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2つの月を持つ平和な星の物語  作者: 雪女のため息
第3章 〜マックスの友情〜
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第1話 出会い

第三章  〜マックスの友情〜 が始まります。毎週、月、水、金の10:00に更新いたします。

  俺とアレックスが3年に渡る修行を終わらせて1ヶ月が過ぎた。


 月の姫君は無知で荒くれだった俺達2人を、リリウ爺さんに預けて修行させてくれた。リリウ爺さんは3年という月日をかけて、俺達をこの星で最強の魔力を持つ、分別のある大人に育ててくれた。


 俺達2人は月の姫君に配下として認められた。これからはこの星のために働け、と月の姫君は仰った。


 そして、俺はここ、青い大陸アズールにやって来た。




 

 俺が緑に囲まれた田舎の道を歩いていると、女が倒れていた。陽の燦々と当たる道、木陰もない、そんな場所に何も持たずに女が倒れていた。


 女は意識がなく、身形からするとそれなりの身分のように見えた。声を掛けても女は身動き一つしない。


ー仕方ない…。


 俺は女を背負い、歩き始めた。近くの民家にでも連れて行こう。そう思って歩いているが、ただ草原が広がり道が続いているだけ。


ーこの女はどこから来たのだろう。


 途中の木陰で女を背中から降ろし、女を見てみる。整った顔立ちの女だった。顔は青白く、漆黒の髪が少し濡れて額にかかっている。


 持参の皮袋から水を一口飲み、俺は女を背負ってまた歩き始めた。ぐったりとしたその身体は羽のように軽かった。





 昼でも輝く大きな二つの月、赤い月と青い月を見ながら歩き続けていると、目の前に突然男が1人現れた。


「ねぇ、君!その子、どこで見つけたの? 僕、その子を探してたんだ。

 …もしかして、君が拐ったの?」


「えっ? えっと…。道に倒れてた。どこかで休ませようと思って、背負って歩いてるところだ。」


 男は、本当?と言いながら俺のそばまで近づき、俺の眼を見て軽く腕に触った。


「…ほんとみたいだね。その子を助けてくれて、ありがとう。ここからは僕が背負っていくよ。


 …ついておいでよ。お礼もしたいしさ。一緒に昼ご飯食べようよ。」


 男はゴードンと名乗った。


「この子はね、僕の恋人でライラって言うんだよ。可愛いでしょ? 僕達、もうすぐ結婚するんだ。ふふ…なんか、待ち遠しい…」


とゴードンは恥ずかしがりもせずに言った。


 しばらく歩くと、大きな屋敷が遠くに見えた。あそこが僕んち、とゴードンは言った。なんだか断りきれずに付いて行くと、執事と思われる男が走って来た。


「ゴードン様!ライラ様はご無事だったんですね。…よかった、ようございました。」

「今からこの人と昼ごはん食べるから、ウォルター、準備してくれるかな。

 …ん? 僕、君の名前、聞いたっけ?」


 こんな感じで、ゴードンと俺は知り合った。

 ゴードンは身分の高い貴族のようで、大勢の使用人がいて、食事もなかなかの豪華さだった。


 ゴードンは出自を語らず、俺の事も聞かなかった。ライラの事も何も話さなかった。俺もその事を聞くほどバカではなかった。


 食事中の話題は、この辺りの美しい景色や作物の収穫の事などが主で、楽しく時間を過ごす事ができた。


 では、そろそろお暇致しますと、俺は大きな屋敷を後にした。すると…


「おぉ〜い、マックス!待ってくれ〜!」


と言いながらゴードンが走ってきて小さなピンバッジを見せた。それを俺の上着の裏、左胸に当たる部分に自らの手でつけてこう言った。


「何か困った事が起きた時には、このピンバッジを握って俺の名前を呼んでくれ。…じゃあね。」


 そう言って、ゴードンは走って屋敷に戻って行った。何のことやらと思ったが、走り去るゴードンの後ろ姿を俺はなんとなく見送った。


 この出会いが俺の人生を変えることになったのだが、そんな事はまだ知らなかった。





 俺は青い大陸アズールの都に落ち着いた。


 しばらくして、仕事もどうにか見つかった。月の姫君からはこの星のために働けと言われていたが、魔力を使う仕事は選ばなかった。一度は普通の暮らしをしてみたいと思ったから、魔力は持っていないフリをした。


 取り敢えず小さな家を借りた。近くには酒場があり、うまい食事も出していた。俺は仕事の後で酒場で1人酒を呑んで、食事をして帰るという暮らしをした。

 

 職場の仲間とたまに飲んだり食べたり、遊びに行ったり、と楽しい事もたくさんあった。以前の荒れた暮らしとは全く違う、普通の暮らしもいいもんだなと思っていた。


 半年ほど経った頃、一人で酒場で飲んでいると、酒場の看板娘のメグが俺を意識しているのに気がついた。


 メグはチラチラと俺を見ていて、俺と目が合うと慌てて目線を逸らした。メグは薄い緑色の眼とカールした琥珀色の髪を持つ、とても可愛い女の子だった。

 

 俺は勇気を出してメグに一緒に飲まないかと誘ってみた。メグは俺の隣に座り、にっこりと笑ってジュースを飲んだ。俺も酒は飲まず、冷やした香草茶を飲んで、2人で楽しく話をした。


 それから毎日の様に2人でいろんな話をした。メグはいつも楽しそうに話して、コロコロと笑い、眼をクリクリさせた。


 しばらくして俺とメグは恋人になった。2人で遊びに行ったり、手を繋いだり、キスしたり、抱き合ったり…。メグを見つめているだけで俺はドキドキして、幸せだと感じた。


 俺の家に初めて誘った時、メグは恥ずかしそうにしていた。部屋の灯りを消して抱きしめると、メグはウルウルとした眼で俺を見つめた。キスをするとメグはいつまでも俺の唇を離そうとしなかった。


 メグ、可愛いよと俺は何度も囁いた。

 メグも小さな声で俺の耳元で囁いた。

「マックス、大好き!」


 俺達2人はいつまでも離れず、甘い夜を過ごした。


 しばらくして、俺とメグは一緒に暮らし始めた。メグの両親も俺とメグの事をとても喜んでくれた。


 俺はリリウ爺さんと共に、月の姫君の元に飛んだ。

 結婚したいとメグの事を相談すると、実体のない月の姫君は光の中でゆらゆらと揺れながら、大きな眼を更に大きくしてこう言った。


ーなんと!アレックスよりお前が先だったか…。

 良い相手が見つかったのだな。おめでとう。幸せになれ。


 リリウ爺さんは心なしか眼に涙を浮かべているように思えた。リリウ、泣いてんの?と聞くとリリウ爺さんは、馬鹿者、なんで俺が泣くのだ、と言って鼻を啜り上げた。


 俺は口に出すのがとっても恥ずかしかったので、心の中でリリウに感謝した。


ー心配かけていたんだね。ごめんね。そしてありがとう。


 赤い大陸スカーレットにいるアレックスも心から喜んでくれて、今度ぜひ会わせてほしいと言われた。


 俺は本当に幸せ者だと思った。

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