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運営3



 ベネットがログアウトした後のこと。



 ――運営専用の会議室にて。



 運営ナンバーツーのマーズは円卓のテーブルに頬杖をつき、もう片方の手は指でトントントントントントントントン叩いて、イラつきを向かいに座る二人にわかるように示していた。


「……言いたいこと、わかるよなぁ?」

「……はい」

「ごめんなさい」


 委縮しているのは、プルートとヴィーナスだ。

 ベネットが冬将軍を倒して新たなユニーク装備を手に入れたことで、緊急の呼び出しを食らったのだ。


「第一回イベント終了後の会議の時、言ったよなぁ? 未入手のユニーク装備は下方修正の方向で調整するって。なぁヴィーナス?」

「……ごめんなさい」


 俯くヴィーナスに、マーズは『終雪』のデータを表示させて言った。


「『終雪』の【三ノ秘:雪の果て】って、どう考えてもやり過ぎだろう。どこをどう修正したんだ?」

「あ、その……えっと……効果範囲です。はい」


 バンッ、とテーブルが叩かれ音が響く。

 二人はびくりと体を跳ねさせた。


「調整する所が違うだろうが! 広範囲即死って何なんだよ、ぶっ飛びすぎだろ!」

「……はい」


 本当は半径三百メートルに設定していたが、言い出せる空気ではない。

 ヴィーナスを庇うように、プルートは恐る恐る手を挙げて言った。


「あのー、一回限定の初見殺しのスキルだし、アイテムとかでしっかりと対策できるから、そんなにバランス崩壊って訳じゃないと思うよ。それに、大体のボスエネミーは即死耐性持ちだし」


 プルートの言いたいことも理解できるマーズは、溜息を吐いた。


「……わかってる。時間が経てば厄介な即死対策は進む。一時的に即死無効にするアイテムは、今は生産職を専門にしてるプレイヤーが趣味で作ってる程度だが、いずれはそれなりのプレイヤーが手にするだろう。だ・が、しかし!」


 マーズがプルートを睨みつけた。

 矛先が自分に向いたことで「あっ」と声が漏れた。


「なぁプルート、お前サービス開始前に自信を持って言ってたよなぁ? 冬将軍は一年経たないと、ソロ攻略できるプレイヤーは現れないって」

「……はい」

「それがどうだ? 僅か一ヶ月程度でベネットにソロ攻略されてる。オルオンの世界は数字が大きくなるほど難易度が高くなる。特に第七世界以降は露骨に難易度を上げて、ボスエリアは実質的にソロ攻略出来ないようにしていた。なのに攻略された。理由は説明できるか?」

「あー……その……相性、ですかね?」

「そうだな。相性だな…………『それでも攻略できないくらいに難易度高くしておいた』って言ったの、お前だろうが!」


 怒られたにもかかわらず、プルートはさっきの委縮した態度とは打って変わり、嬉しそうに笑った。


「あはは……ちょっと天才たちの実力、舐めてました」


 プルートはこういう奴だとわかっているマーズは、いつまでも怒り続けるのは疲れるので止めた。


「……そうかよ。だが、今いるボスエネミーの強さを調整することなんてできない。あいつらを基準にしたら、それ以下が全くクリアできなくなっちまうからな。二人とも、強い奴の過剰なインフレを抑える為に、何か対策は無いか?」


 意見を求められた二人は思考を巡らした。ヴィーナスは顎に手を当て、プルートはビーチ空間で青くなっている空を仰いだ。


 先に思いついたのはヴィーナスだった。


「こんなのはどうでしょう。所持者だけに知らせる方向で、ユニーク装備の一律弱体化」

「運営として一番手っ取り早い方法だな。だが却下だ。人の口に戸は立てられないし、一度不信に思われたらその信頼を取り戻すのは難しい」


 それを聞いていたプルートは一つ思いつき、言った。


「ユニーク装備の個数制限でもしたらどうかな。武器は二つ、防具は二セット、装飾品は二つ、ユニーク兵器は二つって感じで」


 考えてもいなかった至極単純なことに、マーズは目から鱗が落ちたようだった。


「……あーくそ、なんで気付かなかったんだ。そうだよ、所持できるユニーク装備を制限すればいいだけだったんだ。そしたら装備での上限がはっきりわかる。まだ使われていない競売システムも活性化する筈……よし、俺は今から調整に入る。お前ら、いい意見で助かった。ありがとう。そして今回の件、反省しろよ。じゃあな!」


 マーズが興奮気味に会議室から消えて残された二人は、顔を見合わせた。


「私、もう一度ユニーク装備の見直しするよ」

「私も、ウラヌスと一緒にもう一度新しい世界のダンジョンやボスエリアの調整をするよ」


 お互いに頷き、二人は会議室をあとにした。





 数日後、大型アップデート情報に一つの項目が追加された。



   ・ユニーク装備・ユニーク兵器の所持制限を追加します



  詳細



  ユニーク装備の所持制限について


   ・プレイヤー間のバランスと過剰なインフレを考慮した結果、大型アップデート以降はユニーク装備の所持数を制限します。具体的には武器を四つ、防具を二セット分の六つ、装飾品を三つ、ユニーク兵器を二つとします。

    新たにユニーク装備及びユニーク兵器を手に入れて所持制限を超えた場合、入れ替え期間を一週間設けます。いらないユニーク装備及びユニーク兵器が決まったら、競売に最低落札価格を設定したうえで出品してください。もし入れ替え期間を過ぎた場合は、運営側で定めた最低落札価格で競売に自動出品されます。競売で誰も入札者がいなかった場合は運営側で定めた最低落札価格で買い取りとなり、次回の大型アップデートでどこかに再設置されます。



運営だって見落としやミスはするさ。人間だもの……。

あと、上司が担当分野以外の全部を把握してるなんて無いからね。シカタナイネ。

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