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大集会

初めての大規模クエストに向けての集会です。




 大規模クエスト発生から翌日。



 ベネットがログインしてワールドシップのロビーに来ると、そこでは大勢のプレイヤーが忙しなく動いていた。


 アイテムや物を作成する者。


 世界から素材を取って来て渡す者。


 あれやこれやと相談する者。


 声を張り上げてアイテムと装飾品を売り歩く者。


 多様である。


 ベネットは邪魔にならないように動きながらチームルームへ移動した。



 チームルームの会議室では既にメンバー全員が集まっていた。

 ベネットが席に座ると、アルバが口を開いた。


「では、今から会議を始める。議題は一つ、誰がどの地域で戦うかだ。俺たちチーム『円卓』はそれぞれが強い。纏まって戦うより、全員が好きに動く方がいいと考えている。だからみんな好きにしてくれ。最初に俺から言わせてもらうが、俺はハードの地域である火星で戦いたい。意見や問題はあるか?」


 意見や問題を求めたことで、ハカセが真っ先に口を開いた。


「火星は酸素が無い。スキルの【宇宙適応】が付与された装飾品なら私も作れるが、素材は持っているのかね?」

「いや、無い。だが、大規模クエストに備え、他のチームを集めた集会を開くことを呼び掛けた。その集会で役割分担し、必要な分を集める予定だ。ハカセ、他に意見や問題点はないか?」

「そういうことなら、今のところはないね」

「では、俺からは以上だ。ベネット、君はどの地域で戦う?」

「私はTAとSAがある。火星か宇宙のどちらかで戦う」


 その言葉に、ドルークが口を挟んだ。


「ベネットは火星だ。ホストがボスと戦わないのは、主人公不在のようなもので面白くない」


 全員の思いは一致し、うんうんと頷く。

 流石のベネットも満場一致の状態では拒否できず、仕方なくそうすることに決めた。


「……じゃあ、火星で」

「ではオウカ、君はどうする?」

「私は地球で戦おう。宇宙と火星では、火はあまり燃えそうにないからな」

「妥当な判断だな。キャシーはどうする?」

「にゃーは宇宙で戦うにゃー」

「となると、ミグニコも宇宙だな」

「勝手に決めるなよ。まぁ宇宙を飛びたいって思ってたけど」


 普段から二人でじゃれ合っているので、アルバとしても二人一組という判断を下した。文句を言うものの、ミグニコも満更ではなかった。


「ドルークはどうする?」

「オレも火星がいい……と言いたいが、宇宙空間で戦える人間はそう多くないだろう。オレは宇宙で戦う」

「それは助かる。次回はドルークの意思を優先するよ」

「そんな気遣いは不要だ。オレは戦えて、勝てればそれでいい」

「そうか……シュテンはどうする?」

「俺は火星で戦いたい。支援が殆どない、血沸き肉躍る戦場なのだろう?」

「地域の内容から考えればそうなるだろうな。リーベはどうする?」

「化物とは常日頃戦っておりますので、今回は遠慮して、地球で楽をさせていただきますわ」

「わかった。ヘカティアはどうしたい?」


 自分の意見を言う番になって、ヘカティアはどうしようか悩んだ。狙撃は基本的に待ちの姿勢であるが、陣地防衛ではそこそこ程度しか活躍できない。というのも、ある程度の場所を特定された段階で、狙撃の対策をされたり面制圧の攻撃をされるとどうしようもないからだ。

