四話
王都リーファーレ
門の近くにでアーリアがちょこんと立っている。
その姿を見つけたレイラと両親二人は少女の頭にツノが生えているのを見て馬車の内部で硬直する。
「うちの子にあんなの生えてたかしら・・・」
「尻尾も生えてるぞ・・・?」
パニックである。
「あれかな?」
一方のアーリアはそれっぽい馬車見つけたので笑顔で手を振る、尻尾も一緒に楽しげに左右に揺れる。
「幻じゃなかったみたいよ・・・」
「この短い間に何かあったようですわね・・・」
ちょこんと立ってこちらに手を振ってくる少女が本物だと認識したレイラ達は馬車を止めると降りる。
「!?、父様!?母様!?、なんでここに!?」
アーリアは父と母が乗っていたのを見て驚いた顔をした後、二人にそれぞれ抱き着く。
その顔は会えるとは思ったなかった両親に会えて本気で喜んでいる顔だ。
「レイラならお前の元に案内出来ると知ったのでな、様子を見に来たのだ、してそのツノと尻尾はなんだ・・・?」
アーリアの様子を見に来たと伝えた父はツノと尻尾について早速聞く。
「えぇっと・・・、私は魔神みたいなの、私の中に今いるアリエルが教えてくれたんだけどね、私は生まれた時から魔族だったからどちらか言うとツノと尻尾が生えてる今の姿が私の本当の姿みたい、あはは・・・、こんなんじゃ国から追い出されるのも当然だね」
少し寂しそうに笑うアーリア、母はそんな娘を抱きしめた。
「でもね?、父様!母様!、私、友達が出来たんだよ?、四人もね!、それにこの国で家も買ったんだ!、これからどっちも見せてあげるね!」
「まぁ!、友達!、会ってみたいわ!」
「うむ、聖域で暮らしていた時点でお前が友を連れて来ると言うことはありえないことだったからな!」
「ふふっ、馬車に乗りなさい、アーリア達が買ったと言う家まで行きますわよ」
妹の髪を撫でつつレイラは馬車に乗れと両親と妹に言う。
それを聞いた三人は馬車に乗り込み椅子に座った。
「・・・」
母はアーリアの正面に座るとツノを触り始める。
「硬いのねぇ」
続いて気ままに動く尻尾を触る。
尻尾は触られた途端にピコっ!と動いた。
「こっちは柔らかいわ、この二つって感覚はあるの?」
「ツノには無いよ、尻尾は薄いけど感覚はあるよ」
「ふぅん」
レイラは尻尾には少しだけ感覚があると聞くと尻尾を掴み窓ガラスに触れさせてみる。
「どんな感じ?」
「冷たいかもしれないなぁって感じ」
「ふむ、大分薄い感覚のようだな、尻尾に何かをしてお前の反応見て楽しむと言う事は出来なさそうだ」
「私の尻尾はおもちゃじゃないぞー」
「ふふふ、分かっておる」
ぷくーと頬を膨らませて尻尾はおもちゃではないと言うアーリア、父はそんな娘を見てクスクスと笑う。
笑われたアーリアの頬は更に膨らんだ。
「あなた、からかいすぎるからアーリアの顔がフグみたいになってるじゃない」
「悪い悪い、それ」
父はアーリアの頬に触ると押す、するとプシューと空気が抜けた、アーリアはその間抜けな音に頬を赤く染める。
「あらあらいい音が鳴ったわね?」
「だな」
「むー!」
(ふふっ、父様と母様も楽しそうですわ、本当にアーリアの事を愛してらっしゃるのですわね、可愛がりすぎてて溺愛の域に達してる気がしますけども・・・)
また膨らむ頬、今度は母が押した。
今度は潰されまいと頬に力を入れ踏ん張ってみたが結局プシューとなってしまい、アーリアは再び頬を赤く染める。
「アーリア?、また膨らませると繰り返しになりますわよ?」
「ムムム・・・」
ループになると姉に指摘されたアーリアはプイッ!とそっぽを向いて拗ねた。
拗ねた娘を見てあらあらまぁまぁとなった母は隣に座ると拗ねないでーと言うがアーリアの機嫌は治らない。
「そう言えば彼氏は出来ていないの?アーリア」
「作り方が分からないのに出来ると思う?」
まだ十四歳、恋はした事がないアーリアに恋人の作り方など分からないのだ。
「恋人は作り方なんか教わらなくても出来るものよ?ねぇあなた?」
「あぁ、お前と会ったのは・・・」
結婚してから長いのに隙あらばイチャイチャし始めるのがこの両親である、娘二人はお熱い二人に微笑まし気な視線を送る。
「熱々タイムに入ってしまいましたし、私達は私達で何か食べます?、色々ありますわよ」
レイラは椅子の下から箱を取り出すと開ける、そこには沢山のお菓子が入っていた。
それを見たアーリアは食べる!と頷く。
「ふふっ、それじゃ紅茶を淹れますわ」
「うん、ありがと、お姉ちゃん」
姉から紅茶を受け取ったアーリアは家に着くまでの距離をゆっくりと進む馬車の中で家族と楽しく過ごす。
ラーメイヤ王都
「・・・父上と母上はどこに行った?」
「不明です・・・」
「・・・全く、相変わらず破天荒だ・・・」
その頃ラーメイヤでは国王と王妃がいないとてんやわんやになっていた。
どうやら行くと言えば確実に止められる為、知らせずにアーリアの元に来たようだ。
その結果騒ぎとなった。
「・・・そのうち帰って来る事を信じるしかありませんね」
「うむ・・・」
いないのならいないで業務は始めないと国が回らないため、王室は王無しで業務を開始した。




