四話、初めての友達出来ました
宿
朝目覚めたアーリアはううーんと伸びをした。
「・・・」
机の上に置いてある剣、それは父が使っていた剣、十三歳の誕生日に何が欲しいか聞かれたアーリアは父の剣を欲しがったのだ。
この剣を貰ってからアーリアは一層身を入れて月に一度家に来る両親に褒めてもらう為に剣の鍛錬をしいつしか父と長時間破綻せずに打ち合える程の剣技を手に入れていた。
「大好きだよ、父様、母様、私、頑張るからね」
守ってくれた父や母はもういない、一人で生きていくしかないアーリアは朝の日課である鍛錬をする為、部屋から出た。
ギルド
まだまだ早朝と呼べる時間、剣の鍛錬をしてから顔を洗い鞄と剣を腰に付けたアーリアはギルドに来ていた。
「アンタがミランダが言っていた新人だな?」
「そうだけど、あなたは誰?」
ギルドに入るなり見知らぬ赤毛の短髪に赤目に赤い服と赤づくしな気の強そうな少女に話しかけられたアーリアは誰?と首を傾げた。
「私はミランダの妹、ダリアン、アンタと同じ十四歳さ、今日から私もギルドで働く事になってよ!、同じ新人であるアンタと組みたいと思ってここで待ってたんだ!」
グイグイ寄って来るダリア、アーリアは先日からやたらとグイグイ来られるなと思う。
「ほら!新人同士助け合いって必要だろ!?、組もうぜ!」
「良いよー」
「そうか・・・いきなりはダメか・・・、ん?」
いきなりの誘いであるため断られると思っていたダリアはアーリアが言った言葉がまさかの言葉であったため目の前の金髪美少女の顔を凝視する。
「今なんて?」
「だから組むよー、あなたと、私も一人でお仕事するのは寂しいし、その代わり私のクソ兄貴共を見返してやる!、計画に協力してもらうからね!」
「お、お前ふわふわ系な見た目してる癖に結構口悪いな・・・」
「そんな事ないよー、クソ兄貴共にだけだよー」
「そ、そうか、・・・、それじゃ私達で組むの決定な!、そして組んだ時点で私達はダチだ!、よろしく!アーリア!」
「うんよろしく、ダリアちゃん」
流れるような流れで、十四歳にして初めての友達が出来ました。
・・・いいのか?これで・・・。
初めての友達が出来たアーリアは彼女と共にクエストボードの前に立っている。
「早速依頼に行くぞ、アーリア、何やる?」
「そうだねぇ、今日の分の宿代を稼げるくらいの依頼かなぁ」
「なんだよー小せえな!一気に稼ごうぜ!、例えばこれ・・・」
ダリアが手を伸ばしたのはドラゴンの討伐依頼、後ろから見ていたミランダは妹の頭を叩く。
「い、いてーぞ!?」
「新人がいきなりAランクの依頼を受けようとするからでしょうが!、しかもあなたはCランク以外受けれないの!」
「ええー、徐々にランク上げないといけないのかよー、地道なのは嫌いだぜ・・・」
「冒険者になった時点で誰しも経験してきた事よ、私だってAまで上げるのに二年掛かったんだから、あなたもそれくらいは覚悟しておきなさい」
ちなみにミランダは十七歳である。
「あーい・・・、つーことで仕方ねぇけどCから受けるか」
「そうだね、ゴブリンにしよっか」
「何故いきなりゴブリンに行く?」
「ゴブリンにしよっか」
「だからなんでだ!?」
「ゴブリンで良いよ」
「おーい!?」
アーリアがゴブリン連呼するのはたまーに聖域の畑を荒らされた事があるため恨みある宿敵なのだ。
なのでゴブリン連呼する。
「一体狩るごとに今日のレートだと二千五百貰えるみたいだから良いけどよ・・・」
魔物の討伐依頼は日によって変わるレート制である。
