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緊急クエスト『抵抗軍司令官救出作戦』1

テスタメントから人類への最後の課題。




 ベネットが大罪の七姉妹と一緒に転送装置で基地に戻ると、けたたましいサイレンが鳴っていた。昼頃だった筈の世界は薄暗く、基地の入り口で見張りをしている兵士たちが空を見上げているのに釣られて何事かと見上げ、口が開いてしまう。


「なんだ……これ……?」


 基地直上に、直径十数キロはあろうかという程の巨大な円盤が浮かんでいた。船体下部には大小様々な砲台らしきものが大量に備わっており、いつでも撃てるように砲口が地上を向いている。


「これはお母様が用意した宇宙船ね」

「知っているのかプライド」

「ええ、敵らしさを演出する為に作ったハリボテよ。中には人類を鍛える為にロボットがわんさかいるわ。確かこれを使う時は、オペレーション・エンジェルの最終段階を始める時って言っていたわね」


 プライドが説明を終えた直後、まるでタイミングを見計らったかのようにウィンドウが表示された。



 緊急クエスト『抵抗軍司令官救出作戦』が発生しました。


 達成条件:司令官である少佐の救出、及び宇宙船の破壊

 参加人数:五十人

 参加受付時間:ゲーム内時間十分

 ホスト:チーム『円卓』ベネット



「少佐……それに十分!?」


 驚いている間に制限時間のウィンドウが表示され、カウントダウンが始まった。


「あ、あ……ん?」


 急かすような短い時間にベネットがあわあわとしていると、円盤の中心にある丸いハッチが開き、パイプのような光が照射されて基地の何処かに繋がった。

 時間が刻々とカウントされているのを忘れて眺めていると、光のパイプの中を一人の人間が浮上しているのが見えた。

 頑張ってもがいているが無重力状態では為す術も無く、そのまま円盤の中へ連れて行かれた。

 キャトルミューティレーションの現場を目撃して呆然としていると、円盤はそのまま浮上を始めた。遅れて基地に設置されている地対空ミサイルが発射されたが、それらは円盤に届く前にバリアによって防がれた。


「……あっ、もう三十秒経ってる!」


 ベネットは基地に入ろうと走ろうとしたが、七姉妹が付いて来ていないのにすぐ気付いて立ち止まった。


「手伝ってくれないのか?」

「わたくしたちは、今回のことには不参加よ」

「理由は?」

「これは人類への試練ですわ。わたくしたちが協力するのは、その後よ」

「……そうか」


 好きにしろと言った手前、無理して参加させることは出来ないと思ったベネットは基地の中へと入って行った。


「さて、どうしよう? 今すぐチームメンバーを招集するべきか?」


 チーム一覧を確認したベネットは、誰を呼ぶべきか手が止まった。殆どのメンバーが別の世界で活動しており、ワールドシップに居て今すぐ来られそうなのはハカセのみだった。


「……とにかく、呼ぶだけ呼ばないと」


 ハカセに通話すると、すぐに繋がった。


「やあベネット、どうしたんだい?」

「今暇か?」

「藪から棒だね。興味深い話をルーナから聞いている最中だ」

「それは好都合。今から二人で第五世界へ来てほしい。急ぎのクエストで手を借りたい」

「ふむ、気分転換には良さそうだね。ルーナ、君はどうだい?」

「丁度ベネットにも聞いておきたいことがあったんだよね。手伝うよ」

「待ってる」


 通話を終えたベネットはハカセとルーナを迎える為、同時に参加者を募る為に転送装置の傍に向かった。

 到着してすぐ、転送装置から出て来たのは覚えのある一団だった。


「あっ、丁度いいところにいたっすね!」


 ベネットに真っ先に近づいたのは、チーム『円卓の騎士』のリーダーであるアーサーだ。

 装備している防具は冒険者風のものから変わっており、魔術師のマーリン、銃を扱うパーシヴァル、身軽さを重視したベディヴィアの三人以外は騎士らしい甲冑を身に着けマントを背中から垂れさせている。

