第四回イベント『チーム攻城戦』8
東西南北、全てのエリアでチーム『下剋上』の合図によって戦いが起こった。だがそれらは全て対策されていて、瞬く間に制圧された。中央エリアに到達したチームは無く、静けさが広がっている。
そんな中、西エリアと中央エリアを隔てた山の手前で地響きが起き、地面から一隻の戦艦が飛び出し、浮いていた船体をドスンと着地させて水平に戻して地上を走り出した。
その戦艦はルーナが保有する、陸上戦艦『ドレッドノート』である。
先端には巨大なドリルが付いていたが、役目を果たしたドリルは亜空間に仕舞われ、元の船首へと戻った。
艦橋では、艦長席に座る白衣を羽織ったルーナと、その隣に立つ黒い海軍服を着た女性がいた。
女性は金髪の縦ロールに青い瞳、白い肌のお嬢様らしい美貌を備えており、周囲に艦の全てを操作可能なホログラムを展開しており、ルーナに代わって艦を動かしていた。
その彼女が、中央エリアの状況を把握して言った。
「マスター、TAタキオンがこちらに高速で接近中です。通信で呼び掛けられていますが、どうしますか?」
「繋げて」
彼女は指示に従い、ルーナの目の前にホログラムのモニターを出した。モニターにはパイロットスーツにヘルメットを被ったハカセを映った。
「やぁルーナ。君なら地面を掘り進んで来ると思っていたよ」
「期待に添えて来てあげたよハカセ。この強くなったドレッドノートで、君のTAを返り討ちにしてあげよう」
「出来るものならやってみたまえ。君の超兵器をいつも初見で攻略しているのは私だ。今回も破壊してあげよう」
「今回ばかりはそう上手くはいかないよ。ドレッドノート、挨拶してあげて」
「初めましてハカセ。私は陸上戦艦ドレッドノートです。この度の一戦、勝たせてもらいます」
「なるほど。遂にマナロイドを作ったのだね」
「まぁね。ハカセもやろうと思えば作れただろうに、なんでベネットの戦車にはやらなかったの?」
「彼女には既に大罪の七姉妹がいるから不要だろう。それに私は、新たな生命を創り出すよりも、人型ロボットを弄っている方が浪漫があって好きなのだよ」
「……やっぱり、方向性の違いはどうにもならないね」
「同感だよ。共同での物作りは楽しかったが、あんなことは数年に一度で充分だ」
「だね。じゃあそろそろ死んでもらおうか。ドレッドノート、攻撃開始」
「了解しました」
指示を受けたドレッドノートは通信を切ると、全ての武装を展開して瞬時に接近中のTAタキオンをロックオン。攻撃を始めた。
主砲は威力を重視してビームを撃ち出し、副砲は命中重視で拡散ビームを撃つ。側面の機銃はマナコーティングした実弾を弾幕としてばら撒き、煙突からは次々とマナ結晶の破片を内蔵したマナミサイルが飛んで行く。
一方、ハカセが操縦する紫と白の塗装がされたTAタキオンは、さらなる改造によって肩の装備枠を潰さずに、ナノマシンで成形されたマナウィングの搭載に成功して以前よりもずっと高機動となっていた。
致命打になる主砲を回避しながらお手製のシールドで拡散ビームを防ぎつつ、亜空間換装システムによって肩の武装をTA用に小型化されたマナミサイルに変え、すぐさま迎撃ミサイルとして大量に発射してばら撒いた。
変則的な軌道をするマナミサイル同士がぶつかったり、至近距離で爆発することで誘爆する。次々と迎撃している中で幾つかのマナミサイルがすり抜けてTAタキオンに接近したが、ハカセは右手に装備したマシンガンでしっかりと迎撃してドレッドノートへ更に接近する。
このままでは貼り付かれて陸上戦艦ドレッドノートは破壊されるだろう。でもルーナは指示を出さない。今回の戦いは明確に自我を得たばかりの、生まれたてのドレッドノートの為の訓練だ。
ルーナが横目でドレッドノートの様子を窺えば、案の定、ドレッドノートは眉間に皺を寄せて口を堅く結び、明確に焦っている様子であった。展開しているホログラムのモニターが忙しなく動いて攻撃の手を緩めていないが、まるで攻撃パターンを読まれているような……それこそ生みの親であるルーナを相手にしているような感覚があって上手くいかないのだ。
結局、まともな有効打も与えられずに船体に至近距離まで接近され、殆どの武装の死角となる内側に潜り込まれてしまった。
「潮時だね。ドレッドノート、脱出するよ」
「……分かりました」