 それを踏まえたうえで、火星で持てる力を出して撃ちまくるか、経験のない宇宙空間で戦うか、地球で気楽にハンティングをするか、悩むに悩んで面倒臭くなって答えた。


「…………地球で」

「……一応聞くが、理由は?」


 面倒臭いから、とは答えるわけにもいかず、ヘカティアは咄嗟に思いついたことを口にした。


「……狙撃だと、手数が足りなくて押し負ける」

「なるほど。確かにそうだな」


 アルバは合理的な意見として納得し、ヘカティアは誰にも気付かれないように胸を撫で下ろした。


「ウルフェン、お前はどうする?」

「そうだな……正直なところ、どこでもいいとは思っている。だが敢えて選択するのなら、一人の戦士として、やはりハードな火星で戦いたい」

「わかった。次はシュガー、君はどこで戦いたい?」

「んー……みんなに一つ聞きたいけど、私の防御、火星にいる?」


「いる」


 と全員が一斉に答えた。


 それぞれ考えていることは違うが、勝手のわからない初めての大規模クエストだからこそ、防衛する者は過剰なくらいに欲しいという思いは一致していた。


「じゃあ、私は火星で防衛に当たるよ」

「頼む。最後にハカセ、あんたはどうしたい?」

「私は火星の活動拠点で後方支援に徹するよ。恐らくだが、兵器の弾や回復アイテムが足りなくなる」

「ならそっち方面のことは任せる」

「いいとも。この話、後の会議でするのだろう?」

「ああ、この会議が終わればすぐにそっちへ移る予定だ」


 アルバは一拍間を置いて言った。


「では、会議はこれで終わりだ。集会で方針を決めて後から少し指示を出すかもしれないから、そのつもりでいてくれ。後、ベネットはホストとして俺に同行すること。以上、解散!」




 会議が終わり、アルバとベネット以外はそれぞれ好きに動き始めた。

 そのベネットは、面倒臭い会議に出ることになって嫌な顔をしたが、ホストだから避けることは出来ないと諦め、大人しくアルバについて行くことにした。



 二人すぐに娯楽エリアの奥にあるライブ会場へ移動した。


 アルバとベネットは関係者入り口から入り、ライブ会場を事前に整備していた、アルバと面識のあるチームの仲間の案内によってステージの上に上がった。

 ステージの上に設置された卓の傍では、マイクのチェックをしているチームリーダーがいた。


 そのプレイヤーは日本人らしい顔つきの黒髪ショートの優男で、仕立ての良い紺色の着物に羽織という格好をしている。

 その羽織の背中には漢字の“盃”の文字がある。


 彼は第九世界でアルバの魔王討伐を初期から支援しているプレイヤーであり、商業を主体とするチーム『盃屋』のリーダーだ。第九世界では既に知らない者はいないほどの大商人として君臨しており、ワールドシップの空き店舗を借りて一号店を最初に開いたプレイヤーでもある。


 今回、大規模クエストの集会を開くということをアルバに知らされ、その準備をお願いされたのだ。


「やあ、サカズキ。準備はどうだ?」

「アルバ様。チーム内での会議は終わったのですか?」

「ああ、すぐに集会を開きたいが、出来るか?」

「問題ありません。事前に言われた通り、チームを大まかに分けておきましたよ」


 サカズキがステージの上から客席を見渡せば、釣られてアルバとベネットもそちらを向いた。


 用途に応じて変形が可能なライブ会場の客席は椅子が消え斜面もなく、スッキリした平面のホールになっている。

 その客席は柵によって三つに分けられているが、足場が見えないほどのチームリーダーたちが集まっており、リーダーたちは気になった者同士で話し合いをしていて、騒がしい。

 さらに、柵の外側の邪魔にならない周辺には、今回の集会を見物しようと大勢のプレイヤーで埋まっていた。


 アルバにとってこの人数は想定外だ。サカズキに大規模クエストを攻略する為の集会を開くことを伝え、攻略に前向きなチームに呼び掛けるように指示を出した。集まってもサカズキと関わりのある十数か数十程度のチームだろうと踏んでいた。

 だが、今目の前に広がっている光景は、ログインしているチームリーダーの大半が集まっているようであった。


 サカズキはアルバから指示を受け、付き合いのあるチームに声を掛けた。その数は数十程であったが、全てのチームが快い返事をした。

 もしかしたら多く集まるかもと、チーム『円卓』が大規模クエストの集会を開くという情報をネット上に流した。

 その情報を見たプレイヤーが、楽しそう、面白そう、トッププレイヤーたちのチームが音頭を取るなら、という思いで情報が次々と拡散され、遂にはほぼ全てのプレイヤーが認知するに至った。


 結果、初めての大規模クエストの攻略の集会には、事情があって参加できないチームや、全く興味を示さなかったチーム以外は参加することとなり、リーダー以外のプレイヤーも会議がどのように進むのか見物するほどの規模なってしまったのだ。


