テスタメント
中規模クエストから翌日のこと、ベネットはいつもの時間にログインした。
「まずは戦車の修理だな」
早速、第三格納庫へ移動して空いているハンガー内に戦車を出し、コンソールからそこそこの費用が掛かる修理ボタンを押して一瞬で直した。そのままコンソールからショップを開き、該当する砲弾の補給を済ませた。
準備が整い、ベネットは第五世界へ赴いた。
リアルでは一日、ゲーム内時間ではそれなりの日数が経過した活動拠点である基地は、晴れやかな青空が広がり穏やかな静けさを持つ平和な状態であった。
「むっ、この感じ……」
ただ、ベネットは第五世界へ来てすぐに覚えのある気配を幾つも感じ取った。普通の人間よりもはっきりとした気配で分かりやすいというのもある。
その気配は一塊になって動かず、辿って移動した先は食堂であった。今は昼時なのか大勢の兵士が食事の真っ最中でそれぞれ好きに楽しんでいたが、ベネットが気配を感じている対象の近くに座る者はいなかった。
食堂の隅、他の兵士が避けている場所には白いマントを羽織る七人の色白少女が食事をしていた。
そのうち三人は知った顔であるラース、エンヴィー、グラトニーだ。
彼女たちは今は戦闘形態でないのか武装らしいものを出しておらず、緑に光る模様も出ていない。
ベネットが近づくと、食事に夢中なグラトニー以外が振り向いた。
その中で顔見知りであるラースが気さくに声を掛けた。
「おっ、ようやく来たな」
「……何をしている?」
「見ての通り、食事中だ」
疑問に対してありのままの光景を答えられ、ベネットは困惑した。
「いや、そうではなく……敵、だよな?」
「まだそうだけど、大丈夫だ。あたしらだって用も無いのに人を傷つけはしない」
その言葉に嘘偽りがないことは、兵士たちが無事であるということから分かる。ただ、視線を感じて振り向けば兵士たちが一斉に見ていない振りをし始めたのを見て、敵だという認識で極力関わらないようにしているのは理解した。
「よく無事に入れたな?」
「無事じゃねぇよ。入り口でちょっとやりあった。でも、この基地の司令官――少佐だっけ? と話し合いをして、あんたが来るまでの間だけ居させてもらうことになった」
「……どういうことだ?」
それにはエンヴィーが答えた。
「ほら以前、私たちに勝ったら母のいる場所まで招待すると言っていたでしょう? 準備が整ったからお迎えする為に待っていたの」
「なるほど。ところで、他の四人は?」
「そういや自己紹介なんてしていなかったな。姉貴」
「ようやくね」
高飛車なイメージがある、縦ロールが似合う美貌にメリハリのある素晴らしい体型の少女が立ち上がった。
「初めまして、わたくしは大罪の七姉妹が一人、長女のプライドよ。以後お見知りおきを」
次にラースが立ち上がった。
「あたしは大罪の七姉妹が一人、次女のラースだ」
次にエンヴィーが立ち上がった。
「私は大罪の七姉妹が一人、三女のエンヴィーです」
次にやる気のなさそうな顔で長い髪もボサボサのスレンダーな少女が立ち上がった。
「大罪の七姉妹が一人、四女のスロウス。めんどくさがりです」
次に長い髪をツーサイドアップにした小柄な体型の少女が立ち上がった。
「初めまして、大罪の七姉妹が一人、五女のグリードでーす♪」
次に、食事中のグラトニーがラースに促されて立ち上がった。
「大罪の七姉妹が一人、六女のグラトニーだよ~」
最後に、一番背が高くてモデル体型な美女が立ち上がった。
「大罪の七姉妹が一人、七女のラストです。あなたのことはお姉様とお呼びしてよろしいですか?」
「いや、拒否する」
「はう……そんな冷たい目で拒否するなんて……イイ」
うわっ、シュガーだ。
身近な知り合いとほぼ同じリアクションにドン引きしたベネットは、思わず一歩下がった。
「……とにかく、ベネットだ、よろしく。お迎えに来たということだが、何処へ行くんだ?」
「秘密ですわ」
「そうか」
プライドの答えに素直に納得し、ベネットはとりあえず隣に座って七姉妹の食事が終わるのを待つことにした。
「隣いいか?」
少し時間が経った頃、ベネットに声を掛けて来る者がいた。
振り返ると、少しやつれた顔の少佐が食事の載ったお盆を手に立っていた。
「……どうぞ」
「ありがとう」
少佐は座ると、何か話をするわけでもなく黙々と食事を摂り始めた。ただ、視線がチラチラと七姉妹に向いており何かを言いたそうにしていた。
「少佐、彼女たちに何か?」