悔しさを滲ませた表情で頷いたドレッドノートは、ハカセを抱きかかえると体内に仕舞っていた艤装を腰の後ろから出した。
それは一昔前に流行った擬人化もののような武装で、小さくなった陸上戦艦ドレッドノートを二分割にしてアームで支え、横に広げられている。全てが人並みサイズに小型化されているが、その威力は元のままだ。
だからドレッドノートが副砲の一門だけでビームを発射すれば、砲口以上の太さのビームが出て、軽く円を描くと艦橋側面に人が通れるほどの穴が開いた。後はマナロイドの力で踏み込んで一気に飛び出し、ドレッドノートは艦から脱出した。
その直後、TAタキオンがオリジナルウェポン『対超兵器用巨大刀』という、巨大機械刀を持って起動し、数十メートルに伸びたビームサーベルを船体側面に突き刺し、一気に船尾まで真っ直ぐ飛びながら切り裂いたことで、弾薬庫やエンジンが誘爆して大爆発を引き起こした。
陸上戦艦ドレッドノートの破壊に成功したハカセは、一分ほどしか持たない巨大機械刀を止めて亜空間に仕舞い、両手にマシンガンを装備してルーナとドレッドノートの前に着地し、マイクを起動して声を掛けた。
「勝負ありだよ、ルーナ」
「そうだね。今回は私の負けだ。ドレッドノートにも直接戦って貰おうかと考えていたけど……戦うにはちょっと経験不足みたいだ」
「マスター、私は戦えます!」
先ほどの敗北を挽回しようとやる気に溢れるドレッドノートに、ルーナは首を振った。
「ダメダメ。普通のTA乗りが相手だったら任せてたけど、ハカセが相手じゃ勝ち目は無いよ。課題は見えたし、撤退するよ」
「……分かりました」
「よしよし。じゃあハカセ、模擬戦ありがとね!」
「また何かあったら来たまえ」
手を振って別れの挨拶をしたルーナは、インベントリから自作の簡易転送装置『テレフープ』を起動して地面に設置し、事前に座標設定しておいた自チームの城へと瞬時に帰還した。
二人が居なくなり、テレフープが向こう側から接続を切られて自壊したのを見届けたハカセは、先程の戦闘データを確認してニヤリと笑みを浮かべた。
「……TAでのマナウイングの使用に問題無し。これで私たちはまた強くなった」
と、気が抜けたところで自然と欠伸が出た。
「……ふぁ。流石に一日移動と戦闘は疲れるな。どうせもうすぐ終わるだろうし、ここでひと眠りさせてもらおうか」
ハカセはシートから立ち上がると、インベントリから菓子パンのコロネの見た目をした寝袋――盃屋ブランド製の『コロ寝袋』を取り出してコックピット内の空きスペースに敷き、ヘルメットを脱いでから寝袋に入って眠った。
TAタキオンはパイロットがコックピット内で寝たことを検知し、自動警戒態勢に入りつつ、自身も最低限の機能以外は切ってスリープモードに入った。
――その頃、チーム『下剋上』はスカイバイクでエリアを隔てる山を越え、列を成してかなりの上空を飛んでいた。
……おかしい。静かすぎる……。
トウジロウは順調に進み過ぎていることと、中央エリアで戦火の一つも上がらず、静けさだけが広がっていることに大きな疑念を抱いていた。仲間たちも同じ思いを持ち、辺りをキョロキョロと見渡して落ち着かない様子であった。
この状況に、ハンゾウはスカイバイクを横に並べて声を掛けた。
「主殿、恐らく相手にバレて対策されていると見て良いでしょう。どうされる?」
暗に今ここで引くかどうか決めろ、と迫っていた。
それが分かっているトウジロウは溜息一つ吐いて答えた。
「……仕掛け人なんだから、途中で投げ出すのは無しでござるよ」
「……ならば、俺は忍者らしく汚く動かせてもらう」
「任せるでござるよ。ただ、成果は出せよ?」
「御意」
ハンゾウはスカイバイクを急旋回させ、単独行動を取り始めた。
トウジロウたち一行は不気味に感じるほど順調に空を飛び、定期的にマップを開いて目的地であるチーム『円卓』の本拠地を目指す。
さらに上空から監視する一人の妖精少女が居ることも、超高速で動いたことも知らずに……。
別れたハンゾウは近場の城へと向かっていた。ここまで道中が順調ならば幾つかの城のコアクリスタルに接触し、魔力によって遠隔で爆発させられる起爆札を貼り付けて回り、トウジロウたちが敗れた時に一矢報いてやろうという算段だ。
これは元々ハンゾウ自身が考えた案であり、正々堂々が好きなトウジロウは乗り気ではなかった。だからこのような異常事態が起こった場合のみ行動を起こすと約束していたのだ。