 アルバは苦笑したが、すぐ笑顔で取り繕って言った。


「……ありがとう。助かるよ」

「いえ、魔王討伐の支援で散々稼がせてもらっていますので、これくらいはお安い御用ですよ。それより、そちらの絶世の美女を紹介していただけませんか?」


 ベネットのことを知らない風に聞くが、勿論サカズキは知っている。アルバもそういう対応が商売人のやり方だとわかっているので、そのままベネットを紹介した。


「こちらはベネット。俺のチームの大切なメンバーだ」

「お初お目に掛かります。私は商業系チーム『盃屋』のリーダー、サカズキと申します。アイテム、装備、兵器に素材、どれも良質なものを取り揃えております。アルバ様の仲間の方でしたら、是非とも私の商店をご利用ください。友人価格で、ほんの少し割引いたしますよ」

「ベネットだ。後で一度、店を見たい」

「ええ、是非に」


 社交的な挨拶が終わると、サカズキは慣れた動作でフレンド登録の為のプレイヤーカードを差し出した。ベネットもその動きを見て同じようにプレイヤーカードを取り出し、名刺交換のような動きで交換してフレンド登録した。


「挨拶は済んだな。集会を始めよう」

「では、私は舞台袖の方へ」


 サカズキは一礼すると、ステージの裏側へ移動した。


 アルバは卓の上にあるマイクを取ると、真ん中に立った。


「あー、あー……よし。みんな聞いてくれ!」


 ハウリングしないギリギリの声量で言ったことで、客席にいるリーダーの会話が止まって振り向き、視線はステージに立つアルバに注目された。


「俺はチーム『円卓』のアルバだ。今回、俺の呼び掛けに応じてくれたこと、感謝する。早速だが、初めての大規模クエストを無事に攻略する為、協力してくれ。このライブ会場に入る前にチームの特色によって分けさせてもらったが、改めて説明しよう」


 背後のモニターが点くと、区分けが表示された。

 区分けの三つは攻撃、防御、補給であり、アルバが考えてサカズキが編集したものだ。


「まず、攻撃にいるチームは、腕に自信のある者たちで編成される攻撃部隊だ。防衛戦において、守ってばかりではいずれ崩される。だからこそ攻められる時には攻める姿勢が必要だ。それをやり遂げる中核として動いてほしい。後で各地域別に分かれて攻撃隊を編成する」


 モニターの説明には、正面からぶつかる集団戦法の部隊、単独或いはごく少数で自由に動くエース部隊、高機動を活かして戦場を引っ掻き回す遊撃部隊の三つについて書かれている。


「次に防御、こちらは今回のクエストの主体だ。鉄壁の防御が無くては、攻めに転じることは不可能だ。君たちの活躍が今回の大規模クエストの成否に関わる。最重要であることを意識してほしい」


 表示された説明には、陣地構築、防御体系、防衛施設について書かれているが、大まかにしか書かれていない。後はチームリーダーたちが知恵を出し合って適切な配置や作戦を立てるだろうとの判断だ。


「次に補給だが、俺は補給を下には見ない。人類の歴史において、補給こそが戦いの前段階とその最中において、最重要であることを知っている。無敵の勇者でも、世界最強のスパルタ兵でも、食料も武器も無ければ戦えず、快適な環境で英気を養えなければその力は著しく低下してしまう。補給無くして継続した戦闘は不可能だ」


 表示された説明には、補給部隊、治療部隊、輸送部隊についてのことが書かれている。ただし、こちらはリアルの職業がサラリーマンや医療関係者、運送業者ならば問題なく出来るだろうという判断で殆ど書かれていない。


「説明は以上だ。俺は初めての大規模クエストを何としても達成したい。今回のクエストのホストであり、俺の大事な仲間であるベネットの為にも!」

「っ!」


 ベネットに近づいたアルバが腕を回して抱き寄せ、ベネットは驚いてアルバの方を向いた。

 その動作自体が、遠めに見ていたプレイヤーたちからはときめいているように見え、ざわつきが起きた。

 ベネットにとっては恥ずかしい状態であるが、アルバの抱き寄せた手が僅かに震えているのを感じ取り、同時にこの行為自体がプレイヤーたちのやる気を上げさせる演技であると察し、黙ってされるがままでいることにした。


