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初めてのクエスト2

行間を修正。2023/04/30



 合流した兵士たちは健闘を称え合い、トラックから物資が降ろされ暫しの休憩に入った。


 レーションを食べ、武器の整備をし、弾薬の補充を行い、今後の行動の為に士官クラスの兵士が地図を広げて話し合いをしていた。


 ベネットが輪の中に入らずに休憩をしていると、また大尉が近づいてきた。


「ここにいたか。お前の働きを見込んで一つ頼みたいことがある。ここから東に行った場所に、以前戦って逃げた時に捨て置いた輸送トラックがある。強力な武器と弾薬が満載だから回収したい。俺たちはその間に西の仲間の救援へ向かう。やってくれないか?」


 新たなクエストが発生した。


 クエスト【待ちわびた救援4】

 達成条件:輸送トラックを回収し、西で合流する。

 制限時間:20分

 報酬:5,000G



 YESを押す。


「じゃあ頼んだぞ」


 肩をポンポンと叩かれ、大尉は戻った。


「……行くか」


 小走りで東へ向かうと、さっきの戦闘と違ってとても静かだった。


「不気味だな。こういう時は伏兵がいる筈」


 路地裏や廃墟となっているビルの中などを中心に警戒しながら進むと、激しい戦闘の跡がある場所に着いた。

 装甲車や車両が銃弾や爆発によって壊れていて、その中にほぼ無傷のトラックが停まっていた。


「…………やはりいないな」


 トラックに乗り込もうとすると、奥にある車両の下からブーツが少しだけ出ているのが見えた。しゃがんで確認すれば兵士だった。


 再度周辺を確認する。


「十中八九、罠だろうなぁ。まぁ、どうせゲームだし……」


 罠を踏み抜いていくことを決意し、兵士のいる場所まで行ってしゃがんだ。兵士はかなり若く、ベネットと目が合うと一瞬怯え、人間だと認識するとほっと息を撫で下ろした。


「……あぁ、脅かさないでください」

「何があった?」

「都市の北部で戦ってたんですけど、壊滅して逃げて来たんです。でも、ごつい奴に追われて今まで隠れてました」

 あっ、これ出てくる奴だとベネットは察した。

「無事なトラックがあるから、それに乗って戻ろう」

「わかりました」


 男が壊れた車両から這い出てトラックに向かって走り出す。それとほぼ同時くらいにビルの高い位置から鉄の塊が落下しドスンと大きな音を立てた。


 全長五メートルほどの巨体で、大きな両腕の手はハンマーとなっていて、脚は短く腕で体を支えて前傾姿勢を取っていた。見た目は完全に機械化したゴリラで、弱点として関節部や頭部の二つの目が赤く光っていた。名前はアイアンナックル。 


 アサルトライフルを構えると、背後からもドスンと音が聞こえて振り返る。二体目のアイアンナックルがいた。


「挟撃か」

「あ、ああっ……!」


 兵士が後ろに下がり、尻餅をつく。


「何をしている、狭い路地へ隠れろ!」


 関節部を狙ってアサルトライフルを撃ち始める。大きな音と銃撃によってエネミーの注意はベネットに向いた。兵士は指示された通り慌てて路地裏へ避難した。

 集中攻撃したことで関節部がダメージエフェクトに染まり、接近される前にアイアンナックルの片腕が動かなくなった。HPバーが一気に半分まで減って黄色に変わる。

 マガジンを交換しながら振り返るともう一体が近づいて来ていた。走って逃げても追いつかれるスピードだ。


 ベネットは目を狙って撃ちつつギリギリまで引き寄せ、腕が持ち上げられて振るわれるタイミングを見切って懐へ飛び込み、素早く刀に持ち変えて肩の付け根に突き刺し、腕の間を抜けた。

 再びアサルトライフルを出してマガジンを交換しながら離れて振り返ると、アイアンナックルは刀のせいで片腕を上手く動かせず、二体とも走って逃げられるだけの損傷を与えられた。