マップを開いて予めマーキングしておいた近場の城へと順調に進む中……ふと、背後に違和感があった。何かいるような、乗っているような……。
まるでホラーゲームのような嫌な予感がしたハンゾウは、意を決して振り返った。
「よっ!」
気軽に声を掛けたのは、妖精らしい衣装を着ているミグニコだった。
「っ! 貴様!?」
ハンゾウは瞬時にパッシブスキル【暗器】によって草履に仕込んでいたナイフを先端から出した。そして墜落覚悟でハンドルから手を放し、逆立ちから器用に足を振り回して攻撃した。
が、あっさりと躱されて逆に両足首を短剣タイプの聖剣シルフィードで切り裂かれた。
「ぬぅっ!」
痛みを我慢し、ハンゾウは逆立ちしている手だけで跳躍してスカイバイクから離れ、瞬時に小さな起爆装置を取り出し、スイッチを押してバイクの内側に設置していた爆弾を爆発させた。
「ははっ、そんなもんで俺がやられるわけないだろ。ざぁこ」
「……」
爆発すらスピードで躱し、目の前に現れたミグニコとの決定的な力の差にぐぅの音も出せず、ハンゾウはマスクの内で苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけるしか出来なかった。
もう一度、今度はインベントリから出した二本の短刀を振るうが、空中戦では種族ウイングに圧倒的なアドバンテージがあり、まるで遊びのように飄々と躱される。苛立ちを覚えたハンゾウは二本の短刀を投げつけるように捨て、今度は最も得意とする槍を持ち、自身にマジックスキル【浮遊】を付与して攻撃を仕掛けた。
だがそれも当たらない。次の一手の為に大袈裟に振っていたり不自然な動きをしたりもしたが、既に見破られたかのように動かれてしまっていた。
「……何故見える!?」
「ん? ああ、この極細の糸のことか……俺は目がいいからな」
わざわざ答えたミグニコは自分の目を指さし、そのまま挑発するように「あっかんべー」をした。
自分の持っている複数の武器や、攻撃に使うアイテムを全て駆使しても掠り傷すら付けられないと悟ったハンゾウは、それでもという思いで槍を振るい、糸を手繰り寄せて絡めようとした。
攻撃は虚しく、ミグニコが三次元の踊りで躱しながら短剣を振るって糸が切られ、さらに懐に潜り込まれて両腕を切断され、腹に瞬間的な加速による蹴りを入れられて浮遊の制御が出来ずに落下する。
……だが、これで……!
ハンゾウは動かず自由落下に身を任せた。気絶したフリをすれば地面に叩きつけられて死ぬだろうと思わせ、地面に落ちる直前で手を尽くして身を隠そうと考えたのだ。
「ばぁか、そういう考えくらい読めるっての」
ミグニコは頭から落ちるハンゾウの前に来て、ニヤリと笑ってみせた。それから相手に見えるようにゆっくりと背後へ回り、足と腕を胴体に回してがっしりとホールドした。
「ミグニコ! 何をする!?」
「へへっ、これは戦うことを諦めないお前に対して、ちょっとしたご褒美だ。ぺったんこだが俺の胸は感触がいいだろ? ついでに股も擦り付けてる。少女にこんなことしてもらえて最高だよな?」
「…………」
「あれ?」
反応が全く無く、ミグニコは首を傾げた。
マスクをしていて元々顔が見えないハンゾウはというと、呆れ果てていた。ハンゾウの女性の好みとして、ミグニコは敬遠するレベルでストライクゾーンから外れていたのだ。
だから、気まずいながらも言った。
「……すまんが、全く好みじゃない。むしろやめてくれ」
「……あ……う……」
自分のやっていることが無意味であり、むしろ勝手に盛り上がってクソガキのような行為に及んだことが恥ずかしくて、ミグニコの顔は真っ赤になった。
その恥ずかしさを誤魔化すかのように加速し、落下速度が急激に上がった。
「おいまさか!!?」
「く……くたばれえええええええええ!!」
「うわああああああああああああああ!!」
ミグニコは地面へ向かって真っすぐに飛び、体験したことのない超高速にハンゾウは恐怖心を覚えて叫ぶことしか出来なかった。
地面がまるで壁のように迫って来たハンゾウは、寸前でミグニコが背中から離れたのを感じた。だが、既に落下速度は自身では止まれないほどになっており、止まるまでの猶予も無い。