 違う格好の三人だが、マーリンは変わらず魔術師の格好であるが以前よりも質の良い物に変わっている。

 パーシヴァルは最低限の皮鎧の上から都市迷彩のフード付きマントを羽織り、顔が見えないように深く被っている。

 ベディヴィアは肩や大腿部の肌が露出したファンタジー風の鎧ドレスを身に着けており、前開きのヒラヒラしたスカートも含めて身軽さと華麗さが合わさった見た目をしている。

 ベネットは彼らを一瞥してすぐ、尻尾があれば強く振っていそうな好意を前面に押し出すアーサーに微笑を向けた。


「久しぶりだな。丁度いいって?」

「緊急クエストの通知がこの世界にいるプレイヤー全員に来たんすよ。ベネットさんなら拠点の分かりやすい場所で待機すると思って、一度帰還して来たっす」

「なるほど。よろしく頼む」

「はいっす!」


 握手をしたところで、ウィンドウに表示されているクエストの参加人数が加算された。

 他の『円卓の騎士』のメンバーにも挨拶をしようとしたところで、ベネットが待っていたハカセとルーナが転送装置から出て来た。


「ハカセ! ルーナ!」

「やぁベネット、来てあげたよ」

「昨日ぶりだね。聞きたいことは後にして、クエストに参加するよ」

「ああ、頼む」


 二人の参加が決まって人数が加算されたのを確認すると、ハカセが質問した。


「それでベネット、急ぎのクエストとは何かね?」

「緊急クエストだ。内容はわからないが、少佐が攫われたから救出するらしい」

「救出……何処へかね?」

「ん」


 ベネットが指さした先は空であり、ハカセとルーナが見上げた遥か上空――既に大気圏を突破して豆物ほどの大きさになっている巨大な円盤型の宇宙船が目に入った。


「へぇ、中々興味深いものじゃないか」

「だね。乗り込んだら是非とも調査したいよ」

「程々に頼む。それよりあと大体八分しかない。出来るだけ人を集めたいから何処へ行けばいい?」

「ふむ……人を集めるのに動くのは得策ではない」

「そうだよ。入れ違いになったら時間のロス。ここは大音量で呼び出すに限るね」

「どうやって?」

「試験的に音響装置を作っていた。それを使うとしよう」

「私も作ったよ」


 ハカセとルーナがインベントリから音響装置を取り出した。

 ハカセが出した音響装置は、片手で持ち運べるほどのスピーカーとマイクだった。マイクは太いコードで繋がっている。

 対するルーナの音響装置はわざわざスタンドで支えなければいけない程に巨大な拡声器だった。


「では早速始めよう。ベネット、これを付けてからマイクで呼び掛けたまえ」

「う、うむ」


 嫌な予感を抱きながらも渡された耳栓をした。

 ハカセがスピーカーとマイクのスイッチを入れてサムズアップし、すぐに両手を耳で塞いだ。ルーナも同様の態勢を取り、チーム『円卓の騎士』も全員が物々しい対応に耳を塞いだ。

 準備が整ったのを見たベネットは深呼吸をしてからマイクに向けて声を発した。


「あー、プレイヤー諸君……頼みがある。転送装置の前にいるから緊急クエストに参加して手伝って欲しい。条件は問わない。初心者でも誰でもいい。頼む」


 声はいつも通りだが、ベネットの顔は悲惨な現場を見るような何とも言えない顔になっていた。というのも、声を発した瞬間に建物のガラスに一斉に亀裂が走り、二言目には次々と砕けたのだ。外に出ていた兵士たちやプレイヤーはその場で耳を塞いで顔を歪ませながら動けなくなっていた。

 充分な結果を得られて満足気なハカセはベネットからマイクを奪う取ると、すぐさまスイッチを切った。


「フフフ……やはり生の実験ほどいいデータが取れるねぇ」

「ベネット、次は私のだよ」


 耳栓をしていてよく聞こえないベネットだが、ルーナが目の前の拡声器を持ってきたことで察し、また同じように言った。


「もう一度繰り返す。転送装置の前にいるから、プレイヤー諸君は緊急クエストに参加してほしい。定員は……あと四十人だ」


 今度は拡声器が向いている建物の壁に亀裂が生じた。射線上にいた兵士たちやプレイヤーはあまりの威力にその場に倒れた。


「ハハハ……巨大化させた拡声器でこれ程とはね。威力として申し分ない」


 二人の科学者が満足そうにその場でメモを取り始めていると、建物からナース服を着た一人の女性が飛び出し、倒れているプレイヤーや兵士を見てからベネットたちを見つけ、怒りの形相で走って来た。


