踊らす者
(遂にこの日が来た!)
この国の王子である僕、シャルル・エンゲーベルトは興奮を隠せないでいた。
普段であれば、すぐさま平常に戻らないといけないが、今は壇上の上。これから行う計画のためにも、追加要素となるため、無理に納めない。
隣に立つこの計画を完成させるための相棒、南侯爵令嬢のアリッサ・ズゥードンも小さく震えてる。隣で見ると笑いをこらえてるのが分かるが、遠目だと緊張と恐怖を圧し殺そうとしているか弱い令嬢に見えるため、詐欺だと僕は思う。
この日のために、僕とアリッサは頑張った。
少しづつ、学園が停止しない程度に生徒会の仕事に力を抜き、アリッサに溺れてるように見せ、生徒会の仕事を全部部下達に押し付ける振りをして不満感を煽り、アリッサが虐めを受けている自作自演を本当に受けているように自作自演し、それが嘘であることが分かるように手の者を使って婚約者リーテ・エルドルテの耳に入るようにし、自己防衛の為の捜査やアリバイの確認を促させ、今日婚約破棄を行うという情報を業と漏れさせ、王宮に伝えた。
病弱と言われてる弟に、遠方から買い求めた万能薬を王弟の名前を使って送り届け、婚約者と弟の会瀬にも力を尽くし、その事実が漏れないように工夫した。
数多く見方につけた貴族達には、予めこれから国が荒れることを伝え、担っていた仕事を均等に分けて、教えさせた。
そして、最後の仕上げ。
この国を出て、今度こそ夢を……小説家になる夢を叶えるため、声を張り上げた。
『リーテ・エルドルテ!性根の腐ったお前を王妃の座につけるわけにはいかない!よって、ここに婚約破棄を宣言する!』
そうして、予定通り婚約者リーテ・エルドルテの断罪は進み、リーテ・エルドルテが反撃をする。
颯爽と現れた弟の姿を見たときは、必死に笑顔になってしまうのを堪えていた。
そして、国外追放となり、僕は予定通り隣国へ渡り、暫くアリッサと行方を眩まし、彼女の家族と合流したタイミングで小説家としてデビューした。
それから、アリッサが彼女の祖父の弟子と結ばれるのを見たあと、一人で旅をし、そこで別の小説家に会う。
奇しくも、あの騒動に立ち会った人間で、あの国出身の人々にいつも聞いてる質問をすると、理想の回答が返ってきた。
それに嬉しくて、幾つか教えると『この事を小説にしたい』と告げられた。
もちろん、断った。この計画の完成は、僕がすると決めていたから。
あの国には感謝している。
剣を学んだことで、旅をする際襲われても対処できるし、学があることで小説を書く上大変役立つ。
貴族のめんどくさい駆け引きやパーティーもネタになる。
だが、それ以上に、僕はあの国が大嫌いだった。
噂に聞くと、あの国は今は共和国になっているらしい。
そろそろ、筆を執ろうと思う。
この出来事を小説にし、事実を架空の出来事にするために。
人物表記の統一・修正しました。