最後は目を閉じて地面に激突した。体は原形が留めないほどにぐちゃっと潰れ、運営がカメラで映していたモニターは、直前で豪華客船が遊覧する綺麗な映像に切り替わっていた。
トウジロウたちは何事も無く目的地上空に辿り着いて、空中で停止していた。
「……いよいよだ。準備はいいか?」
全員が力強く頷き、トウジロウは深呼吸をしてから声を張り上げた。
「じゃあ、行くぜお前ら!」
トウジロウを先頭にしてスカイバイクを真下に向け、全員が急降下を開始した。このまま城の入り口まで接近し、城の中を駆け上がってコアクリスタルを破壊する算段だ。
城の周辺に見張りをしている者は誰も居らず、トウジロウたちは城の入り口でスカイバイクを止めた。元々徒歩で城の中を進む予定だったが、それ以外に止まる理由があった。
「遅かったじゃないか。チーム『下剋上』の諸君」
「全くだ。随分と待たされた」
城の入り口の前に立っていたのは、チーム『円卓』のアルバとウルフェンだった。アルバは鞘に納めた聖剣を地面に突き立て、柄頭に両手を載せる威風堂々としたポーズを取っている。隣ではウルフェンがシンプルに槍を右手に持って立っていた。二人は抑えることなく威圧感を放っており、トウジロウを含めて全員が肌にひりつくような感覚を味わい、気を張っていないと怖気づいてしまいそうだった。
すぐには攻撃して来ないということだけは分かったトウジロウは、まずスカイバイクから降りた。何かに乗ったままは失礼にあたると考えたのと、咄嗟に武器を構えて対処出来るようにする為だ。仲間もそれに倣い、スカイバイクから降りて少し間隔を開けて横に並んだ。
全員が武器を出して構えつつ、代表してトウジロウが声を掛けた。
「どうやら俺の計画はバレバレだったみたいだな。どうして分かった?」
「俺には優秀な商人が付いてくれていてね、情報収集や諜報活動なんかも請け負ってくれている。それと、隠れて何かやるなら店で相談事はやめた方がいい」
「アドバイスどうも。んで、アルバ……お前さんが戦ってくれるのか?」
「いや、俺は日中に散々戦った。だからこの場はウルフェンに任せると決めている。もし彼を倒せたなら、その時は改めて相手をしよう」
「フッ、上等じゃねぇか! ウルフェン、まずはてめぇから倒す!!」
威勢よく言われたウルフェンは溜息を吐いた。
「……アルバ、だからお前は城の中に居ろと言ったんだ。これでは私が前座扱いではないか」
「すまない。だがここまでやってくれるチームを迎えるんだから、リーダーがいないと失礼になると思ったんだ」
「そういうところは律義だが、やっていることは傲慢そのものだ。ほら、さっさと引っ込め」
しっしっ、とウルフェンはアルバに手を振った。
「……仕方ないか」
この場を任せると言った以上、居てもうざがられるだけと分かっているアルバは格好をつける為に出していた聖剣をインベントリに仕舞い、城の中へ引っ込んだ。
それを見届けたウルフェンは振り向き、トウジロウたちを見つめて彼我の実力差を見極め、装備をインベントリに仕舞い、いつも着ている将校風の黒い軍服姿となって徒手格闘の構えを取った。
「お前たち程度、素手で充分だ。さぁやろうか」
クイクイッと手招きして、挑発する。
だが、ウルフェンがリラックスしつつも適度な緊張感を保った状態で、全く隙が無くて全員が手をこまねいてしまう。
銃を構えるルイスは引き金に指を掛けているが、当たる気がしない。
カードを手に持っていつでも魔法を発動させられるようにしている、種族ケモ耳の狐の女性のコハクも同様だ。
メンバーで最も速いスゥシィも、相手が相手だけに出方を窺っている。
「……来ないか。残念だ……」
ウルフェンは相手が死ぬ気でやって来ないことを期待外れに思った。同時に、このイベントが始まる少し前に受けたチーム『下剋上』からの特訓の打診を、改めて受けてやろうと思った。あの時はイベント前ということで敵に塩を送るのを避ける為に敢えて拒否したが、この体たらくぶりでは下剋上など遠い夢。彼らを立派な戦士にしようと心に決め、その為にまずは普通の人間でも到達出来る高みを見せようと考えた。
「……だから、すぐに終わらせよう。【修羅】【加速】【硬化】【怪力】【凶暴化】」
ステータスを一時的に上昇させるアクティブスキルを複数発動し、さらに種族ビースト固有スキルを発動した。それによってウルフェンは赤いオーラを纏いつつ、筋肉が一回り大きくなって全身の毛が逆立ち、牙と爪が鋭くなった。