 あっ、怒ってる。


 ベネットは耳栓を外すとササッとハカセの後ろに隠れた。チーム『円卓の騎士』も共犯と思われたくない為にハカセとルーナから距離を取った。


「てめぇらか! 馬鹿みたいな音を出したのは!!」

「ん? やあフローレンスじゃないか。こんな――」


 ところで会うなんて奇遇だね。

 そう言おうとしたが、チーム『見境無き治癒師団』のリーダーであるフローレンスはスピーカーを持ち上げるとその場で勢いよく叩きつけた。


「ふんっ!」

「ああっ! なんてことを!?」

「ハハハ……ハカセがそんな顔するなんて――」


 久々に見たよ。

 そう言おうとしたところで、今度は巨大な拡声器が振り下ろされた。


「ふんっ!」

「ああっ! なんてことを!?」


 音響装置が壊されて唖然とする二人にフローレンスは詰め寄ると、今にも殴ろうと固く握り締めた右手を顔の位置まで持ち上げながら言った。


「なぁお前ら、ガラスが割れるような音量を人がいる場所に向けてやるんじゃねぇよ。ガラスが割れて怪我したり、鼓膜が破れて負傷者が出たんだぞ? 医者の仕事を増やすんじゃねぇ。いいか!」

「あっはい」

「あっはい」


 そっちかー、と思いながら二人は返事をして反省した。

 怒りが収まったフローレンスは倒れている兵士やプレイヤーを見た。既に白衣を羽織り腕章を付けたチームメンバーが治療に当たっており、応援に行く必要は無い。

 ビクついてるベネットの方に向き、声を掛けた。


「おい、ベネットだったか、ちょっといいか?」

「……はい」

「緊急クエストやるらしいな。ヒーラーはいるのか?」


 その言葉にベネットはチーム『円卓の騎士』の方を向くと、魔法使いであるマーリンが手を挙げた。


「一応、私が魔法主体でヒーラーを兼任してます」

「……だそうだ」

「なら、私のチーム『見境無き治癒師団』が参加してやる。総勢二十名いるが、参加可能人数から考慮するに五人程度でいいな?」

「うむ」

「わかった。少し待て」


 フローレンスはその場でメニューを開くと、チーム通話で軽く会話して参加者を募り、四人の白衣を着た男性プレイヤーがやって来た。


「こいつら四人と私で参加する」

「わかった」


 ベネットは五人の参加手続きを済ませた。


 残り時間、四分。


 大音量の呼び掛けによってぞろぞろと数十人のプレイヤーが来る中、人型サイズの飛行機が頭上を通過し、誰よりも早くベネットたちの前に来ると変形して元の飛行機っぽい外見をした種族サイボーグの男に戻って着地した。

 ベネットに覚えは無いが、ハカセはすぐに誰か分かって声を掛けた。


「やぁ、エフゼロじゃないか。可変機構の調子はどうだい?」

「はい、絶好調です!」

「それは良かった。たまに私のところに顔を出したまえ。可変機構というのは構造が複雑化する分、耐久性が低い。データの収集を兼ねてメンテナンスする」

「分かりました。それで、緊急クエストに参加したいのですが」

「では、手続きをするといい」


 ベネットがエフゼロのクエスト参加手続きを済ませ、遅れてやって来た銃や兵器が好きなプレイヤー数十人の手続きも済ませると参加可能人数は残り三人となった。

 時間もそろそろ切れそうなところで、三人のプレイヤーが同時に転送装置からやって来た。


「ベネット、枠が空いてるなら今回も手伝ってやる」

「おいベネット、まだ枠はあるか?」

「ベネットさん、私たちもいいですか?」


 一人は近未来的なデザインの赤色のバトルスーツに身を包んだ、目つきの鋭い赤色のショートヘアの若い男だ。

 後の二人は公認アイドルのモチとアズキだった。


「ああ、丁度最後の三人分枠が空いている。よろしく頼む」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「よし、面白くなりそうだ」