今回は最近ゴブリンが増え気味だということもありレートは高めである。
普段のレートは千二百ゴールドほどだ。
「積年の恨みー!」
「ゴブリンに何されたんだマジで・・・」
イート平原
イート平原のゴブリンさん達宅をアーリアとダリアは見て回っていた。
新人である二人はゴブリンと言えどまだ討伐依頼に慎重になっており出来るだけゴブリンが住んでいる数が少ないお宅に訪問し狩るつもりだ。
「ここにしよう、二体しかいないよ」
「おう、最初は私に任せな!、お前に私の戦い方を見せてやんよ!」
背中に大剣を背負うダリアは引き抜くと構えた。
(・・・私なら構えられないな、凄い)
余裕で大剣を持ち上げたダリアを見てアーリアは単純に凄いと思う。
自分も鍛えているため、大剣を持ち上げる事は出来るだろうが、あんなに軽々とは上がらないだろうと思ったのだ。
「さぁ!行くぜ!!」
「うん!」
アーリアはダリアが駆け出そうとした瞬間、彼女の横を駆け抜けゴブリンさん宅に入って行く。
「ちょっと待てー!?、私がやるって話だろー!?」
暫くすると一体のゴブリンが怯え切った表情で家から飛び出して来た。
「・・・いらっしゃい、っと」
友人になったばかりのアーリアに良いところを見せてやろうと思っていたダリアは彼女に良いところを見せれなかったのに拗ね口を尖らせながら大剣で走って来たゴブリンを押し潰した。
「スッキリー!」
「それは良かったね・・・、次は私が戦う様子見ててね・・・」
「次いこー!」
「あの!聞いてます!?」
四軒目のゴブリンさんお宅にアーリアとダリアは来ていた。
「なんかヤバそうな奴いんぞ・・・」
「うちの畑を荒らしに来ていた奴等の中にもあんなに大きなのはいなかったよ」
四軒目のゴブリンさんお宅にお住みだったのはゴブリンキングだ、二、三軒のお宅を纏める頭領的な存在で他のゴブリン達より大きな家を作るのが特徴だ。
通常のゴブリンより知能が高く新人冒険者が挑むには部が悪い相手だ。
「デカさを見てもありゃヤバイ、やめとこうぜ」
「私の闇があいつを飲み込む・・・」
フッと笑い左目の辺りに右手を当てたアーリアは変なセリフを言う。
「・・・いきなりどうした?」
「私の闇が・・・」
「お前はゴブリン相手におかしくなるのどうにかしろ!?」
「私の・・・」
「ダメだこりゃ・・・」
今にも飛び出しそうなアーリアを引き留めながらダリアはゴブリンキングさん宅を後にした。
「はぁー、こんなにいっぱい戦ったのは初めてだよー」
昨日は初陣、今日は初の連戦と初めて続きのアーリアは草原の上に寝転ぶと気持ち良さそうに体を伸ばす。
「私もだよ、良い経験になってると思う」
新人である二人は戦い全てが経験だ、その経験を積み強くなるそれが新人冒険者と言うものなのである。
「そう言えば私はクソ兄貴共を見返せるくらいにビックになる為に冒険者になったけど、ダリアはなんで冒険者になったの?」
「ミラ姉が今は冒険者として稼いでるからそこそこ裕福になったけどさ、うちって父ちゃんも母ちゃんもまともな仕事につけなくてすんごい貧乏だったんだ」
「だからさ父ちゃんと母ちゃんを楽させてやるために私もミラ姉みたいに冒険者ギルドに入ったってわけさ」
「そういう事情があったんだね、なら尚更私と一緒に頑張ろ!」
アーリアはダリアの手を取ると頑張ろうと手を差し出す。
ダリアは差し出された手を取り大きく頷いた。
宿
「そこはお姉ちゃんに似なかったんだ」
「うるせー!あんな脂肪の塊いらねーんだよ!!」
姉妹でも格差は非情である。