 ここまでやれば逃げる必要も感じず、ベネットは落ち着いて弱点の赤く光る関節部を攻撃した。

 両腕が動かせなくなると丁度HPバーが無くなって消滅した。肩に刺さっていた刀が音を立てて地面に落ちた。


 アサルトライフルを消してから刀を手に取り、刃の状態を見る。


「……流石はゲーム。機械に刺したのに刃毀れも歪みも無し」


 軽く振るい、誰も見ていない中で気取って格好よく鞘に仕舞った。

 戦いが終わったことでさっきの兵士が路地裏から出てきた。


「凄い。一人で倒すなんて……」

「それが何か?」

「いや、えっと……とにかく、トラックに乗りますね」


 二人で乗り込み、ベネットが運転して邪魔な車両の間を抜けて西へ向かった。西の救援は既に終わっており、合流した部隊が健闘を称え合っていた。


 トラックを停めて降りると、大尉が機嫌よく小走りに近づいてきた。


「よく戻ってくれた。こっちは被害も無く久々の快勝だった」

「そうですか。こっちは一人拾ってきました」


 兵士が前に出て、敬礼した。


「大尉、ただいま戻りました」

「よく生きて帰ってくれた。物資もちゃんとある。休憩してくれ」

「はい。失礼します」


 兵士が離れていくと、脳内に音声が響いた。


『クエストを達成しました』


「度々申し訳ないが、また頼まれてくれないか? 休憩をした後、すぐに部隊を北へ動かして敵を叩く。お前の実力を信頼して、遊撃手として攪乱してほしい」


 新たなクエストが発生し、ウィンドウが表示された。


 クエスト【待ちわびた救援5】

 達成条件:北の主力を殲滅する。

 制限時間:30分

 報酬:5,000G


 以下の条件を達成しましたので、エクストラクエスト【待ちわびた英雄】が発生しました。


 1.一人でクエストを進める。


 2.一度も攻撃を食らわずに1から4までのクエストをクリアする。


 3.クエスト中、一度も魔法を使用しない。


 4.1から4のクエストを一定時間以内にクリアする。


 5.クエスト4の兵士を怪我無く部隊へ連れ戻す。


 どちらかのルートを選択してください。

 


「まさかのエクストラ……そりゃ当然エクストラでしょ」


 エクストラルートを選ぶと、さっきの若い兵士が戻って来た。


「大尉、一つ報告を忘れていました。北エリアの東側にあるビルの一つに、妙な穴を発見しました」

「妙な穴? どんなだ?」

「地下へ通じる貨物エレベーターのようでした」

「ふむ……テスタメントの反乱で工業地帯が占領された後、都市の地下で反撃の為の武器や兵器を開発していたと聞く。それかもしれないな」

「ですが、今あそこはロボットたちの多くが徘徊していて近づけません」


 大尉がベネットの方に向く。


「君に調査を頼みたい。今すぐ向かって確かめて来てくれ。そのあと、さっき話した通り敵の攪乱を頼む」

「では、行って来ます」


 小走りで北東へ向かって進む。聞いた話通り、ビルの間の路地裏にはスティックソルジャーが何体も巡回していた。機械的に警戒していて、隙が無い。


「……これはバレるな。まぁ、やるだけやるか」


 タイミングを図って後ろを向いたスティックソルジャーの首を斬り落とし、プレイヤースキルとして培った無音の歩行術で次を始末する。

 だが、この時点で少し離れた位置にいるスティックソルジャーが振り返って目が合った。

 武器を構えられるよりも早くアサルトライフルを取り出して片手で撃つ。至近距離でもなければ咄嗟に片手で撃って当たるものでは無いが、弾道予測線のお陰で着弾点が目で見て分かり、当てることができた。

 ベネットは来た道へさっさと逃げ出す。騒ぎを聞きつけた敵がすぐに集まってくることがわかり切っているからだ。

 背後から弾道予測線が照射され、こちらに狙いをつけられる直前で角を曲がる。

 そのまま走って見失わせるように回り込む。


「……女の体って、凄く走り辛いな!」


 ごく短い距離や小走りでなら特段気にはならなかったが、本格的に走ることで、揺れる大きな胸と重心や骨格の違いがより明確に感じてしまう。そのせいで思うように速く走れていない。