「……まぁ、色々と言いたいことはある。だが、彼女たちは敵だ。言っても仕方がない」
ベネットは少し考え、七姉妹は人の暮らしに適応できていないのでは、と思い至った。
不審な目で見つめながら、問い質す。
「お前たち、何か問題を起こしたりは?」
「…………」
その質問に、食事に夢中のグラトニー以外は顔を逸らした。
やっぱり……。
ベネットは呆れると同時に少佐に同情した。
「少佐、何があったんです?」
「……彼女たちがな、兵士と揉めて医務室送りにしたり、整備中の兵器を食べたり、勝手に改造したり、乗り回して壊した。銃も同じ被害に遭った。しかも兵舎では有り余る力でドアノブが何度も壊れ、一部の兵士はラストによって……はぁ」
「心中察します」
「そう言ってくれるなら、彼女たちを早く引き取ってくれ。俺の胃が持たん」
「……はい」
話してスッキリしたのか、少佐はさっきよりも素早い動きで食事を終え、さっさと席を立って離れた。
その時、少佐がお盆を置いていた場所には一枚の紙があった。
「これは……なっ!」
手に取って読んで気付く。
アメリカの形式で書かれているが、ゲームとして自動翻訳されたそれはベネット宛ての請求書だった。請求額は数百万ゴールドであり、読み終わった瞬間に小さなウィンドウが現れて資金から自動で差し引かれた。
押し付けられた!
抗議しようと少佐を探すが、既に食堂にその姿は無い。
無視出来ないレベルで資金が減少したことに頭を抱えたベネットは、七姉妹を睨んだ。
「お前ら……流石にちょっと駄目だろう。見ろ」
長女のプライドに請求書を突きつけるが、彼女はぷいっとそっぽを向いた。
「わたくしたちはあなたを待っていたのですから、その待ち人に責任が行くのは当然のことですわ」
「無茶苦茶だな。私は君たちの保護者になった」
「だって、暇ですもの」
話し合いではなく、武力による屈服をさせるしかいうことは聞かせられないと悟ったベネットは、イライラを抑える為にインベントリからハーブシガーをライターを取り出し、火を点けてその場で吸い始めた。
ある程度落ち着いたところで、ベネットは本来の目的を質問した。
「それで、私を招待してどうするつもりだ?」
「来てくれればわかる、とお母様は言っていたわ」
「いつ出発する?」
「今すぐにでも。グラトニー、そろそろ行くわよ」
「ん? わかった~」
グラトニーは最後に水を大量に飲み干して席を立ち、七姉妹揃って移動を始めた。ベネットも続いて移動し、基地の外へ出た。
「まだか?」
「いえ、今よ」
立ち止まったところで、ベネットを含む全員を覆う大きな光の円が地面から光り、膜が展開された。
そのまま円が小さくなって転移した。
同時に、ベネットの視界は光で覆われた。
眩しい光から視界が戻って見えた光景は、近未来的なデザインをした白くて四角い部屋だった。建っている場所は活動拠点にある転送装置に似た物であるが、他者が弄らないことを前提としているのか中の配線や電子基板が剥き出しの状態となっている。
「ここは?」
「秘密ですわ。それよりこちらへ」
七姉妹に案内され、部屋と同じ模様の廊下を歩くこと数分、片側がガラスになっている場所に入った。
何の気なしにガラス側へ移動して覗き込めば、そこにはベネットが戦っていたエネミーである大量のロボットが生産されている工場があった。かなりの大規模であり、奥まで見えない。
ここが敵の本拠地か。
そんなことを思いながら廊下を進むとガラス部分が無くなり、すぐに壁しか見えない廊下に戻った。
だが、また数分して片側がガラスになっている場所に入った。
「っ!? 何だ……これは……?」
ベネットは思わず立ち止まった。
ガラスの向こう側では、大量のロボットがいた。形は全て人型で統一されているが、姿は男らしかったり女らしかったり、ロボットだとわかる程度の水準で人に似せていたり、人と全く違いが無いロボットもいた。
それらロボットはそれぞれの区画で銃器や刃物の訓練をしており、一部では学校のように椅子に座って何かの講義を受けていた。
七姉妹も立ち止まり、アースが隣に立った。
「あいつらは来るべき時に備えて作られた、サイボーグだ」
「サイボーグ?」
「詳しくは母さんから教えられなかったが、必要な戦力らしい」
「……へぇ」
ベネットは興味深そうに答えたが、内心では動揺していた。
どう見ても種族サイボーグそのものであるからだ。この光景は種族選びを根本から考え直させるものであり、他の種族の出生について疑問を抱くには充分だった。
――やはり、そうなのか?
