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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第3章 〜マックスの友情〜
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第2話 印

 しばらくしたある夜。ベッドの中でメグと俺、2人だけの幸せな時間を過ごした後、抱き合って余韻に浸っているとメグの両親の酒場の方から叫び声が聞こえた。


「誰か、助けて!殺される!」


 俺はメグに、ここから動くな、鍵をしっかりしめろ、俺以外の奴が来ても絶対ドアを開けるな、と言い置いて酒場の方に走って行った。


 酒場は大乱闘になっていた。何が事の始まりかわからないが、怪我人が何人もいた。俺は一つ一つの取っ組み合いを引き剥がし、頭に血が上っている奴らの上に水をかけたりして、騒ぎを収めようとした。


 その時、突然、俺は意識がなくなった。

 

 気がつくと俺は牢に入れられていた。何がなんだかよく分からなかったが、変な容疑をかけられていた。


 俺は酒場で大暴れし、何人かに怪我を負わせた事になっていた。その上、警察が来た時には手にナイフを持っていて、そばには死体があったと言う。そして、俺が刺したところを見たと何人かの証言があった。


 殺人と複数の暴行傷害…この国の法律では俺は死刑になる。


 俺は何もしていない、と言ったが信じてはもらえるはずもなかった。魔力を使ってどうにかできないかと考えたが、ここから逃げ出しても罪は消えないし、下手に姿を消すとメグに迷惑をかける事になる。それだけは避けたかった。


 次の日、メグが泣き腫らした顔で牢に面会に来た。俺を見るとメグは無理に笑顔を作り、体を少し震わせながら俺の体を心配して、また泣いた。俺は牢の鉄格子越しにメグの頬を撫でた。


「俺は大丈夫だよ。メグは大丈夫かい?怖い思いをさせてしまって、すまなかったね。酒場がめちゃくちゃになって、メグの両親は大変だろう?」


 と聞くと、メグは変な事を言った。


「それが…父も母も、何も覚えてないの。マックスが来た事も知らないって。気がついたらマックスがいて、手にナイフを持っていて…って言うの。絶対、おかしい。

 

 マックス、待っていてね。少し調べてみるから。」


「だめだ、メグ。何もするな。お前を巻き込んでしまう。何か大変な事が起きる予感がするんだ。


 大事なメグに何かあったら、と思うと俺は冷静でいられなくなる。お願いだから…何もせずに俺が帰るのを待っていてくれないかな?」


 頷くメグの頬をもう一度撫でて、俺はメグを帰した。メグは何度も愛してると言って、振り返り振り返り帰って行った。


 


 俺はここで魔力の発動は出来るのか、と手のひらに小さな炎を出そうとしたができなかった。牢獄には魔力を封じる結界が張られていた。


 何か方法はないかと頭を巡らせると、一つ思い出した。左胸のピンバッジ。俺はゴードンに賭けてみようと思った。


 左胸のピンバッジを握りしめて小さな声で俺は呟いた。


「ゴードン。マックスだ。助けて欲しい…」


 ゴードンは透き通った体をゆらゆらと揺らせて、俺の目の前に現れた。それは月の姫君と同じ、実体のない意志だけの姿。


「ん?マックス、変なとこにいるね。何やったの?」


 俺は自分に起こった事を話した。ゴードンは俺の眼を見て、その透き通った手で俺に触れて言った。


「嘘は言ってないみたいだね。ちょっと待ってて!」


 程なく俺は牢から出された。案内人に連れられ着いた先にゴードンはいた。


「来た来た!マックス、ひっさしぶり〜!」

とゴードンは俺に小さく手を振った。




 ゴードンは俺を小さな部屋に連れて来て、2人きりになった。昼でも輝く赤い月と青い月を窓から眺めながら、ゴードンは話し始めた。


「マックスってさ、すごい魔力の持ち主…だよね?


 そんな男がこんな暴力沙汰を起こす、なんて僕には思えないんだよなぁ。そんな事する理由もないだろ?マックスレベルの魔力の持ち主なら、もっと色々と上手い事やるよねぇ〜。だろ?

 僕って、そういうの分かるんだよ。気づいてると思うけど、僕は人の心が読める。さっきみたいに意志だけで他人と繋がる事ができる。他にも色々出来るんだけど…。

  …でもさぁ、僕って、武力系の力はあんまりないんだ。飛べないし、雷落とせないし…だから、闘うための強い魔力を持つ奴を探してた。


 なぁ、マックス、僕んちで働かない? 給料はいいと思うよ…」


 黙ってゴードンを見つめている俺にゴードンは言った。


「実はさ、お前がこんな事になった事以外に、変な事が最近かなり起きてるんだよねぇ。すごく嫌な予感がする。

 だからさぁ、この国を守ると思ってさぁ、僕の事、助けてくれないかなぁ…」


「…ゴードン、お前って………何者?」


 あれっ?言ってなかったっけ…?と済ました顔でゴードンは言った。


「僕はね、この国で王太子やってるゴードンだよ」


ーえっ?えええっ!


