その隣で笑う者
その隣で笑う者
(あーー、おっかしい。)
私は、笑いを堪える。
隣では、王子が興奮し頬を紅潮させている。
もうすぐ解放されるのが待ち遠しのだろう。
私も待ち遠しい。
この日のために、私がしたことは、か弱い令嬢を演じること。ただし、狡猾で他人のモノを欲しがる、が頭に付くけれど。
協力者……とはいっても利害一致しただけの、上司と部下のような関係だけど……の王子が考えた計画通りに話が進んで行った。
面白いぐらいに、王子が曳いたレールを沿って誰しもが動く。
始まる前に王子が予言していた通りに、第二王子が現れたときは吹き出すのを抑えるのに必死だった。
私が王子に協力したのは、利害一致したからだ。私も王子も自由になりたい。恋愛感情なんてモノははなからない。
私は平民に戻り、祖父の元でその弟子と手を取り合いながら支え合い、細やかな幸せを得たい。
王子は、本当の夢を叶えるため、この国から出たい。
そして、二人ともこの国には、身分には未練がない。祖父に確認をとると、広く売りたいのに抑制してくる南侯爵家を疎ましく思い、他国への移籍を兼ねてから考えていたことが発覚。
そして、組み上げられた計画を元に、私たちは動きだし、今に至る。
追放されたあと、王子と私は家族と合流するまで暫く共に過ごした。
私と王子の関係は利害一致した上司と部下。王子曰く、部下の安全が確認できるまで守るのが上司の勤め、とかいっていた。
それ以外にも、私が幼い頃からの思いを寄せていた祖父の弟子の少年の存在が在ったのもある。
そして、予め連絡していた祖父とその弟子の少年…今は青年となった人、名前をグレイと言う、と合流し、王子は小説家としてデビューした。
その人気出る勢いは想定していなかったようで、嬉しそうに笑顔を見せていた。
王子は、私とグレイが結ばれるのを見届け、私たち家族が定住し、収入が入るようになったのを確認してから、予め決めていた報酬を私に下さり、旅に出ていった。
それ以来、一度もあっていないが、手紙がたまに届く。
必ず小説が一本添えられて。
あの人が幸せであることをその手紙で感じながら、私達も幸せを育んでいる。
噂に聞くと、あの国は今は共和国になっているらしい。まぁ、これも王子が予言していたのだけど。
『あの国は、王権制度のままだといずれ破綻する。
予め、平民のことを一番に考えれる貴族達には、共和国に切り替えれるように勉強させてある。王子として民への最後の義務だな。』
そう仄暗い藍色の瞳を細めながら城下を見つめる彼は、疲れているように見えた。と今なると思い出す。