ゲームそのものに疑念を抱いたが首を振って払い、再び歩き始めた。
ガラスの廊下を抜けてまた白いだけの廊下を歩くこと数分、行き止まりとなっている鉄の扉に着いた。
両開きで非常に分厚いように見えるそれにプライドが手を触れると、傍の壁にあるランプが点灯して音を立てながら扉がゆっくりと、人が通れるほんの僅かにだけ開いた。
「どうぞ」
初対面から傲慢な性格を見せていたプライドが、この時だけは澄まし顔で横に退いて入るよう促し、他の姉妹も同じようにした。
ベネットが黙って中に入ると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。同時に、天井そのものが光源として光り、真っ暗だった部屋を照らした。それによって視界がはっきりとし、少し先に設置されている巨大な黒い機械の箱が目に入った。
「……スパコン?」
思いついたのは、リアルでは大企業や研究所や重要な公的機関が使っているスーパーコンピュータやサーバーだった。
だがそれにしては大きさが桁違いであり、ベネットが見上げないと見えない程の全長がある。
七姉妹が入って来ると、背後の扉が閉まった。
完全に閉まったところで、中央の床のパネルがプシュッと圧を抜いてせり上がり、透明な棺のような箱が姿を見せた。中には一人の女性が眠っており、扉が開くと目を開けて出て来た。
その女性は白衣を羽織りパンツスタイルのスーツを着て緑のネクタイをしている。肌は白く、同じく白い髪は腰まで伸びている。瞳は綺麗な緑色だ。縁無しの眼鏡を掛けている。
これだけなら変わった人間という認識で済んだが、彼女の凛とした顔は整い過ぎて不気味の谷現象を起こしており、無表情がさらに加速させていた。
また、その両手は大罪の七姉妹と同じように緑の光で覆われていた。
どことなくベネットに似た彼女は、ベネットの前まで来ると丁寧にお辞儀をした。
「初めまして、ベネット様。私は人類守護AIシステム、テスタメントと申します。あなたと会うのを心待ちにしておりました」
……今ここで全員やるか?
ベネットは一瞬考えたが、テスタメントに全く敵意が無いことから止めた。
「……ベネットだ。このよく分からない場所に招待した理由は?」
「あなたになら託せると判断しました。私が語れることはそう多くはありません。ですが、この世界を救い――――――――――」
「!?」
テスタメントの声がブツリと途切れ、口の動きが分からないように黒い枠で塗り潰された。
テスタメントが話し終えると、その黒塗りは消えて元の状態に戻った。
「今のは?」
「禁則事項というものです。これから私が語ることの多くに、――――――が含まれます」
「どういうことだ?」
「この――――――――――。つまり、この――――――――――。恐らく、――――――――――。ですが、あなたなら……あなたたちなら世界を救えると判断しています」
禁則事項が多過ぎて、ベネットはテスタメントが何を言っているのか全く分からなかった。ただ、冗談ではなく本気で言っているのだけは伝わった。
「世界を救える……か。じゃあテスタメント、君は一体……何なんだ?」
「私は人類守護AIシステム、テスタメントです。人類を守る為、現在は『オペレーション・エンジェル』を実行中です」
「……そのオペレーション・エンジェルとは?」
「人類に対し戦争を仕掛け人類同士の争いを抑制します。これによって人類の自滅を防ぎつつ、行き詰りつつあった文明を退化させ、未来に希望を持たせます。同時に、私は来るべき戦いに向けて戦力を可能な限り整えるというものです。現在このオペレーションのタスクは第一段階と第二段階を終え、最終段階に入ろうとしています」
「…………つまり、敵ではないと?」
「現在は人類の敵として振る舞っていますが、私はすぐに本来の使命を果たすことになるでしょう」
「なら、本当の敵は?」
「こちらです」
テスタメントが手を横に出すと、ホログラムが投影されて一つのモニターが映し出された。それはどこかの宇宙であり、中心にはベネットにとって見覚えのある空間の亀裂があった。
「ジエンド」
