十六話、勇者の剣の中へ
図書館
アーリア達は世界樹に入るための鍵の情報を探しに図書館にやって来ていた。
「取り敢えず見つかった本はこれが全部ね」
シオンが世界樹についての本を集めて机の上に並べる、アーリア達はそれぞれ本を読み鍵についての情報を探し始めた。
「ふむ、ここに載っている記述によると、ダリア、お前の前世が鍵を作り世界樹に入れないようにしてから世界の各地に隠したようだ」
「あぁ・・・、そして、どこに封印されたのかは不明だと書いてある・・・」
「ダリア、思い出せない?」
ダリアの前世が世界の各地に隠したのならば、ダリアが思い出せるかもしれない、だからこそアーリアはダリアに思い出せないか聞く。
「無理だ・・・、前の私は成仏しちまってる・・・、記憶を渡して成仏してくれりゃ良かったが、そうしてはくれなかった・・・」
そうダリアの前世、先代勇者はダリアに何も残さずに成仏してしまった、そのためダリアはもう勇者の記憶を取り戻す事はできない。
「・・・ダリアの中に記憶がなくても勇者の剣ならどうかしら?」
ミーヤが勇者の剣にならば勇者の記憶が残っているのではないか?と言った。
「あったとしてもどうやって剣の記憶を見る?」
『我らなら剣の中にも入れるぞアーリア、今から行きたいのならば行くぞ、どうする?』
「行く!」
敵より鍵の場所を早く知るのは必須と言っても良い、何故なら出来るだけ多くの鍵を手に入れていた方が敵に対して優位に立てるからだ。
「お前だけには任せられない、私も行くぞ」
「うん!来て!ダリア!、と言うことで今から行ってくる!、ちょっと待っててね!」
アーリアはダリアが勇者の剣を取り出し机に立て掛けると手を触れる、そして目を瞑り剣とリンクすると内部に侵入した。
勇者の剣の内部
「ここが勇者の剣の内部か」
アーリア達は勇者の剣の内部に無事入り込んでいた。
「ただの広い部屋だね」
「うむ、ダリアの中のような長い廊下ではないようだ」
「こんな場所でどうやって探れば・・・」
ダリアは剣の記憶をどうやって探ろうかと顎に手を当てるため手を動かした、それに反応して白い球体が現れるとダリアの目の前に来る。
「ふむ・・・」
アリエルは白い球体に尻尾を当てて探る。
「これはこの空間の操作盤のようだ」
「へぇ・・・」
アリエルの言葉を聞いたダリアは操作盤に触れる、すると様々な剣の情報を示したビジョンが表示された。
「ダリア、調べてみなさい、前の勇者の記憶がこの剣の中にあるかもしれません」
「おう」
操作盤の操作権を持つダリアは操作盤を探り勇者の記憶を探り始める。
「あったぜ鍵を封印した時の記憶だ・・・、でも、見れる記憶は一つだけで、他は全部見れなくなってやがるな」
「・・・あなたの実力が足りないか、それとも勇者があなたでも順番にしか記憶が見れないように設定しているのかのどちらかでしょう、とりあえずは見れるものを見てみましょう」
「分かった」
メリアルナに促された通り、ダリアは見れる記憶を展開してみた。
過去、クリセリアを封印した後、メリアルナの目の前からも姿を消し一人で行動をするようになっていた先代勇者は一つ目の鍵を封印した地である、現在のメルルレーハ王国のメレル遺跡にいた。
『いつか僕が生まれ変わった時、僕の生まれ変わりはここまで来ることが出来るのだろうか・・・』
そう言って振り返った勇者の視線の先には沢山の現在のS級ランク以上の魔物が命を失い倒れている。
勇者はたった一人この場所にまで魔物を薙ぎ倒しながらやって来て鍵をこの遺跡の最奥地であるこの場所に封印しようとしているのだ。
ここに封印する理由はたった一つ、簡単には入れない場所に鍵を封印する事で悪意を持った者が鍵を手に入れれないようにし、クリセリアの復活を防ぐ為だ。
現にこの遺跡は現在でも難攻不落と言われており誰もこの最奥地には辿り着けていない。
『きっと出来るそう信じるしかないね、僕じゃ出来なかった事を未来の僕ならやってくれるそう信じよう』
勇者は最奥地の扉を開ける、中は何もない小さな部屋で台座だけがあった、勇者は台座に鍵を置くと部屋を出て扉に封印術を掛ける。
『さて・・・僕のこの最後の仕事が終わるまで後六つも難攻不落と言われている遺跡を僕だけで攻略しないといけない、頑張るとしようか』
封印した場所をクリセリアの復活を防ぐためにも自身の仲間にも知らせるつもりはない勇者は残り六つの鍵を封印するためこの遺跡を後にした。
「メレル遺跡、そこに一つ目の鍵がある」
「しかし・・・、勇者が倒していた魔物達はただの魔物ではない、現在のお前達では敵わない相手だ」
「メレル遺跡を攻略するためにももっと強くならなきゃ」
「だな」
今すぐにはこの遺跡は攻略出来ないであろう事が分かったアーリアとダリアはその事を仲間に伝える為現実世界に戻った。
図書館
「と言うわけで私達にはまだまだ攻略出来ない場所に鍵はあるみたい、だから先にブラッククラウンをどうにかしよう、あいつらを倒しておけば鍵を狙う人達はいなくなるからね」
「その為にも戦力集めだな」
「うん、王都に向かおう」
遺跡の攻略が実力不足のせいで今すぐ出来ないのならば、もう一つの目的であるラーメイヤ王国を取り戻すと言う目的を果たす為の戦力集めをする為に、アーリア達はこの国の王都に向かう事にした。
「しかし、今日はもう夕暮れ時だ、王都に向けて出発するのは明日にしよう」
「そうですね、暗くなると魔物も凶暴性が増してしまいますし」
今のアーリア達に攻略が無理であるのならばミランダ達にも無理だ、即ち少し時間に余裕が出来たアーリア達はこの日はもう休む為に宿に向かって行った。
宿
宿に戻ったアーリアは母に髪を解いて貰っていた。
「綺麗な髪ね」
「母様に言われた通りの手入れを毎日してるもの」
「ふふっ、私の言いつけを守ってくれていたわけだ、でも髪が綺麗なだけじゃ王様になるには足りないわよ、アーリア、女王には誰もが羨む美しさも必要なのだからね」
「・・・私、そんなに綺麗になれるかな?」
「ふふっ慣れるわ、あなたは美人さんだもの、この素晴らしい素材を磨けば凄く綺麗な女性になる事が出来るはずよ」
だから私と一緒に磨きましょうとミーヤは娘の肩を叩いた。
「うん、私頑張ってみるよ」
「私と一緒にね」
「うん!」
顔を見合わせあった親子は微笑み合うとベッドに一緒に寝転んだ、妻と娘の様子をベッドの上から優しく見守っていたクインは二人の会話を聞きつつ眠りについた。