「失敗したかな……」


 思わず弱音を口にしてしまうが、首を横に振る。


「いいやゲームなんだ、欲望や願望に忠実であってこそだ。これでいい」


 次の角を曲がる。

 ベネットを単純に追っているお陰で敵はおらず、そのまま走り抜けて穴を探すと見つかった。

 ビルとビルの間の細い道だが、何かしらの兵器が通れる道幅で、ビルの壁にぽっかりと斜めの穴が開いていた。

 奥は真っ暗だが、真ん中にはレールが伸びていて隅には細い階段があった。壁には非常用のボックスがあり、中に懐中電灯が数本入っていた。

 見つかって撃たれるのも嫌なベネットはさっさと懐中電灯を手にして降りていく。かなり長い階段を降りてふと振り返れば、入り口からの光がかなり小さくなっていて、懐中電灯のみが頼りの暗闇に包まれていた。

 今更戻るのも面倒だと感じて階段を降り続け、ようやく貨物用の大型エレベーターと奥へ続く通路が見えた。


 通路の先は広い空間になっているようで、懐中電灯程度の光では先まで照らすことは出来ない。

 こういう施設は自動で照明が点くか、非常時を想定して扉の近くに手動のスイッチがあるものだ。

 ベネットが入ってすぐの壁を探索すると壁に設置されたボックスを発見し、開けると中には大きなレバーが一つあって躊躇なく操作した。

 すると高い天井に設置された照明が点き、部屋の全貌を見せてくれた。積まれた鉄の部品、沢山の工作機械、大きなクレーン、鉄や砲弾が置かれている。まさに兵器工場だった。


 道のように開けた場所を通って中央まで来たベネットは、真ん中にある鉄の台座に佇む物を見て目を輝かせた。


「戦車キタアァーー!」


 思わず両腕を上げて万歳した。


 ただ、落ち着いた低い女性の声で叫んだせいか、無理してテンションを上げたような感じとなり、ベネットは羞恥心を覚えて顔を赤くした。


 多くのVRゲームでは感情がしっかりと顔に出る仕様が採用されている。オールワールド・オンラインも同じシステムを採用しており、顔が赤くなったり青くなったり、涙が流れたりする。


「……一人で良かった。こんなところ誰かに見られたらますます恥ずかしくなる」


 戦車に近づくと、ふとベネットは気付いた。


「思ったより小さいな」


 コロニー『ワールドシップ』の兵器販売店で見た戦車とそう変わらない大きさだ。

 ただ、見た目はデフォルメされた可愛げのある架空戦車だ。大きな履帯に丸みを帯びた車体。ずんぐりとした砲塔があり、短い砲身の主砲はやたらでかい。砲塔上部には装甲化されたバルカン砲が一門付いている。


「どうやって入るんだこれ?」


 ぱっと見、キューポラやハッチが無く入れる場所が見当たらない。

 車体に触れると、光の粒子となって体に吸い込まれた。

 脳内に音声が響く。


『ユニーク兵器を入手しました』

『アクティブスキル【戦車展開】を取得しました』

『アクティブスキル【戦車収納】を取得しました』



「ふむ?」


 ステータスを確認する前にウィンドウが出現した。


 ユニークシリーズ

 ダンジョン、ボスエリア、特殊クエストを初回かつソロでクリアすることで入手できる。また、隠された宝箱からも入手できる。ゲーム内で一つきりの物で、譲渡不可であり破壊不可。ゲーム内通貨ゴールドによる競売にかけることができる。種族や性別によってデザインが異なる。アップデートにより随時増える予定。


 ユニーク兵器について

 ユニーク兵器にはHPが存在する。HPが無くなると完全に壊れ、自動でインベントリに収納されて修復される。ユニーク兵器は大きさが決まっている為、アバターの身長や体格、特徴によって満足に使用出来ない場合がある。譲渡不可だが、競売にかけることができる。アップデートにより随時増える予定。



「ユニークシリーズ……是非とも集めたいな」


 スキルを確認する。


 アクティブスキル【戦車展開】

 一日一回限定。発動することで戦車を目の前に出す。入りきらない狭い場所や何かを巻き込む状況では要請出来ない。戦車は一人一両まで所有可能であり、別の戦車を買うにはマイルームの倉庫に預ける必要がある。弾薬費は自費。


