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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第3章 〜マックスの友情〜
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第4話 過去

 リリウ爺さんは俺が何も言わなくても、俺が会いに来た理由を知っていた。そして、思い切り顔を顰めて話し出した。


「わしよりもっと強い魔力を持っていた奴を知ってる。」


 しかしリリウは、そいつが死んだ事を自分の目で見た、亡くなってもう随分経つ、と言った。


ーあいつが、まさか?…ありえない…。


 リリウが小さな声で呟いたのを俺は聞いた。


 少し時間をくれ、明後日また来て欲しいとリリウは言った。


 そして、少しは楽しい話を聞かせてくれや、と言うので、メグを家に迎えに行った時の事や、新しい家の事、ゴードン殿下の気晴らしの事を話した。


 リリウは、お前は今、幸せなんだな、と言った後でゴードンについてこう語った。


「ゴードン殿下もお前達もまだ若く、目覚めていないことが多い。あのお方の魔力はお前たちとは違う力だよ。マックス、しっかり支えて差し上げろ。」


 分かるような、分からないような…。俺にもまだ目覚めていないことがあるんだろうか、と思いながら家に戻った。




 俺の魔力の事をメグは知らない。別に隠してているわけではないのだけど、言いそびれてしまった。メグは俺がゴードンに気に入られて、騎士になったとだけ思ってる。


 いつか、きちんと話をしなければいけないとは思っているけど、きっかけが掴めないまま、ずるずると一緒に暮らしている。


 今はゴードンの屋敷に泊まり込みで仕事をしていて、メグに会う事が少なくなってしまった。メグも寂しいらしく、こうして家に帰った日はずっとそばにいて離れないし、キスして欲しいと何度も言う。


 俺の事を愛してくれているメグの事を思うと、きちんと話をして、ケジメをつけたい。


 そんな事を考えながら、2人で長い夜を楽しく過ごした。





 2日後、再びリリウの元に飛ぶと、アレックスもやってきた。


 青い大陸アズールで起きている事はリリウから聞いたよ、とアレックスは言った。赤い大陸スカーレットでは今の所何も起きていない。セオドラ殿下を始め、皆変わりなく過ごしているらしい。


 ところで、メグちゃんとうまくやってるかい?とアレックスが聞くので、あれやこれやと話して聞かせると、マックスはちょっとだけ寂しそうな、曇った顔をした。


「お前は独り占めできていいな。俺は…」


ーうん、うん、わかってるよ、アレックス。

 相手がゾーイ殿じゃぁね、独り占めはできないね。

 そばにいるだけで幸せ…なんて男なら辛すぎるよね。


 俺はアレックスの肩をポンポンと叩いて言った。


「お前の事だ。ゾーイ殿と2人きりの時間をこっそりと持ってるんだろ?それでいいじゃないか?」


 アレックスは、にやりと笑った。


「アレックス、それ、スケベ笑いだよ!」


 アレックスの恋は、ゾーイ殿と2人だけの秘密だ。まぁ、俺は知ってるけど…。


 かなり危険な恋だけど、だからこそ2人は離れられないのだろう。アレックスに見つめられたら、女は…。


 罪作りな男だ。




 リリウは俺達に熱いコーヒーとダウム爺さんちの林檎ジャムを使ったパイを出してくれた。


 少し話は長くなるから、食べながら聞いてくれ、とリリウは話し始めた。




リリウはコーヒーを一口飲んで話し始めた。


 リリウが自分より魔力が強いと思うのはただ1人、俺達の親父、カイルだと言う。


 リリウとカイルは同じ師のところで魔力を磨きあった仲間で、2人は月の姫君に認められて部下となった。リリウは青い大陸アズールに住み、カイルは赤い大陸スカーレットに住んだ。


 カイルはクインと恋をして結婚し、アレックスとマックスの2人が生まれた。


 しかしその後すぐ、クインは病気になった。どの医者に見せても有効な治療がないと言われたカイルは、月の姫君に良い薬を知らないかと尋ねた。


 

「青い大陸アズールのカナルディア山の山頂に咲く、赤い花の実はどんな病でも治すと聞いたことがある。


 だがそれは、私が実体として存在した何千年も前の話。今もその花があるのか、その実がクインの病に効くのか、わからない。」


 月の姫君はそう答えた、と言う。


 カイルはカナルディア山の山頂に飛んだ。


 そして、それっきり帰って来なかった。


 心配したリリウがカナルディア山に行くと、カイルの遺体があった。あたりには草も木もなく、ただ荒れた岩場があるだけだった。


 リリウはカイルの遺体を連れ帰り、荼毘に付して弔った。手元にはカイルの骨が残った。


 リリウは病状の進んでいるクインにカイルの死を話すことができなかった。カイルに代わりお金を毎月送ることがリリウに出来る事だった。クインは最後まで、カイルが生きていると思っていただろう。


 今、青い大陸アズールに起きている事は、叛乱の前触れだろう。あの強固な守りを突破するためには、強い魔力は不可欠だ。だが…


 リリウは黙り込んだ。


ー本当にそれが目的なんだろうか?



 

 アレックスと俺はしばらく何も言えなかった。


 アレックスが震える小さな声で、親父の最後を教えてくれてありがとう、と言った。


「リリウが仕送りをしていてくれたんだね。知らなかった…。お陰で母と3人生き延びることが出来たんだ。感謝の気持ちしかないよ。」

 

 そう言って、俺は泣いてしまった。アレックスも目が真っ赤になっていた。


 



 もう一杯うまいコーヒーを淹れよう。林檎ジャムのパイも、もっと食べてくれ!そう言ってリリウは席を立った。


 しばらくの間、俺達は俯いて沈黙していた。


 コーヒーを持ってきたリリウは、さてどうする?と俺たちに問いかけた。


 何も良い考えは思いつかない。


 大事な事は、青い大陸アズールの都で起きている事件の首謀者を一刻も早く確捕する事だ。そいつが誰なのか、はっきりさせたい。


 赤い大陸スカーレットで何も起きていないのなら、アズールやゴードンにだけ恨みがあるのだろうか。


 俺はゴードンにこの話をしに、城に戻った。




 ゴードンはしばらく黙っていた。そしてこう言った。


「ここで事件を起こしているのが、マックスの父親殿ではないと良いな。まぁ、亡くなっているから、違うだろうけどね。」

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