 アイドル二人の参加が決定し、集まっているプレイヤーたちが俄かに騒ぎ出した。

 その中に、たまたま第五世界で活動していたチーム『桃園の誓い』の三人組がいた。


「まさかアイドルが参加するなんて……仲間に自慢できるな」

「そうだな。クエスト終わりにスクショ撮ってもいいか聞いてみよう」

「……」

「どうしたサク?」

「お前もあの二人は好きだろ?」

「ああ、まぁ……でも俺としては、ネコ耳のベネットとスクショが撮りたい」

「……サク、アレは一時の夢なんだ。諦めろ」

「ついでに言うと、お前そんなこと頼めないだろ」

「言わないでくれ。悲しくなる」

「……ま、俺もリクもアイドルに話をするなんて出来ねぇし」

「気持ちは分かる」


 三人組が溜息を吐いて勝手に落ち込み始めたが、他のプレイヤーの声に混じっていて当の本人たちは気付かなかった。

 ベネットは赤色のショートヘアの男の声と気配から覚えがあってジッと見つめた。


「…………あっ、ルイスか!」

「お前、俺を忘れて――いや、生身で会うのは初めてか」

「よろしく頼む」

「今度、TAで勝負しろ」

「そこまで言うなら、シミュレーションでやろうか」

「おっ、それならあたしも混ぜろ。ようやくコンバートして新しい機体を完成させたところだ」

「そうか」


 アズキが割り込んで来て、ベネットはようやくアズキと戦えることに闘争を露わにした笑みを浮かべたが、ルイスは意外そうに目を見開いた。


「アイドルがTAに乗るのか?」

「あ? 別にアイドルとか関係ねぇだろ。イレギュラーは強さこそ正義。違うか?」


 傭兵として金次第で何だってやるイレギュラーの生き方を一言で説かれ、ルイスは自分が馬鹿なことを言ったことに気付いて笑った。


「はは、確かにそうだな。いいぜ、三人で勝負しよう」

「待ちたまえ。私もデータ収集と実験の為にその勝負に参加しよう」

「私も参加するよ。新しく作った超兵器が今のTAにどれほど通用するか、試したかったんだ」


 ハカセとルーナも勝負に参加を決めたところで、TAを所持している数人のプレイヤーが俺も俺もと手を挙げた。結局、後日TAシミュレーション大会を開くという話になった。


 参加受付時間が過ぎた。

 参加者全員の視界にクエストを進める為のアイコンが表示され、慌ただしく動いている兵士たちの間を抜けて到着した場所は、建物内にある会議室だった。

 ただ、五十人全員で入るには些か手狭だろうということで、代表を決めてベネット、ハカセ、ルーナの他に各チームリーダーと個人参加のプレイヤーの代表が数人、中に入った。

 部屋の中では中尉の他に歴戦と思わせる兵士たちがあーだーこーだと議論を交わしており、ホワイトボードには周辺地図が貼り付けられ、丸い点が記されていた。

 彼らはプレイヤーである協力者たちの入室に気付くと、サッと波が引くように静かになった。

 最も古参であり、現在の階級では最先任士官である中尉が代表して口を開いた。


「君たちは、少佐の救出を手伝ってくれるのか?」

「ああ、総勢五十人。協力する為に来た」

「それは有難い。俺たちだけでは決死隊になるところだった。寄ってくれ」


 テーブルの傍にプレイヤーたちが来ると、中尉が説明を始めた。


「もう知っているかもしれないが、我らが抵抗軍司令官である少佐が奴らに攫われた。場所は宇宙、どうやって行くかだが……二つ当てがある。一つは、いつ建造されたのか定かでないが、奴らの作ったマスドライバーに乗り込んで打ち上げロケットを奪取して向かう。重要施設である為に敵の防備がかなり厚いのは想定しているが、そこまで辿り着いたことが無い為、戦力は未知数だ。また、ロケットの操縦が可能か、施設を動かすことが出来るかなどの細かい部分が未知数で行き当たりばったりの作戦となる。それに、ロケットは撃ち出すだけで帰還方法が無い片道切符だ。もう一つは、戦争が始まる前に作られていた新型のスペースシャトルを使うというものだ。ここから車で半日の距離に発射場があるのだが、そこは殆ど何も無い平野で戦略的価値が低く、また敵の防備が硬すぎる為に今まで無視していた。定期的に偵察をしてスペースシャトルがあるのは確認されているが、懸念材料としては何年も放置された機体や施設がしっかりと稼働するかどうかだ。専門の管制無しで打ち上げを成功させる必要もある。俺たち抵抗軍としてはどちらに攻めようとも甚大な被害を出すことになる。少佐の救出を諦めることも選択肢に入っていた。だから君たちの意見を聞きたい」


