこにある未来。」


 ゴードンは俺達にだけ聞こえる小さな声でそう言ってウインクをした。 





 俺達はセオドラ殿と赤い大陸スカーレットの古城に行き、ゾーイを助け出した。ゾーイはセオドラ殿に連れられて、城に戻って行った。


 カイルは俺たちを見て、2人で父親に挨拶に来たのか、と言った。


「お前達はライラも助けたのか?思ったよりお前達の魔力は強かったな…。俺に似たのかねぇ?


 俺達はライラをエサにゴードンを仲間に入れようとしたんだ。そのためにライラを内側から操ろうとしたんだがね…。ライラは強い気持ちをもっていて操れなかった。ライラを俺達の根城に飛ばそうとしても、途中で落ちてばかりだった。


 ライラはゴードンを愛してるんだとよ!

 けっ!なにが、愛してる、だ。

 

 ゴードンの屋敷は守りが堅い。なかなか中に入れなくってね。仕方がないから城を攻撃して、守りが緩む一瞬の隙を狙って、強制的にライラを連れて行った。


 ゴードンが来るかと思ってたのにな。来たのは息子達だ。


 マックスよ、死刑にならなくてよかったなぁ。もう少しで、戦う相手を1人減らせたのに…。


 あの山には俺の仲間がいたろう?お前達に皆、やられてしまったみたいだな。酷い奴らだ、お前達は!


 ゾーイもそうだ。あいつも弱音を吐かなかった。弱音を吐いてくれたら、つけ込む隙があったんだがな…。セオドラとアレックスの事をずっと呟いていたぞ。助けに来ると信じてやがった。


 ゾーイは意識がなくなっても、揺るがなかった。強い女だよ」

  

 アレックスは、当たり前だ…俺の女だよと呟いた。




 俺は静かにカイルに話しかけた。


「母さんは死んだよ。もう何年も前だ。知ってたかい?」


 知ってるとも!とカイルは答えた。


「俺があいつの命を伸ばしてやったんだよ。そうじゃなければ、あの時に死んでたんだ!」


「ほう。それはどう言う意味なんだよ、カイル。」


 俺たちの後ろにリリウがいた。


「なんと、リリウじゃないか!久しいなぁ。お前はまだ、あの月の姫君の部下なのか?俺を騙したあいつの部下なんぞ、よくやってるなぁ…。笑えるよ。」


 あの時、アルカディア山で何があった、と聞くリリウに、カイルは、さぁね、と鼻でせせら笑った。


 俺とアレックスは一瞬で心を決めた。


「リリウ、アルカディア山に行ってくる!」




 俺達は、カイルが死んだ日のアルカディア山に飛んだ。




 アルカディア山は風が吹き、辺りには草も木もなく、雪に覆われていた。


 もどかしいが、俺達は少し離れた所からカイルを見ることしかできない。



 そこには、両手で雪をかき分けるカイルの姿があった。


「くそっ!なんでだよ!なんで無いんだよ!」


 クインが死んじまうじゃないか!とカイルは真っ赤になった手で、ひたすら雪をかき分け続けた。


 そして、泣きながら、俺は騙されたのか…と呟いた。


 その時、黒い影がカイルに忍び寄って言った。やっと気づいたのか、と。


 騙されたお前を助けてやろう。お前のその魔力を私におくれ。そうすればクインの命を延ばしてやろう。5年だ。5年経ったらお前も元に戻れる。そして、私の部下になれば良い。どうだ?良い話だろ?


ーおやじ、やめろ!

ーカイル、やめてくれ!


 俺達の言葉はカイルには届かず、カイルは黒い影に飲まれていった。そして、後にはカイルの遺体が残った。




 全てを見た俺とアレックスは赤い大陸スカーレットの古城に戻った。長い時間、アルカディア山にいたように感じたが、一瞬だった。


「あんな事して母さんが喜ぶと思ったのかよ。」

「俺たち…息子の事は考えなかったのかよ。」

「なんとか言えよ。」


 カイルは俺達に手を向けると、お前達なんぞに分かるか!と叫んで旋風と共に姿を消した。


 リリウが俺達を見て、追えるかと聞いた。俺とアレックスは意識を集中させ、カイルの跡を辿った。


「行ける。大丈夫だ。」

「リリウは月の姫君の所で待っていて欲しい。親父は月の姫君の所に連れていく。」


 頷くリリウをおいて、俺達はカイルの後を追った。


 カイルとの闘いは長かった。お互いにボロボロになっても終わらなかった。最後に俺達が勝ったのは、俺達が2人だったのと、最後まで月の姫君のご加護を信じることが出来たからだと思う。


 歩く事も出来ず、話すことも出来なくなったカイルを連れて、月の姫君の所に戻った俺達に、月の姫君は悲しそうな顔で、ご苦労だったなと言った。


「私がアルカディア山の赤い花の実の話をしなければ、こんな事にはならなかったのだろうか。私は後悔しているよ、カイル。


 お前は行った時期が悪かったんだ。春になったらあの山は…。でも、もう言っても仕方のない事。


 お前に迷いが生まれて、黒い影に付け込まれた。


 お前はどうして自分自身や私を信じきれなかったんだ?

 悲しいな…。

 

 アレックス、マックス。私のそばでカイルを過ごさせてやってもよいだろうか?カイルは生きているだけだ。長くはないと思うから。」


 俺達は頷いて、御心のままに、と答えた。


 リリウは俺達の肩をポンポンと叩いて、悲しげな笑みを浮かべた。


 アレックスはセオドラ殿にカイルの事を全て話し、騎士も親衛隊も辞めて、カイルに代わり罰を受ける覚悟だと言った。


 俺もゴードンに全てを話し罰を受けようと言った。

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