表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

プロローグと言う名の戯言。 4

 こいつの呆れるぐらい清々しい態度に反吐が出そうだ。

 だから、責任追及してもバチは当たるまい。


「おいおい、しれ~っと言ってくれるが、どうしてくれるんだよ!」


『うるさいのう……じゃから儂も難儀しとるのよ』


 これは本当みたいだ。まったく冗談に聞こえない。


「そもそも俺はアンタが創った世界の人間だぞ。創造神だったらなんとでもできるだろうと思うが……違うのか?」


『確かに通常ならそうじゃ。儂は創造神じゃ。儂にできぬことなどない。じゃが、お主に関して、儂のできることは限られるのじゃ……』


「へ?」


『ハッキリ言うぞい。儂の理解を越えた者など、儂、知らんもんね』


「し、知らんって、アンタ……」


『儂の持てる全権能を使って、お主の魂を一時的に隔離したんじゃ。そんで、次元幽閉に放り投げたんじゃな。なんとか肉体を創ろうと努力したのじゃが、結局は無駄じゃったのう。お主の強大な魂は、儂が創った肉体にまったく馴染まんのじゃ。そこでじゃ』


 な、なんだと……放り投げただと?このクソ野郎が!

 おっと、冷静に……だ。


「そこで?」


『半神半人がのう、その昔いたんじゃな』


「は、半神半人だと?それって、ペルセウスとかヘラクレスとかか?」


『ほう。よく知っとるのう。そうじゃ。そんな者じゃな』


 半神半人だって?神話の存在って実在したのか!俺はわりと神話とか好きだったから驚いてしまった。そんな超常の存在が本当に実在していたとはな。


 考えてみれば、神話として伝わるのはそれなりの事実があるからだろう。そうじゃないと、とっくに廃れているし、現在に伝わってこないと思う。神話は決して過大妄想狂が創り出した出鱈目の話ではないのだ。


 そうか。実在したのか。ロマンだな……。


『儂の配下が、戯れに人間と契ってできた者じゃな。そいつらはな』


「えっ?それじゃ、ギリシャ神話の最高神ゼウスもアンタの配下なのか?」


『お主、よく知っておるのう。まあ、儂の数ある部下の一人じゃ』


「は、はぁ……」


(こんな変態野郎の部下だったとは。ああ、俺のロマンを返せっ!)


 そう言えば……

 

 ギリシャ神話に限らず、人間と交わった神の話なんて推挙に暇がない。と、言うことは、この変態は本当に創造神なのか?とても信じられないが、思考停止してもなにも始まらない。考えを改め事実は事実として認めるしかない。


『異常な異能持ちで厄介な輩じゃが、仕方なく神に昇格させたんじゃ。配下も面白半分に人間にちょっかいを出すでのう……以後、そんな特例は認めない方針にしたのじゃな。奴らが神に昇格する時に捨てた生身の身体があるのじゃ。人間と比べるのがアホらしい程に強靭な身体がじゃな。人種は違うがそんなもん些細なことじゃ。ないよりはマシじゃしの。その身体にお主の魂を入れても爆散してしまうのじゃから困ったものじゃよ。あれも駄目。これも駄目。神に近い器でも駄目。やけくそで、神の器を創っても同じ結果じゃった。ほとほと弱ってな……』


「それで時間稼ぎに俺を放置プレイしたのか?盛大な時間稼ぎだな!」


『い、嫌味を言うでないわい!なにしろ魂を入れた瞬間、肉体が弾けて爆散するからのう……』


「ば、爆散って…神の身体なのにか?」


 爆散とは読んで字の如く、微塵にバラバラに弾け飛ぶってことだ。想像するだけでゲンナリする現象だ。間近で見たら、確実にトラウマ間違いなしだな。


『そうじゃ。見事に爆散じゃ。中々のスプラッターじゃったぞ?そこでじゃ、儂の家の倉庫を思い出したのじゃな』


「倉庫?」


『儂が創造神になる前から倉庫にあった、ある物を思い出したんじゃよ』


「ある物だって?それはなんだ?」


『それはじゃ、人間そっくりの人形みたいな物じゃ』


 人間そっくりの人形みたいな物だって?


 その、みたいな(・・・・・)ってなんだ?それは人間なのか?人形なのか?物なのか?なにがなんだが、さっぱり訳が分からない。


「なんだよ、それは!?」


 しかも、創造神になる前だって?創造神とは誰かに譲られるものなのか?世襲制か?弟子か?選挙なのか?理解できない話だ。


『儂もいい加減面倒臭くなって、いや、丁度良いと思ってのう。儂も知らんし、あってもなくてもどうでもよい物じゃったからの。それで、ぶっつけ本番で魂を入れてみたんじゃな。儂が思った以上に、お主に完璧に強固に馴染んでおるしの。 正直、余裕を見せていたんじゃが、内心ハラハラしとったんよね。今のお主の身体はそんなもんじゃな。ガハハハハハ』


「……物か者かよく分からないが、放置プレイよりマシかな?」


『マシだと思って貰いたいのう。苦労したんじゃからして。それにしても、お主の強大な魂は本当に厄介じゃった。儂がヨレヨレになって神力を使い、次元幽閉に留めて置いたのじゃ。じゃが、留める精々じゃったしのう……』