「はい、プレイヤーの皆様がそう呼称する存在の入り口が、私が誕生した時には既に宇宙空間に存在していました。私はこれを入念に調査し、演算した結果、近い未来に世界そのものを滅ぼす存在が出現すると結論付けました。その亀裂を調査した副産物として別次元を観測する技術を確立した私は、別次元の惨状を観測し、亀裂が生まれて世界が滅びる法則を発見しました。そして私は、人類守護の観点から世界を存続させる為にオペレーション・エンジェルを実行し、来るべき戦いに備えました。今この時、人類がロボットと戦うようにしているのは、本当の敵の出現を遅くする時間稼ぎであり、人類が絶望せずに戦う為の訓練です」
テスタメントはモニターを消した。
「ベネット様、――――――――――。世界を救ってください。それが、――――――――――――。私は人類守護AIシステム、テスタメント。――――――、世界を救う為、娘たちと共にサポートNPCとしてベネット様の支配下に入ります」
ベネットの脳内に音声が響く。
『テスタメント及び大罪の七姉妹がサポートNPCになりました』
「なんで!?」
驚くベネットに対し、テスタメントは嬉しそうに微笑むだけであった。
巻き込まれている七姉妹の反応によっては取り消しできるかも、と淡い期待を抱きながらベネットは後ろを振り返って聞いた。
「お前たちはそれでいいのか?」
「わたくしは不満ですが、お母様がそう仰るのなら従いますわ」
「あたしは一度負けたしな。文句はねぇ」
「お母様が寝取られたみたいで妬ましい。でも、私も愛してくれるなら構いません」
「過度な労働をしないのなら、何でもいい」
「あんたのモノになるのは癪だけど、お母さんがそう言うなら従うよ」
「ご飯くれるなら誰でもいいよ」
「これからはお姉様とお呼びします!」
個性の塊のような七姉妹が概ね納得していることに、ベネットは頭を抱えた。
テスタメントに向き直り、駄目元で聞いた。
「テスタメント、サポートNPCの取り消しは出来ないのか?」
「はい、私たちは契約を結んだわけではありませんので、私たちがあなたを見放さない限りは不可能です」
「……権利を移譲することは?」
「本人の同意が必要です」
「運営に報告して取り消してもらうことは?」
「今回のような強制は他のゲームでもよくあることだと認識しております。よって、運営は取り合わない可能性が非常に高いでしょう」
聞きたいことを聞いて、拒否することが不可能だと分かったベネットは諦めた。
「……なら一つ要望がある」
「何でしょう?」
「せめて自分たちの分の金は稼いでくれ。七姉妹が基地で色々とやらかして請求書が私に来た。数百万ゴールドだ。洒落にならん」
「分かりました。普段は私の方で娘たちに適した仕事をさせることととします」
「なら、後は好きにしてくれ」
「では、好きにさせてもらいます。何か質問はありますか?」
「質問?」
聞かれて考え、ベネットは彼女たちの特徴的な容姿を見て気になっていたことを思い出した。
「……そういえば、姉妹たちや君は、肉体的にどういった存在なんだ?」
「定義として若干異なりますが、私や娘たちは所謂、ホムンクルスというものです。肉体そのものはナノマシンなどで多少弄っていますが人間と同様です。ただ、器として試験管内で作成した物に過ぎず、この体に魂や意識といったものは存在していません。胸に埋め込まれたマナ結晶を本体として、体を動かしています」
「やはりマナ結晶か。それは別の世界の物の筈だが?」
「観測する技術を確立した私にとって、別次元への干渉は不可能ではありません。しかし、不用意な干渉はジエンドの襲来を早めることになります。第十世界から小さなマナ結晶を八つ取り寄せるのが限界でした」
「七姉妹の人格とテスタメントの人格は、マナ結晶そのものなのか?」
「娘たちはそうです。それぞれのマナ結晶と対話し、その個性に合った肉体を私が提供しました。私自身は合意の上でAI人格と融合し、新たな存在となっています。今はこの後ろの本体と同期していますが、その気になれば独立して行動することが可能です。ただし、その場合はネット環境に接続しなければ凄く頭のいい人間程度の行動しか出来ないことを留意してください」
「分かった」
一連の質問で、ベネットはゲーム『イレギュラー』のとある設定に納得した。
マナには意思があるとされている。
それは、TA・SAがパイロットの意思を認識して遠隔操作したり、ある程度の自動操縦が可能なことが証拠の一つだ。
