贈り物は何ですか?(薔薇。幼馴染二人。唯行×公彦。出ているのは唯行とその妹のみ)
「俺は自分の部屋でゆっくり休みたいんだが?」
「まあまあ。久しぶりなんだし、いいじゃない」
十二月。街がいつも以上に気忙しくなる月。
唯行は、所用で実家に帰っていた。
日帰り出来る距離なのでさっさと帰る予定だったが、家族に引き止められ、致し方なく泊まっていくことになった。
食事が終わり、せめて自室でのんびりしようとしたところ、妹に捕まり、部屋へ連れ込まれ、今に至る。
用件はと言えば。
「そういえば、お兄ちゃんはアキ兄に何か贈らないの?」
恋バナだ。
家族の中では、妹だけが自分と公彦の関係を知っている。
ちなみに妹は、公彦の妹と付き合っているのだから世間とは狭いものだ。
何も兄妹揃って隣の家族と付き合わなくてもいいのに。
「……何の」
「クリスマスの」
わくわくした顔で聞いてくる妹に、
「何だいきなり」
唯行は、うんざりした顔を隠さず見せた。
「どうするのかなーって思って」
「……特に予定は無い」
「えー!」
予想以上の驚きに、彼はますます眉をしかめる。
「今までも特にしてなかったからな」
「なら、今年はしてみたら? バイトしてるんだし。意外とアキ兄も今年は贈ろうかなって思ってるかも!」
「どうだか」
「お兄ちゃんからでもいいじゃない。何か、贈りたいものを贈ったら」
贈りたいもの。
一瞬脳裏によぎったそれに、慌てて唯行は首を振った。
「……いや、やめておく」
「そんなに金欠なの?」
「違う。……。重いだろうし」
「重い? そんなに大きいものを贈りたいんだ?」
「…………何でもいいだろ」
「──あ!」
察しのいい妹が、何かに気が付いたようだ。
唯行は、チッと遠慮なく舌を打つ。
「ねえねえ、それってもしかして……」
「知らん。俺は合ってるも何も言わないからな」
「……ふふふっ」
妹は、楽しげに笑うと、
「私は、喜ばれると思うけどなぁ」
小首を傾げて言った。
その見透かしているみたいな視線が悔しくて、
「うるさい」
彼は、眉間の渓谷を更に深めてしまった。
END.