八話
平原
城下町の北の平原をアーリア達が歩いて進んでいる。
「牧場があるわね」
北の平原には牧場があり、ここに作られている目的としては王都の乳製品事情を支え担う目的がある。
「牛さんかわい〜!」
モーと鳴く牛を見たアーリアがきゃーと言いながら可愛いと言う。
「こいつが牛乳作ってくれてんだよなぁ、感謝だぜ」
ダリアがパンパン!と手を叩き食生活で世話になっている牛を拝むと、それに応えてか牛達はモーと鳴く。
「はう!?」
そんなダリアの頬を沢山いるうちの一匹が舐めてきた。舐められるとは思ってなかったダリアは変な声を出し、仲間達はその様子を見てクスクスと笑う。
「笑うなよなー!」
ベトベトになった頬を拭いながらダリアは三人の友と共に道を行く。
「山が見えて来たなあの先にタータフィールドって大平原がある、その先が国境だ」
世界樹にはリーファーレを起点にとにかく北に突き進めば到着する、そのためまずは国境を越える必要があるのだ。
「山登りなんて初めて!、崖とか登るの?」
「安心しなさい整備された道が山頂まで続いてるから」
「崖登りをしないといけない山は滅多にないですよね」
「ふむふむ、崖登りとかはないと、登ってる途中に落ちる自信しかなかったから安心だよ」
崖登りはしなくて良いと聞いたアーリアはホッと胸に手を当てる。
「運動神経が私達の中で一番良い癖に自信ないわよねあなた」
『そうだぞ?アーリア、自信を待て、実際に登る事はないがお主の体は崖登りくらい余裕な程度には鍛えられ始めておる』
『自信を持つ事も強くなるためには必要ですよ』
師ともう一人の自分の言葉を聞いたアーリアは二人がそこまで言うのならばもっと自信を持ってみようと思うのであった。
山
なだらかに高度を上げていく街道が山頂まで続く山道、周りは木々に囲まれており目を凝らして森の中を見てみると動物達がこちらの様子を伺っている様子が見えた。
「この山の山頂には無料で貸し出されている山小屋があるそうです、時間はもう夕方、今日はその山小屋で休ませて貰いましょう」
「そうね、急な坂道じゃないこの山でも足を踏み外して坂を転げ落ちる可能性がある、無理をするべきではないわ」
大抵の山の山頂には旅人が夜道を無理して進むのを止めるための山小屋がある、こう言った小屋が作られる程度には夜の山道を進むのは明かりがない限りは禁物なのだ。
「私達はランタンを持ってるから進めないって事はないんだけど、まっ無理はせずに進むか」
「無駄な怪我をしたくないもんね」
旅をする上で怪我は無駄でしかない、だからこそ無理は禁物なのである。
なだらかな山道を進み続けていると山頂に辿り着いた、四人は山小屋の扉を開けると中に入る。
「わー!かわい〜!」
山小屋の内部は全てが木が作られたアーリアの好みな内装であった、どれほど好みかと言うと思わず尻尾をブンブン振ってしまう程に。
「木が置いてあるわね、これで暖炉に火を付けろって事みたい」
シオンは木を手に取ると暖炉に置き、アーリアに火を付けてもらう。
「・・・黒い炎が暖炉で燃やすのには向かないな」
「黒いから部屋も明るくならないですしね・・・」
そうアーリアの炎は黒いため暗闇で灯してもちっとも明るくならない、そのため明かりには使えないのである。
「なんだこらー!火を付けてやったんだぞー!?」
「ううーん、あなたの炎は明かりには向かないわね・・・」
シオンはムキー!しているアーリアを見てあははと笑いながら砂で火を消すとマッチで火を付け直した、今度は赤い炎が木に灯り部屋が明るくなった。
「ねっアリエル、明かり用に普通の色の炎って私出せないの?」
『我の炎の色は高潔な黒のみ』
「つまり色は変えれないと変えられたとしても絶対に変えさせないと?」
『我の炎は誇りの一つだからな!、もう一人の我であるお前でも変えさせたりはせん!』
ここまで言うのならば変えたら煩そうだなと思ったアーリアは炎の色を変えるのはやめ、マッチで火を付ける事にした。
「さぁさぁ!夕ご飯ですよ!、こう言う山小屋定番の!、シチューを作ってください!」
「へいへい、ちょっと待ってな」
ダリアは台の上に布巾を敷き空間拡張されている鞄の中に入ったボックスを取り出す、ダリアが取り出したボックスは魔導冷蔵庫と呼ばれる魔道具で。
三日の間食物を腐らせずに保存が出来る優れ物だ、料理好きなダリアだからこそ購入した魔導具である。
「アーリア野菜を切っててくれ、私は肉の下拵えをする」
「はぁーい」
包丁を二本取り出したダリアは片方をアーリアに渡すと肉を切り始める。
「牛乳が沸いたわよー」
「良し」
牛乳が沸騰したと聞いたダリアはアーリア共に切った具材を全て入れると調味料を複数入れてから煮込む。
煮込み続けて一時間後シチューは完成した。
「美味しそうです!、いただきます!」
完成したシチューを四人は仲良く会話をしながら食べる。
旅をしている途中、外で食べるシチューは家で食べるよりも遥かに美味しく感じ、四人はあっという間にシチューを食べ終わった。
タオルで体を拭いたアーリアは窓際に座りうとうとしている。
「こーら、こんな所で寝ると風邪ひくぞ、寝袋に入って寝な」
「ふぁーい・・・」
ふぁとあくびをしながらノロノロと立ち上がったアーリアは寝袋に入ると即寝息を立て始めた、なだらかな道とは言え初めての山登りに疲れていたようだ。
アーリアが眠ったのを見た三人も寝袋に入ると眠りにつく。