 アクティブスキル【戦車収納】

 発動することで所有している戦車をインベントリに仕舞う。完全に破壊されてもインベントリ内で修復される。


 今度はアイテムから戦車を確認する。


 ユニーク兵器:戦車『E-001』

 【主砲・HE弾:10発】

 【バルカン砲:10,000発】



「うーん、相変わらずのマスクデータ……【戦車展開】」


 イメージしながら声に出せば、目の前にさっきの戦車が出現した。手に触れると砲塔が炊飯器のようにぱかりと開いた。


「……そう開くのかぁ」


 あまりの非常識さに呆れつつ車体に乗って中を確認する。

 砲塔の中は主砲とバルカン砲の中身がみっちり詰まっている。しかも装甲がかなり分厚い。車体の中身は、砲塔に入りきらない部分の収納スペースと弾薬庫があり、座り心地の良さそうなシートがあるだけだった。


 中に入って座る。


「おっ、いいシートだな」


 シートベルトもあるので装着してから中を見渡す。

 シートのひじ掛けの握りやすい位置にはボタンとホイールが付いた操縦桿が二つあり、握ると手にフィットする形をしている。

 左右の壁には『暗視装置』と書かれたボタンと『システム起動』というボタン、あとは『マイクON/OFF』と書かれたスイッチと『砲塔開閉』と書かれたレバーがあった。足元にはスリッパのようなオルガン式ペダルが二つある。

 足を入れて動かすと、踏むだけでなく持ち上げることもできた。


「なるほど。ペダルは履帯の動き、操縦桿は主砲とバルカンの操作か」


 他の戦車ゲームの経験から直感的に理解し、開閉レバーを操作して砲塔を閉じると自動で内部の照明が点いた。

 システム起動ボタンを押すとエンジンが掛かり、ゲームらしく全周モニターが展開されて外の様子がハッキリとわかった。

 同時にバックミラー、地図、戦車の各種情報と二つの照準が出現し、操縦桿を動かせば照準が動いて砲塔やバルカン砲が旋回する音が聞こえた。


「……いいねぇ」


 ベネットは過去にやっていた戦車ゲームを思い出してついニヤけてしまう。

 操縦桿のボタンを押して試し撃ちしてみたかったが、弾数に制限がある以上無暗には撃たない。

 ペダルを踏みこむ。

 左右のペダルが履帯と連動しており、両足で踏み込むことでまっすぐ進んだ。そのまま貨物エレベーターに乗り込み、戦車から降りてエレベーターを操作し、上昇を始めてから戦車に戻って暫し待機した。


 徒歩よりも随分早く地上に戻り、エレベーターから降りて外に出るとスティックソルジャーの集団が待ち構えていた。早速撃たれるが、軽機関銃程度では戦車にダメージなど入らないので落ち着いて照準を合わせ、右手の操縦桿のボタンを押した。

 まるで咆哮のようなけたたましい音を出しつつ凄まじい連射力で銃弾が放出され、薙ぎ払うように動かすだけでスティックソルジャーがダメージエフェクトを撒き散らしながら次々と砕けて消滅していった。

 たった数秒撃っただけで五百発も消費していた。


「ハハ、これは酷い……っと、クエストを進めないと」


 地図を見ながら救援へ向かう。


 この戦車の加速は非常によく、最高速も80㎞でている。旋回性能も良好でビルの角を楽々と曲がれた。


 すぐに北のエリアの側面に到着し、部隊と戦っているエネミーを視認した。今までのエネミーが数十に加え、銃を装備したガンドローンが何機も飛んでいる。

 さらに全長五メートルほどの本格的な人型ロボがビルの間の空中をブースターを吹かして高速で通り過ぎ、また戻って来た。

 両手に銃を持ち、背中に大きなランチャーを背負っている。銃で撃たれているが、弾丸はバリアによって防がれておりダメージを与えられていない。名前をグラディウス。


 ボスだと思われるグラディウスをベネットは一旦無視し、まずは邪魔になりそうな雑魚をバルカンで強襲する。スティックソルジャーとオストリッチ、ガンドローンは一瞬にして倒し、硬そうなアイアンナックルですら弱点に当てずとも、三秒も掛からずに倒すことができた。