 俺は焦りまくって、床に片膝をつけ頭を垂れた。

「知らなかった事とはいえ、ご無礼の数々、どうぞお許しください…」


「マックスが嵌められた件は、僕がきっちり調べる。お前が心配する事はないよ。

 だっからさぁ〜。僕んちで働いて!」


 俺はゴードン殿下の顔を見て、ほんの少しだけメグの事を考えた。ゴードン殿下の元で働いて、メグを幸せにできるか否か…。


 そして、俺は決断した。


 俺は右手を左胸に当て頭を垂れて言った。


「御心のままに…。

 ゴードン殿下に月の姫君のご加護が在らんことを!

 そして、あなたの下僕に祝福を願う。」


 俺が返事をするや否や、ゴードンはどこからか聖剣を出して俺の肩に当てて厳かに言った。


「この国の王太子として、マックスに祝福を与える」


 やったぁ!これでマックスは他の奴に取られないね!とゴードンは喜び、こう言った。


「左胸、見せて!見せて!」


 俺は片膝を付きシャツをはだけて左胸を出して、ゆっくり眼を閉じた。すると、青い大陸アズールの紋章がくっきりと浮かび上がった。


「おおぉ〜っ!カッコいい! !

 僕はこういう印、付けらんないんだよね。

 …ちょっと残念。


 マックスはこれから僕の親衛隊の隊員ね。

 じゃあ、制服着よっか。」


と、親衛隊の制服を持って来させ、俺の身なりもあっという間に整えさせ、ゴードン殿下自らまた、あのピンバッジを付けた。そして、こう言った。


「メグちゃんに会いに行っといで。で、うちに連れておいでよ。うち…って城のことね。城の近くにマックスたちの家を借りとくからね。


 あ!僕の馬、貸してあげる!白馬だよ〜。女の子は喜ぶよぉ〜!」


ーこのお方はメグのこと、なんで知ってるんだ? 

 ん? こうやって考えている事も読まれてるのか?


 などと頭に渦が巻いていると、ゴードン殿下はニヤリと笑ってこう言った。


「マックス、大丈夫だよ。必要な時にしか人の心は読まないさ!」





 俺は結局、ゴードン殿下には逆らえず、白馬に跨り、ゴードン殿下の従者を4人ほど連れて、メグの待つ俺の家へと帰った。


 メグは俺を見るなり泣き出した。無事に出て来れたのね、と泣きながら俺に抱きついた。メグの唇にそっとキスをすると、ますます泣いた。


 しばらくしてから、メグはハッと気がついて

「マックス、その格好…。ど、どうしたの?」

と言うので説明しようとしたが、長くなりそうなので、とりあえずゴードン殿下の元に行くことにして、メグを連れて外に出た。


 白馬に跨がり、青いマントを翻した親衛隊員姿の俺はメグに手を差し伸べ、爽やかに微笑んで言った。


「メグ、おいで。城に行くよ。」

 

メグは真っ赤になった。近所の皆も出てきて、おお〜っとと口々に言い、なぜか拍手が起きた。


 俺は白馬にメグを横抱きして乗せ、ゆっくり走った。メグは俺を見上げてこう言った。


「なんだか分かんないけど、マックス、とても素敵。かっこいい!愛してる!」

 

そして俺の首筋にキスをすると、そのまま吸い付いてキスマークをつけて言った。


「私の印、つけちゃった!」


 俺は体が爆発しそうになって、思わず馬を爆走させてしまった。メグはあまりのスピードに半泣きになり、俺にしがみついて離れなくなった。


 仕方なく涙目のメグを抱っこしたままでゴードン殿下にお目見えすると、ゴードン殿下は一言だけ言った。


「メグ、か、か、かわいい!」



 心配かけたメグとイチャイチャするんだよ、とゴードン殿下は仕事を始める前に3日の休みをくれた。


 俺とメグはかなりイチャついた後、メグの両親の所に行ったり、片付けしたりして過ごした。皆、俺が投獄されてたのに、なぜ騎士なれたのかと聞きたがったが、本当の事は言えないので適当に話を作った。


 最後の夜は思いっきりメグと2人の時間を楽しんだ。


 メグは俺がゴードン殿下の親衛隊員になってから、前よりもずっとずっと俺にベッタリで、素敵、かっこいいを繰り返してくれる。そして、キスして欲しいと何度もおねだりをする。そんなこんなで俺はすっかり張り切ってしまった。


 リリウ爺さんが最後の最後に俺達に教えてくれた、とっておきの魔力に感謝だ。リリウはこういう時にとても役立つ魔力の発動の仕方を2つ教えてくれた。女の子は大事にするんだ、絶対に泣かすなよ、と一言添えて。どんな魔力か、は想像に任せる。


 メグは俺の腕の中で微睡みながら、親衛隊の制服姿は他の女には見せないで…と言った。俺はニヤけてしまった。


 ゴードン殿下の借りてくれた家は城のすぐそば。徒歩3分。すぐ呼び出せる場所…であった。とても良い家でメグも大喜びだった。

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