「それでは、もう一度自分のチームが活躍できそうな区分に移動してくれ」


 サカズキが仲間に指示を出し、資料が配られていく。

 それからチームリーダーたちの幾らかは自分のチームに相応しい方針に移動を始めた。


 アルバがマイクを降ろして声が拾われることがない状態になった所で、ベネットは他のプレイヤーに気付かれないように言った。


「アルバ、緊張しているのか?」


 自分の内心に気付かれたアルバは、周りからバレないようにベネットに顔を向け、笑顔を取り繕って答えた。


「……リアルの俺は普通のサラリーマンだからな。こんな大勢の前で話した経験なんてない。だから、暫くこのままでいてくれないか?」


 緊張を和らげるのに一役買うのならやぶさかではないベネットだが、抱かれるのはちょっと、という思いもあって他の姿勢を思い浮かべた。


 手を握っていたり、腕を組んだり、こちらから抱き着いたり……だが、どれも絵面がよろしくない。

 手を握るのは初々しくて、アバターの凛々しくクールな女性の自分には似合わず、腕を組んだり抱き着いたりは、アルバと淫らな関係のように映ると思った。


 結局、今のアルバに抱き寄せられた状態が無難であると判断した。


「……抱かれる趣味は無いが、仕方ないな」

「すまない。後で何か奢るよ」

「いらん。次回があるのなら一人でやってくれ」

「はは、努力するよ」


 リーダーたちの動きが無くなった所で、アルバはマイクを持ち上げて言った。


「それぞれの戦い方を決めてくれたみたいだな。続いて、戦う地域を分ける。柵の前側を火星、真ん中は宇宙、後ろ側は地球だ。因みにだが、チーム『円卓』のメンバーはそれぞれバランスよく分散して戦うことが決まっている。火星には俺、ベネット、シュテン、ウルフェン、シュガーの五人が。宇宙にはキャシー、ミグニコ、ドルークの三人が。地球にはオウカ、リーベ、ヘカティアの三人がいる。では、分かれてくれ」


 アルバが言い終わると、紐を持ったサカズキの仲間が柵の中を通り抜けて新たな区分を作り、リーダーたちは自分のチームの実力を加味して移動を始めた。


 結果、それぞれの地域でバランスよく集まった。


「……移動は終わったみたいだな。各自、準備で何をするか、クエストが始まったらどのように動くのか、地域別で集まって話し合いをしてくれ。俺たちチーム『円卓』はそれぞれ好きに動く予定だが、何か要望があれば聞こう」


 盃屋の仲間が動き、今度は柵の一部を撤去して横の移動が可能になった。それによって攻撃、防御、補給で別れていたチームが合流し、積極的なチームリーダーから意見を出して準備の間に何をするか、戦闘ではどのポジションに着くかを決めていった。


 数分経っても話し合いが止まることはない。

 その間にアルバも場の雰囲気に慣れたのか、ベネットを抱くのを止めた。


「ありがとうベネット。もう大丈夫だ」

「そうか。じゃあ、私はこれで」

「いやまだだよ。最後にホストである君から一言ないと、盛り上がらないだろう?」

「……わかった」


 ベネットは嫌そうな顔をしたが、決起の掛け声の重要性は理解しているつもりだ。



 話し合いもある程度進み、火星組と宇宙組はそれぞれやることが決まって静かになった。この二つの地域で戦うチームはある程度の実力があるので、チーム『円卓』に何かを望んだりすることもない。

 一方、地球で戦うことを決めたチームには初心者プレイヤーが入っていることが多く、あるチームリーダーが代表してアルバの所にやって来た。


「あのー、ちょっといいすか?」


 声を掛けて来たのは種族ヒューマンの男だ。ブロンドの髪に青い瞳、少し子供っぽさが残る顔つきの青年で、冒険者風の格好をしている。


 アルバは彼がまだ始めたての初心者だろうと見当をつけた。そういう格好が趣味の者もいるので、下に見たりせずに話しを聞くことにした。


「何かな?」

「俺のチーム……まぁ、俺も含めてなんすけど、弱小チームやゲームを始めて間もない初心者が、大規模クエストに参加してもいいんすかね? なんか強そうな人たちに、初心者は邪魔だからクエストに参加するな、って言われたんすけど」


 そういう質問が来ることを、アルバは当然予想していた。

 どんなゲームでも効率や強さを求める層は一定以上存在する。アルバもそうだ。ただ、そういう人間の中には初心者や楽しむことが第一で、弱かったり非効率的なプレイをする人間を貶めたり差別的な目で見たりしている者もいる。