「そうだ、主砲も試してみないとな」


 残っているアイアンナックルに照準を合わせて発射すると、車内にまで響くほどの爆音が発生し、火と煙が一瞬視界を覆った。煙が晴れるとアイアンナックルがいつの間にか消滅していた。


「いい威力だ!」


 掃討を続けていると横から爆発音と強い衝撃が起こり、被弾を伝える警告音を響かせながら戦車が一瞬傾いた。モニターに表示されている戦車のHPバーが少し減少した。

 モニターを見渡すとグラディウスがランチャーでこちらに狙いを定めていた。

 ベネットはペダルを持ち上げて戦車をジグザグに急速後退しつつ主砲とバルカンの照準を合わせる。グラディウスのランチャーが撃たれ、手前の道に穴が開いた。


 バルカンをグラディウスに向けて撃ち始めるとバリアによって全て弾かれた。

 だが、五百発も撃ったところでバリアが解けて数十発当たりつつ回避行動を取り始めた。

 常に飛んでおり、動きも速く照準が追い付かない。

 こういう高速で動くロボットと他のVRゲームで戦った経験のあるベネットは至って冷静に意識を集中し、動きの先読みを試みる。


「――そこっ!」


 バルカンで動きを誘導し、予め照準を定めた場所に主砲を撃った。

 ベネットの誘導に釣られたグラディウスは直撃し、大きな爆発を起こした。絶大な威力の主砲が直撃したことでグラディウスのHPバーが一気に無くなって消滅した。



 最後に残った雑魚を掃討すると、部隊が今までにない大きな鬨の声を上げた。

 脳内に音声が響く。


『エクストラクエスト【待ちわびた英雄】をクリアしました』


「……ふう」


 久々の集中によって精神的に疲れたベネットはシートに体を預けたが、最後に大尉と話す必要があると思って砲塔を開けて戦車から降りた。

 すると大尉が駆け寄ってきた。


「やったな」


 手を挙げたので、同じように手を挙げてハイタッチを決める。


「一時的にだが都市を奪還できた。お前は俺たちの英雄だ。希望を見せてくれた」

「これからどうするんです?」

「さっきの戦いで相当やられたからな。都市の調査を進めつつ戦力を整える。時が来たらまた頼むことになる。それまでは好きに過ごしてくれ」

「そうします」

「ああそれと、これは俺からの餞別だ」


 腰のホルスターから一丁の拳銃を差し出した。真っ黒な超大型リボルバーだ。銃身に白い文字で『Memento Mori』と書かれている。


「いいんですか?」

「ああ。少し前に拾ったものだからな。あんたにやる」

「じゃあ、ありがたく貰います」


 触れると光となって体に吸収されて脳内に音声が響いた。


『ユニーク武器を入手しました』


 大尉が最後に敬礼をして離れていったあと、手に入れた武器を早速確認した。


 ユニーク武器:拳銃『メメント・モリ』

 【13㎜マグナム弾】

 【装弾数:5発】

 パッシブスキル【貫徹】


 【貫徹】

 VIT値を無視してダメージを与える。バリア、魔法障壁など物理的防御でないものは確実に貫通し破壊する。



「いい武器だな」


 早速装備のアサルトライフルと入れ替え、取り出してみると重量によって手が沈んだ。


「重いな……」


 構えてみるが、今撃てば迷惑になると判断して撃ちはしない。


「どこかで試し撃ちしたいな」


 ベネットはワクワクしながら戦車に乗って移動を始めた。都市部から離れ基地へ戻る途中の何もない道の端に戦車を停め、降りてメメント・モリを取り出して構えた。


 ――が、一旦構えるのをやめた。


「……恐いなこれ。13㎜のマグナム弾って、ヤバいだろ」


 深呼吸し、改めて両手で構えてしっかりと握り込み、引き金を引いた。

 手の中で爆発が起きたような衝撃で腕が跳ね上がってそのまま倒れそうになり、同時に爆音を響かせながら弾が飛んでいく。


 ベネットはある程度の銃の知識があるからこそ手放さずに踏ん張れたが、拳銃として現実的でない強過ぎる反動に、思わずメメント・モリを地面に叩きつけた。


「こんなもの使えるかぁ!」


 気が済んだベネットはメメント・モリを拾ってインベントリに仕舞い、メニューを開いてログアウトボタンを押した。

 


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