それから遠吠えをした。パッシブスキル【キングハウリング】により、大音量と物理的な軽い衝撃波が発生して相手を威圧する。動物ならば恐怖を与え、機械相手ならば電子機器をショートさせる効果を持つ。
それにより、至近距離にいたチーム『下剋上』は怯んでしまい、隙が出来たところでウルフェンは一番厄介な魔法を専門とするコハクを狙い、魔力で形成した鋭い爪の斬撃を飛ばした。これはスキルでも何でもない。
「あっ」
コハクは反応こそ出来たが体が竦んでしまって動けず、そのまま体をバラバラにされて死んだ。
「コハク!」
トウジロウが声を出した直後、ウルフェンは素早く動いて双子プレイヤーのウコンとサコンの間に立ち、二人の頭部を掴むと一瞬にして押し倒して地面に頭を叩きつけ、ぐしゃりと潰して死亡させた。
「ウコン、サコン!」
トウジロウが声を出すだけで何も出来ずにいると、種族オーガのゴウキは背後から心臓を一突きで突き破られて死亡し、種族サイボーグのライアンは首を反対に捻じ切られて死亡した。
「ゴウキ……ライアン……!」
「くそがぁっ!!」
種族ドワーフで、チーム『下剋上』の装備一式の生産と強化を請け負っているスミは大きなハンマーを闇雲に振り回すが当たる筈がない。だが、その意気を評価したウルフェンは目の前に姿を見せてわざわざ片手で受け止め、ドワーフの小さな体に向けて手加減無しの渾身の蹴りを入れて遥か後方まで吹き飛ばした。ただその威力に耐え切れず、スミは死亡した。
「【加速】――見切った」
「【加速】――そこっ!」
アクティブスキル【加速】を小声で発動させ、速さに特化した妖精のスゥシィとネコ娘のヌイが翻弄するように動いているウルフェンを捉えて短剣で攻撃を仕掛けたが、ウルフェンの方が二人の動きを見切って躱し、魔力を込めた爪と手で腕ごと武器を叩き落してから殴って吹き飛ばし、VITとHPの低い二人はそれだけで死んだ。
「くそっ!」
仲間がいなくなったことで気兼ねなく撃てるようになったルイスがアサルトライフルの銃弾を当てるが、ウルフェンには効いた様子が無い。高速で動く中でもしっかりと銃口を向けて何発か当てるが……スキルによってかなりの硬さを持つようになったせいで毛皮すら傷つけられなかった。
流石はゲーム『イレギュラー』のプレイヤーだ。この中では一番才能があるな……。
感心したウルフェンは、目の前に立ってアサルトライフルが弾切れになるまで受けてやった。
「残念だったな。もう少し装備を強くした方がいい」
「……悔しいがその通りだ」
自嘲気味に笑ったルイスは、アサルトライフルを捨てると同時にプラズマグレネードを出して自爆覚悟で起動しようとしたが、その前にウルフェンによって渾身の拳を受け、吹っ飛んで死んだ。
「【チェスト】オオオオオオオオオッ!!」
自分をわざと無視し、自分が攻撃出来ない立ち位置から仲間を減らされたトウジロウは猿叫を発しながらウルフェンに真っ直ぐ切り掛かった。
「甘いッ!」
真っすぐで好感の持てる攻撃ではあるが、あまりにも単調で読みやすい動きにウルフェンは振り向きもせずに回転しながら躱し、その勢いのままに回し蹴りでトウジロウの顔面を蹴り飛ばし、吹っ飛んで死んだ。
ただウルフェンは微妙な手応えに蹴った足を見つめ、思い返して理解した。
「……いい目をしているな」
トウジロウは蹴りが当たる直前、しっかりと目で追って回避しようとしていたのだ。僅かに動いて、ほんの僅かにだが威力を軽減したのだ。
ウルフェンはそれを評価し、微笑を浮かべた。もし、スキルを使わずに攻撃を仕掛けていたら、ギリギリ防御が間に合って致命傷で済んだかもしれない。鍛えればまだまだ戦えて、もしかしたら本当に普通の人が超人を倒せる日が来るかもしれないと思わせてくれたのだ。
「これは楽しみだな……」
指導し甲斐があることに胸を躍らせたウルフェンは尻尾を大きく振り、勝利を喜ぶように普通の遠吠えをした。
チーム『下剋上』は全滅により、敗退となった。
その後、ちょっとした小さなチーム同士での小競り合いがあったが、島全体で殆ど動きがみられず、これ以上続けても無意味と判断した運営によって第四回イベント『チーム攻城戦』は途中終了となった。
これにて、長かった第四回イベント『チーム攻城戦』は終了となります。
マジで長かった……。




