十一話
リアリンの実家
娘を含む四人の少女をリビングに案内したリアリンの母親は少女達を椅子に座らせるとコーヒーを用意する。
「それにしてもうちの子がこんなに友達を連れてくるなんて!」
「初めてだな!」
「なっ!、私だって、友達を連れて来た事くらい・・・」
「ないわよね」
「・・・」
魔法学校時代のリアリンは両親が心配するレベルのボッチであった、少女であるのにカッコいいに拘るなど所があったりする為、クラスの中で浮いていたリアリンは友達が出来る事が今までなかったのである。
そんな娘が友達を三人も連れて来た、親として嬉しいはずである。
「長年の心配が晴れて良かったわ、うちの子をよろしくね?三人とも」
「はい!」
うちの子をよろしくと言われたアーリアは元気よく返事をする、その間リアリンは頬杖を付きそっぽを向いていた。
「へぇ・・・、ならあなた本当に魔神の生まれ変わりなのねぇ・・・」
アーリア自身からその正体について聞かされたリアリンの母は、彼女も魔法使いであり過去の戦争についてもリアリンと同じ学校で習っている為知っているため、魔神であると言うアーリアの顔を驚いた顔で見つめる。
「少なくとも魔神には全く見えんな」
つまりは威厳が全くないと言うわけである、両親がリアリンの父の言葉の意味を理解したアリエルが舐められてるぞ!威厳を見せろと脳内で煩い。
「私に威厳なんてあるわけないでしょアリエル」
『だからと言ってなぁ・・・』
アリエルは自身と違って威厳など全くないアーリアに悩む。
『やはり悪事に全く向かない性格が原因かもしれんなぁ、善人にしか慣れん』
「良い事じゃん」
頭の中のアリエルの会話をするアーリアをリアリンの両親はポカンと眺める、それを見てリアリンが慌てて彼女の中には別の精神体が暮らしておりその者と会話をしている事を伝えた。
「頭の中の精神体と会話か、面白いな」
頭の中の精神体と会話をしている様子など少なくとも普通の人間では絶対に見れない光景である、だからこそリアリンの父親は面白い光景だと言う。
「・・・」
リアリンの父に面白いと言われたアーリアはあぅとなって赤面すると黙る、盛大な独り言を見られたようなもので恥ずかしかったのだ。
「あらあら照れちゃって、可愛いわね」
リアリンの母は照れるアーリアを見てクスクスと笑う、リアリンの母に笑われたアーリアの頬は更に赤くなった。
「茹で蛸みたいになってるわよ」
「ふふふお湯で茹でたらもっと赤くなるかもしれません」
「確かにな、鍋の準備するわ」
「もぉー!!みんなで揶揄わないで!」
仲間にも揶揄われ我慢の限界が来たアーリアは尻尾をブブブと振動させながらキレた。
「すまんすまん」
「あなたってやっぱり揶揄われた時本当に可愛いわ」
「だからこそついついなー、ごめんな?アーリア」
可愛い反応をするから仲間達はついついアーリアを揶揄う、アーリアも仲間達が自分を揶揄うことに悪意はない事はわかっているため謝られるとすぐに機嫌を直すのだ。
「さて、そろそろお昼ご飯にしましょうか」
「はい!、お母さんが作ったミートパスタが食べたいです!」
「うふふ、了解よ、作ってあげるわ」
「手伝いまーす」
「料理なら任せろ」
またどこからともなくエプロンを取り出すダリア、アーリアは鞄からエプロンを取り出し、二人はリアリンの母を手伝うと言う。
「助かるわ、具材を切って行ってくれる?」
「はーい」
リアリンが全く料理に向かないため娘に料理を教える事が出来なかったリアリンの母は同年代の少女達と料理が出来ることが嬉しく鼻歌を歌い始めた。
アーリアも合わせて鼻歌を歌い始め、明るい雰囲気で三人は料理を作って行く。
「そう言えばリアリン、彼氏は出来たか?」
「出来てませんよ、アーリア達と友達に慣れたのは超偶々な私に彼氏が出来ると思ってるんですか?」
「人見知りでもお前は美人だ、言い寄ってくる男はいると思うがなぁ」
「・・・気になる人ならいます」
リアリンはポツリと気になる者がいると言った。
「ほぅ!誰だ?」
リアリンに彼氏が出来ることに賛成派な父親であるリアリンの父はリアリンの気になる男とは誰か聞いた。
「秘密です」
プイッとそっぽを向いたリアリンは父の質問に秘密だと答える。
「なんだ教えてくれよ」
「いやです」
「なー」
「知りません」
(ふふっ、仲の良い親子ね、そしてリアリンの気になる人って、あの人でしょうね)
話を聞いていたシオンはリアリンの気になる男を察する。
(でもねぇリアリン、彼は難敵だと思うわよ、まっ頑張りなさいな)
心の中でリアリンの気になる気持ちが恋になる事を聖女として祈ったシオンは立ち上がるとアーリア達を手伝いに向かった。
都市カーイン
アーリア達が楽しく夜を過ごし眠った頃、街の中で黒装束を身に纏った男が夜道を歩く者にゆっくりと迫って行っていた。
「ひひっ」
飛びかかる直前、不気味に笑った男はダガーを引き抜くと道を行く者を刺殺す。
「あー楽しいなー、人を殺すのは、ひひっ!ひひひ!」
満足気に笑う男は死体を眺めた後ダガーを収め夜の闇に消えて行った。
四章は次の国に行くまで続きます。