 正直なところどちらでもいい、と思っているベネットは特に頭を働かせず、遥かに頭のいい人間に投げることにした。


「……ハカセ、ルーナ、どう思う?」

「そこで私たちに振るのか」

「専門的知見を求められるのなら分かるけど、こういう重要なことを決めるのは君の役目だよ」

「なら、どちらがより成功率が高いか意見を頼む」

「……それならスペースシャトルだね。敵が作った物を良く調べもせずに使うより、自分たちが作った物を修復するなりして使う方がまだマシだ」

「私も同意見だよ。相手の物を調べて自分たちの技術として取り込むつもりならマスドライバーの方だけど、救出作戦の一環で宇宙に行くのなら元からある技術を使った方がいい」

「ということで、スペースシャトル発射場に向かう」

「分かった。基地の入り口で待機していてくれ。準備が整い次第、トラックで向かう」

「あっ、それならちょっといいかな?」


 ルーナが手を挙げ、全員が振り向く。


「私が船を出すから、トラックは必要無いよ。持って行く装備だけ準備してくれる?」

「船?」


 中尉はルーナの言葉に訝しんだが、ルーナは得意気に続けた。


「そう、船。大きいしトラックよりも速いよ。突入するなら最適の兵器だよ」


 本人の言葉だけでは頷けない中尉は、ベネットの方に向いた。


「……信じていいのか?」

「ああ、私が保証する」

「分かった。そのように準備しよう」





 会議が終わり、ベネットたちは廊下で待機していたプレイヤーたちに内容を話して情報を共有し、基地の入り口に移動した。


「それじゃあ出すから、みんな来ないでね」


 ルーナはプレイヤーから離れて、周囲に何も無いことを確認してからスキルを宣言した。


「【戦車・展開】」


 分類上は戦車となっている陸上戦艦ドレッドノートが出現した。


「おおっ!」

「すげぇ!」

「これが陸上戦艦!」

「生で見ると壮観だなぁ」


 とプレイヤーたちから声が上がり、こういった大きくて凄い兵器が好きな者たちは早速近づいて観察を始めた。

 ルーナが白衣から取り出したリモコンを操作すると、側面の柵が倒れ、甲板の上に折り畳んで収納されていたタラップと呼ばれる架設階段が素早く展開されて地面に着いた。


「はい、みんな乗り込んで。自由に過ごしていいけど、封鎖してる重要区画に無理して入ったりしたら船から叩き落すからね」


 プレイヤーたちが戦艦に乗り込んで少し経つと中尉が動員可能な兵士をおよそ二百人を連れて来た。

 兵士たちは巨大な履帯が付いた陸上戦艦の迫力に圧倒されており、ルーナの前に立った中尉も改めて陸上戦艦を眺めて言った。


「……こんな兵器があるなんてな。速いのか?」

「エンジンをフル稼働すれば百ノットくらいは出るよ。乗り心地も保障する」

「そうか。なら道中はよろしく頼む。総員、乗艦!」


 ぞろぞろと兵士が乗り込み、全員が乗り込んだことを確認したルーナが最後に乗り込むとタラップを収納した。

 それからプレイヤーと兵士たちを艦内の居住区画へ案内し、兵士のリーダーである中尉に言った。


「さて、中尉さん。艦橋に来て頂けるかな?」

「ああ、わかった」


 道案内役の中尉と一緒にルーナは艦橋へ入った。

 ドレッドノートは大半を自動化している為に必要最低限の人員で動かせるようになっていて、操舵、通信、レーダー、火器管制、副長、艦長、客席と座席が少なくスッキリとしている。

 その副長席から、ルーナと知己で重要区画への入室が許されているハカセが立ち上がった。


「前見た時よりも性能が上がっているね。ルーナ」

「でしょ。色々と語り合いたいところだけど、まずは目の前の仕事を始めますか」

「そうだね。中尉、シャトル発射場の場所を教えたまえ」


 艦長席の前にあるテーブルが光ると、第五世界の地図が表示された。中心にはドレッドノートが表示されている。

 中尉は地図を見て現在地や方角を確認してから、基地から西側にある場所を指さした。


「ここだ。ここが目標地点だ」

「座標を記録した。これで出航できるね」


 ルーナは艦長席に座ると、椅子のひじ掛けに取り付けられたコンソールを操作して受話器を手に取って耳に当て、放送を入れた。


「こちら艦長のルーナ、これよりスペースシャトル発射場に向かう。結構加速するから転倒しないように気を付けてね。それでは……陸上戦艦ドレッドノート、発進!」


 陸上戦艦のエンジンが唸りを上げ、船体重量を物ともしない力強さで一気に加速し、すぐに巡航速度である百キロ前後に到達した。




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