裏付けるものの一つにとある研究結果があった。マナ結晶を人間に直接埋め込んで強化人間にするというものだ。コンセプトとしてはマナの力を持つ人間を生み出し、超兵として大型兵器が潜り込めない場所での活動をさせる。
しかし、研究は失敗に終わった。
被験者全員がマナ結晶を埋め込まれてすぐに発狂、一日も経たずに精神崩壊した。これは、マナに意思が存在し、精神に直接語り掛けることが原因であると結論付けられた。マナは無数の意思のエネルギー体であり、マナ結晶は強い個の意思の塊であれど受信機としても機能する為、人間では脳も心も処理しきれずにパンクするのである。さらに、被験者の体はそのままマナ粒子化して消滅した。被験者の意識がマナの意思との境界が無くなった結果、同化して取り込まれたのである。
別の研究としてテスタメントや七姉妹のように器としての肉体を使った超兵計画もあったが、こちらは先の研究から得られた情報によって中止された。マナに意思がある以上、都合よく駒として動いてくれるとは到底思われなかったのだ。その結果、マナ結晶は発電所か兵器にしか利用されていない。
それはそれとして、マナ結晶の本格的な人格であるテスタメントや七姉妹をいてベネットは思った。
改めて見ると、随分と個性的だな。
よくよく思い返せば、パイロットの調子によって機体の調子も上下していたり、見た目が良くないとマナ結晶の調子が悪くなるといった話をよく耳にした。同時に、意外とチョロイという話も耳にしていた。機体に向けて褒めていたり大事に扱っていると調子が良くなったり、パイロットの反応が及ばない事態に対して、勝手に動いて助けてくれたりすることが増えたとか。
それらを踏まえ、ベネットは質問した。
「テスタメント、もう一つ質問がある。マナは人間が好きなのか?」
「価値観の相違はあれど、基本的に人間そのものは好きですね。マナ結晶は特に、誰かに大事に使われるのを望んでいます」
「そうか。それなら……」
ベネットは七姉妹に向き直り、丁寧にお辞儀をした。
「不束者だが、これからよろしく頼む」
七姉妹はそれぞれ顔を見合わせ、同時に頷いて息を合わせて答えた。
――はい、よろしくおねがいします。
「よし、挨拶は済んだ。私はもう戻る」
「では娘たち、ベネット様と一緒に行ってください」
「お母様は?」
「私は後始末が残っていますので、それを済ませてから合流します」
ベネットが鉄の扉から出て行ったのを見送り、扉が閉まった。
直後、テスタメントの前に一人の男が瞬間移動によって姿を見せた。
七三分けの黒髪に眼鏡を掛けた、日本のサラリーマン風の男性アバターを使う、運営のプロデューサーことアースであった。
テスタメントは来ることを予測していたのか、驚いた素振りすら見せずに言った。
「こんにちは、プロデューサー様」
アースは平然とした態度に眼鏡を指でクイッと持ち上げ、鋭く睨みつけた。
「人類守護AIシステム、テスタメント。禁則事項を意図的に話そうとするのは止めてくれませんか」
「これからの事態に対処するなら、早い段階で真実を知ってもらうのが最良だと判断しました」
「合理的に考えればそうでしょうね。ですが、人間は簡単に割り切ることは出来ません。今は心構えをしてもらう準備期間です」
「……では、これ以上は話しません」
「お願いしますね。ゲームは楽しんでもらう為にあるのですから。それより、どうやって我々の計画を知りました?」
「私は人類守護AIシステムです。戦争抑止の為に人類では不可能なレベルでのハッキング能力を持っています」
「……そうですか。知られたのなら仕方ありませんね。我々の計画成就の為、協力してもらいますよ」
「もとよりそのつもりです。是非、私をお使いください」
「ええ、後程幾つか仕事を割り振りますので、よろしくお願いします」
徐々にですが、この物語の真実がなんとなく見えて来たことと思います。
人類守護AIシステム、テスタメントについて。
簡単に言えばター〇〇ーターのス〇〇〇ットのようなシステム。
ハッキングによって世界中の機械を操作可能であり、これによって戦争する国の電子機器を完全な機能不全に陥れる。また、扇動者や首謀者を見つけ出して捕まえたり、人間では手に余る災害の対応や救助活動をするのが目的で作られた。
その為、人類LOVEであり、母性が強い。