 そうした人間たちは排他的であり、今目の前にいるプレイヤーに心無い発言をしたのだろうと、アルバは察した。


 自分もそうなる可能性があることを常に意識しているアルバは、襟を正すつもりでしっかりと彼の顔を見つめて真摯に答えた。


「参加していい。俺が認める。俺が保証する。ベネット、君も同じ思いだろう?」

「ああ。そもそも、今回の大規模クエストの参加人数は無制限だ。チームを厳選する意味がない」

「だそうだ。必要なら、俺たちが話をつけようか?」

「あっ、いや、いいっす!」


 アルバの内から出た威圧感に、明確な怒りを感じ取った青年は慌てて手を振り断った。


 でも、と言葉を続けた。


「……俺、あんなこと言われてちょっと悲しくなったと同時に、ムカついたんすよ。見返してやりたいって。だから……不躾なお願いかもしれないんすけど、俺たち初心者に、戦い方を教えてくれませんか!」


 勢いよく頭を下げた彼を見て、アルバはウルフェンが運営と一緒になって初心者の為の教導イベントを企画しているのを思い出した。

 今回の大規模クエストはそれを前倒しでやるにはうってつけであり、純粋にゲームを楽しんでいる彼らを強くし、貶めた奴らが驚く顔は面白そうだと思った。


 それに、出会った直後から、アルバは彼のことが何となく気に入っていた。


「君、名前は?」

「俺はアーサーと言います。チーム『円卓の騎士』のリーダーです」

「……アーサー王か」

「はい」


 ファンタジーが好きなら誰もが一度は調べたことのある物語。アルバもチームの名前にしようとしたくらいには好きだ。

 それをアバターの名前として使い、チーム名までしてしまう大胆さに、アルバは益々気に入った。


「いいね。でもその名前は凄く重い。名に恥じない実力が無ければ、いい笑いものだ。それはわかっているんだね?」

「覚悟の上です。俺も、俺のリアルのフレンドたちも、このゲームをやる時に一緒に強くなろうって誓い合ったんすよ。なんつーか、運命的な感じがしたんすよ」

「……」


 まるで何かに駆り立てられているかのようなアーサーに、アルバ自身も思うところがあった。

 ただ、それは気にしても仕方がなく、アーサーを育てることがその何かに繋がると確信を持てた。


「よし。なら、俺と俺の仲間が君たちを強くしよう」

「いいんすか!?」

「勿論だ。これからよろしく、アーサー」


 アルバは握手の代わりにプレイヤーカードを差し出し、アーサーもそれに倣ってプレイヤーカードを差し出した。


「よろしくお願いします。アルバさん」


 交換を済ませて二人がフレンドとなる頃には、地球組の話し合いも終わり掛けていた。


「さ、そろそろ戻るといい」

「そうすね。後で仲間を紹介します」


 アーサーが元の場所に戻ると、丁度話し合いは終わったところだった。


 その中に一人、アルバと話していたのを見ていた自分勝手なチームリーダーがアーサーに詰め寄ろうとしたが、特定の人へ向けられたアルバの凄まじい威圧感に背筋が凍り、蛇に睨まれた蛙のように足が止まった。


 ベネットも行動に移そうかと思ったが、傍にいるアルバが先んじて威嚇しているのを感じ、手を出す必要はないと判断した。


 また、この場にいるのがチームを率いるリーダーたちだけあり、アルバの威圧感に気付く者は何人もいた。反応は様々で、その強さに驚いたり、びびったり、感心したり、笑ったり、気になって振り向いたりである。


 数秒睨んだアルバが威圧感を消すと、そのチームリーダーは小さく舌打ちしてアーサーから離れた。

 それを見届けたアルバは言った。


「話し合いは終わったみたいだな。最後にベネットから一言ある」


 マイクを渡されてステージの前に立たされたベネットは、気の利いた言葉が思い浮かばず、ありきたりなことを言うことに決めた。


「……今回の大規模クエスト、みんなで楽しもう! 以上だ」


 本質的だが鼓舞するような言葉でないことに、会場は声の一つも上がらなかった。

 ただ、この場にいるプレイヤーたちにとってその本質こそが求めていることであり、大規模クエストに向けての準備に前向きになるには充分な掛け声であった。


 ベネットも手応えは感じたが、こういった苦手分野をやらせたアルバに八つ当たりするようにマイクを投げて返し、さっさと舞台袖に移動した。

 マイクを再び持ったアルバは、この会議を終わらせるべく言った。


「これにて、初めての大規模クエストの集会を終了とする。各々、成すべきことを成し、我々全員で勝利をこの手に! 解散!」



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