一話
アーリアの夢の世界
「んん・・・」
夢の世界に現れているベッドの上で眠っていたアーリアが身動ぎし瞳を開け身を起こす。
「おお・・・・、起きたかアーリア」
「おはよ」
ふぁぁとあくびをしながらアーリアは近付いて来たアリエルに挨拶した。
「呑気だなお前は、何日寝てたのか聞かんのか?」
「何日寝てたの?」
「ザッと三日だな」
「ほえー!?」
十四年の人生で三日も寝たのは初の経験であるアーリアは変な声を出した。
「それだけ魔神の力はあなたの体に負荷をかけると言う事です、弟子よ」
「うん・・・、なら今は私のとっておき、にするべきかな、どうしても勝てない敵とかに使う感じで」
「凄まじい強化率ですからね、魔神の力の解放は、そうするのが良いでしょう」
アーリアは師の言葉を聞いてホッと安心する、通常時は魔神の力を今は使えなくても、どうしても勝てない敵がいる場合の緊急時には使用許可が出たからだ。
「さて、アーリアよ」
「なんですか、アリエルさん」
「勇者ってどう思う?」
アリエルはアーリアに勇者の覚醒に協力させるのに際し少女の勇者へのイメージを聞く。
「・・・パッと思い付いたのが、宿敵?」
「・・・あー、あなたアリエルの別人格のようなものですもんね・・・、そりゃ過去に自分を討った勇者は宿敵ですよね・・・」
「うん」
宿敵だと言った時のアーリアの表情は真顔である、とことん勇者は宿敵だと精神に刻まれているらしい。
「だがなぁ、アーリア、確かに我とお主にとって勇者は宿敵だ、しかしクリセリアには勇者の協力がなければ勝てん、あやつはそれ程のちからを持つのだよ」
「・・・」
魔神の力を解放した自分だけではクリセリアに勝てないと言われたアーリアはムム・・・となる、やってみなきゃ分からないじゃないかと言いたげな表情だ。
「やってみなくても分かるのだよ、前回のあやつとの戦いは我も見ていたからな、そこにいるメリアルナと勇者と各国の兵を導入出来るだけ導入してなんとか倒した、その結果、勇者は片腕と片足を失ったのだ」
「・・・あの時勇者が体の一部を失うだけの価値はありました、彼女に世界を破壊される事を防ぎ、長きに渡る平穏な時代が訪れたのですから」
「でも、その平穏な時代は終わろうとしている?」
「うむ、魔族達が復活させようとしていると言う事は、あの女が精神世界で唆したのであろう、私を復活させればお前達の願望を叶えてやるとでもな、かつての我と同じ野望を持つ奴等はその誘いに乗ってクリセリアを復活させようとしているのだろう」
魔神の軍勢の戦力は多いとは言えない、だからこそ彼等は強力な力を持つクリセリアに自分達の野望を叶えるために期待しているのだ。
「復活の為には沢山の魂が必要だって言ってた、そんな事させるもんか」
「・・・魂を吸わせての復活は手っ取り早い方法というだけなのですよ、アーリア、大量の魔力を吸わせて復活させる方法もある」
「・・・それじゃ本当に魔族達を止めないといけないんじゃん、魔力が大量に集まる土地はこの世界沢山あるって本で見たよ?」
「うむ、奴等がそう言う土地に現れた何かをしようとしているのなら即座に駆け付け追い出す必要が我々にはあるだろう」
「なんとしてでもクリセリアの復活を止めるためにです」
分かりましたか?と言うメリアルナに対し、アーリアは大きく頷いた。
「そしてもしも復活してしまった時の保険として、勇者と魔神であるあなたを揃えておきたい、かつては敵同士だったあなた達が協力し世界を救う、実に素晴らしい」
「・・・勇者と協力しないといけないのには納得した、あなたの口ぶりだと勇者は既にこの世界にあるみたいだけど、誰なの?」
アーリアは誰が勇者なのかメリアルナに尋ねる。
「あなたの友、ダリアですよ」
「!」
ダリアが勇者だと聞いたアーリアは目を見開く。
「そっか、そうなんだ、ダリアちゃんが勇者・・・」
アーリアはダリアが勇者だと聞き胸に手を当てる。
「なら勇者を宿敵だなんて呼べないや、だってダリアちゃんは私にとってかけがえのない友達だから、リンちゃんやシオンもそう」
三人はアーリアにとって宝物、その中の一人であるダリアをアーリアは宿敵などと言ったりはしないのだ。
「ふふふ、あなたらしいですね、友達はなりよりも大切ですか」
「うん!、だってみんなは何も知らない私にたくさんのものを見せてくれるから!、だから大好きなんだ」
えへへと笑うアーリア、アリエルもメリアルナもその可愛らしい笑顔を見て微笑み返した。
「それでは、これからはダリアの覚醒も我等の目的となる、良いな?アーリア」
「勿論、覚醒したダリアちゃんがどこまで強くなるのか楽しみ!」
こうして私に新しい目的が出来ました、それはダリアちゃんを勇者として覚醒させる事です。
「それとアーリア、あなた達が行こうとしている世界樹なのですが、恐らくなのですが、クリセリアが復活するとすればあそこです、つまり世界樹に行くのは私達にとっては必須なのですよ」
「つまりクリセリアが復活するための何かが世界樹にはあるかもしれないって事?」
「そういうことです」
「分かった」
どうやら尚更世界樹には私たちは行かないといけないようです。
二人、との会話を終えたアーリアは光に夢の世界が包まれていくのを見守りながら現実世界に向けて旅立って行った。




