三話
アーリア達が泊まる部屋
シオンとの話を終え彼女を仲間に加えたアーリアは明日に彼女が自分達に任せたいという依頼について聞く予定である。
夜、スヤスヤと眠るアーリアはとある音を聞き飛び起きる。
「はぅ!?」
外はアリエルの生まれ変わりであるアーリアが教会の中に長時間いる事に神がお怒りなのか豪雨に雷が鳴っている。
アーリアは雷に反応して飛び起きたのである。
「いきなり変な声出してどうした・・・、ってそんな隅っこに逃げるほどか?、ただの雷だぞ?」
飛び起きたアーリアは雷に怯えて飛び起き部屋の隅に逃げ込むと布団に包まりプルプルと震えているのだ。
「雷はただのなんかじゃないよ!、ピカッ!って光ってドーンって音がなるんだよ!?、怖いんだよ!?」
「部屋の中にいたら大丈夫だろうに」
「音が怖いの!!」
「こりゃ相当だな・・・」
アーリアがここまで雷に怯える理由は聖域で一人暮らしをしている時、幼い頃から雷が苦手であったのに一人で暮らす事になり雷が鳴ると誰にも頼れず一人で雷が収まるまで耐えることとなり、雷が鳴る度にトラウマゲージが高まっていき、現在ではゲージがMAXに振り切ってしまっているのだ。
「大丈夫ですよ、アーリア」
リアリンは優しく微笑むとアーリアを抱きしめた。
それでもアーリアの体の震えは止まらない、それを見てため息を吐いたダリアはアーリアを背後から抱きしめた。
「私が言いたいのはな?アーリア、私達がいれば怖くないだろって事だ、確かにちょっと前までのアンタは一人だったさ、でも今のアンタには私達がいる、一人なんかじゃない、そうだろ?アーリア」
言葉を言い終わったダリアは強く強くアーリアを抱きしめる。
「私も負けません!」
リアリンも彼女が出来る限りのパワーでアーリアを抱きしめた。
そうしているうちにアーリアの震えは止まりアーリアはいつしか二人の腕の中で眠っていた。
「小さい頃からずっと一人でいた弊害なんだろうなこういうのって」
ダリアはアーリアをベッドに乗せてやりながらリアリンと会話をする。
「はい・・・、ふとした時にアーリアは寂しそうな顔をしています、・・・アーリアは大好きですけど、あの顔は見ると私も寂しくなるので嫌いです」
「・・・アーリアに寂しい思いを二度とさせないようにしよう、こいつはずっと一人で寂しかったから十四になってもこんなに雷に怯えて震えちまうんだ」
「はい」
リアリンはダリアの言葉に頷くと眠るアーリアの柔らかな髪を撫でる。
翌朝、目覚めたアーリアは別の意味で震えていた。
「はずかしー!」
どうやら子供のように雷に怯えた事を思い出し悶えているようだ。
「まぁまぁ」
ダリアはニヤニヤしながらアーリアの肩を叩く、するとアーリアは更に顔を真っ赤にして布団の中に消えていってしまった。
「何してるんですか・・・、拗ねるといつも布団の中から出て来なくなるのに・・・」
「揶揄うと面白いからつい・・・、ほらー出て来いアーリア、修行すんぞー?」
「知らない!、一人でやれば!」
「それ見た事か」
「・・・、悪かったってー!」
シオンの部屋
拗ねるアーリアを三十分掛けて布団の中から引き出し一緒に修行をしたダリアは聖メリアルナ教会の依頼内容を聞く為三人でシオンの部屋に来ていた。
「ひゃあ!」
「入って来るなり叫けばないでくれるかしら・・・、こっちもびっくりしたじゃないの・・・」
「すみません・・・、アーリアは雷が苦手でして・・・」
修行を終えた辺りからまた雷が鳴り始め、夜に恥ずかしい思いをしたため、痩せ我慢をし無理にシオンの部屋まで来ているアーリアは、雷が鳴る度に悲鳴を上げてブルブルしている。
リアリンは嘘を言っても仕方がないためアーリアが叫んだ理由を説明する。
「意外な弱点ね」
「わ、私には弱点なんて・・・」
「ほーん?、ならピーマン食ってみようか!」
「苦いから、やっ!」
「はーい弱点」
「グヌヌ・・・」
流れるようにグヌヌをするまで至ったアーリアを見てシオンはクスクスと笑いながら一枚の紙を机の上に置く。
「これが教会の依頼よ」
「川の上流の調査?、偉く簡単な依頼ですね?」
川の調査をするだけなら見習いのシスターでも余裕で可能な依頼だ。
それなのにアーリア達に頼んだと言う事は相応の理由があるのだろう。
「既にシスターや神父を何人か向かわせているけど、何が起こっているのか分かっていないのよ」
川は明らかに水量が減っており確実に上流で何か起こっている。
既に農場や牧場に悪影響が出始めているため早急な対応が必要である。
「だからこそあなた達みたいな何日も監視出来る人達に監視をしてもらいたいの、私もあなた達の仲間として同行させて貰うわ」
「分かった、調査をしてみ・・・きゃぁぁ!!」
激しく発光してから雷がドーンと落ちアーリアはまた悲鳴を上げた。
「・・・先に言っておくけどあなたは意地を張らずここに残っていいのよ?」
「い、行くもん・・・」
行くと言いつつ顔は青い身はプルプルと震えている。
そんな状態でも行くとアーリアが言うのはアーリア自身は自覚はしていないが魔神としてのプライドが働いているためである。
「無理しない方が良いと思うのだけれどねぇ、あなたが行くと言うのなら止めようがないわ、行きましょう」
シオンはアーリア達を率いて町を出ると川の上流に向かう。
過去
「あのピカッ!と光ってドーンと鳴るヤツを止めろ!!」
「アリエルお嬢様・・・、それは流石に無理です・・・」
魔神となる前、幼いアリエルは布団の中でプルプルとしている。
アリエルとアーリアは記憶がないだけの同一人物であり苦手なものは全く同じなのだ。
その為雷が怖く執事に雷を止めろと言い困らせている。
「な、なら!我が!!」
ブゥゥンと右手に魔力を溜め空に撃ち出そうとするアリエル。
「無駄な事はお辞め下さい・・・」
執事は撃ち出す方向を間違えて近くの町が吹き飛んでしまう可能性を考え慌ててアリエルの手を下げさせる。
「な、なら鳴り止むまで抱きしめていてくれ・・・」
「はい、構いませんよ」
アリエルは腕を広げた執事に飛び付く、後に夫となる男に向けて。




