すべてを見ていた者の日記-追記-
あれから数年が経ち、現在王国ではある小説家が人気を博してる。
隣国でデビューを果たしたその小説家は、さらりとした金髪に白い仮面で顔全体を覆い隠し、そこから覗く藍い瞳は、穏やかであると誰かに似ている色彩をしていると聞いた。そして、その隣には、またどこかで見たことのあるような面立ちの女性が傍にいるらしい。
その小説家は、あちこちで動き回って小説を書き綴っているが、けしてこの王国には訪れない。それは、永遠にだろう。
そう言えば、南侯爵領で質の良い紙を造る職人が弟子を連れてどこかに消えたらしい。
お陰で、南侯爵領の収入源が減り、大変らしい。
王国もまた、今まで政治などしたことない『第一王子』が無茶な政策を打ち出したりしており、政治を司る貴族達は不満を抱いて、王弟を担ぎ出す王弟派と王妹の配偶者を担ぎ出す貴族派、王子を傀儡にして操ろうとする王子派が睨みあっている状況らしい。
人々の前で、誓いあった東侯爵令嬢リーテ・エルドルテとは、些細な言い合いから、現在不仲であると、噂されている。
そして、政権争いに視点を置いたお陰で、王都は荒れに荒れ、人々が出ていくばかりらしい。
全く、如何にして彼の王子が、均衡を保っていたのかが、情勢が一転二転する度に明確に分かってしまう。
この間、王が倒れたと聞いたから、さらに政権争いは過激なるだろう。
その前に、私もここを離れるとする。
あのとき見た、”王子”の笑顔は、今も思い出される。
心配は無用だろうが、幸せに生きてほしい。