「へ~、そうですか?それはご苦労さんなことで。俺は別になんともないのだがね?」


 すると奴は苦虫を噛み潰したような顔になり、俺に聞こえないように、とんでもないことを囁いた。


『……けっ、始末しようにもできんかったんじゃ。この化け物めが』


 ……聞こえてるぞ。この野郎。


 俺はとんでもなく耳が聞こえるほうだからな。特に悪口がな。あるできごと(・・・・)のおかげで、他人の否定的な感情に敏感なんだ。


 まあ、いい。聞こえないフリをしておこう。


「……特に違和感はないし、むしろ調子がいいかもね?」


それ(・・)な以前どうにかしようと思って、いろいろと試したんじゃよ。 結局、儂にはどうすることもできんかった。儂の権能では傷一つ付けられなかったんじゃよ。逆に儂の神力が吸い取られるのよね。物凄く気色悪いから放置しとったんじゃよ』


「その、どうにか(・・・・)って、アンタ、なにをしたんだ?」


『儂の理解できない物は不愉快じゃから消去しようと思っての。あらん限りの攻撃をしたんじゃが、まったくの無駄じゃった。破壊しようと全力を尽くしても、儂の神力を全て吸収するんじゃよ。その度に目を見開いて、気色悪い笑みを儂に見せるのじゃ。何処かに捨てても必ず戻ってくるしの。おっかないから放置しとったのよね……それ』


 驚愕たる事実!今の俺の身体は、とんでもなく気色悪い身体だった!


「そ、そんな気色悪い身体に俺を入れたのか!勘弁してくれよ!怖いじゃないか!」


『ガハハハ!もう遅いわい!その身体はお主の魂と完全に馴染んでしまい分離は不可能じゃ!正直に言うぞい。儂には絶対無理じゃ。くやしいがのう。これも儂の為と思って諦めてくれんか?儂にしたら厄介払いできるしのう。むほほほ……』


「や、厄介払いって……こんちくしょうが……」


 おいおい、この変態、本当にやりたい放題だな。神ってこんなものなのか?勝手で傲慢で無責任な言動に激しくムカつくぞ。


 まあ、神話から紐解くと神とはそんなものだ。勝手で理不尽でいい加減な話も多い。特にギリシャ神話なんか最たるものだ。いちいち怒って相手にしても始まらない……と、無理矢理納得する。


 しかしこの身体、まったく違和感がない。むしろ調子がいい。俺の元の身体は爆散したそうだし、今さら分離もできないそうだ。気色悪いし怖いが受け入れよう。仕方がないのだから。


 さてと、身体も戻ったことだし現世に戻ってド田舎暮らしを満喫したい。代わり映えのない毎日だったけど、あの生活が懐かしい。一刻も早く戻りたいものだ。


 さらば変な場所。俺はド田舎に帰るのだ!


「まあ、アンタの不始末は置いといてやる。それはそれでよしとしよう。身体も戻ったことだし、さっさと現世に送って貰いたいものだがな?」


 奴は気不味そうに俺に背を向けてボソっと言った。


『む、無理じゃからして……』


「はあ?」


『お主のような変わり者は、儂の創った世界に必要なしじゃし……』


 この野郎、シラッとした顔で淡々とほざきやがった。感情を一切挟まない顔で、俺にとって残酷な宣告をした。


「おいおい……必要なしって、アンタなぁ……」


『儂には完全にお手上げじゃ。儂を圧倒する権能の持ち主の前ではのう……』


 奴は俺に醜い尻を見せ、やれやれと左右に顔を振る。


「お手上げって……特になにもしてないが?」


『儂が制御できぬ者を、儂が創った世界に置いておける道理はないぞよ?それぐらい危険な化物なんじゃ。存在そのものが害じゃよ、お主はの』


 おいおい、この言われようはなんなんだ?

 こんな理不尽なことってあり得るのか?


「おいおい……その強引な理屈は神としてどうなんだ!?」


『こう言ってはなんじゃが、お主は既に人間じゃないしの……』


 なんてこった!いきなりの人外宣言!


 あ、そうか、そもそも俺って死んでるんだった。今の俺は元人間で、死んじゃっているから、そう言う意味では既に人間じゃないかも知れない。不覚ながら妙に納得してしまった。


「に、人間じゃない?ま、まあ、そうかも知れないな……」


『その通りじゃ。理解が早くて助かるぞい』


「…そうか、人外か。まあ、それは仕方がないか」


 |人間じゃない。まあ、確かにそうだろうな。俺にはまったく自覚がないが、奴の人外宣言に納得してしまった。


 奴はと言うと、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。あ~とか、う~とか唸り出し頭を抱えだした。


 笑うのは失礼だが、まるで未開の原住民の儀式を見せ付けているような感じに見えた。妙な儀式が終わったかと思ったら今度はいきなり土下座ポーズを敢行した!


「………」


 なんの真似だか知らないが思わず面喰らってしまった。奴は土下座したまま、畳み掛けるように怒涛の謝罪を連発する。


『わ、儂の戯れにお主を巻き込んでもうしわけない!ごめんね!許して!すんません!謝罪します!突然じゃが、お主は新たな神となってしまったのじゃ!創造神の儂を遥かに超えた、全てを超越した神!ち、ちょ、超越神となったのじゃ~!』


 仁王立ちになるのはいいのだが、奴の姿に迫力がないな。どうでもいいが、とんでもなくうるさい奴だ。


 奴の声が高周波ようで頭に響くからうるさい上この上ない。なにかをごまかす為に、あえて大声を出す。俺にはそうとしか思えない。


 おいおい……目が泳いでいるぞ?あの滝のような汗はなんだ?それにだ、俺は大声を出して自分の意見を押し通すような奴を信用しない。


 まあ、奴の戯言は置いといて。


 創造神をも遥かに越えた超越神とはなんだ?いきなりそんなことを言われてもどう反応していいか分からない。


 整理しよう。

 

 つまり、神よりも偉い創造神。これはなんとなく分かる。創造神って言うぐらいだから全てを創った神の頂点だろう。


 こんな変態が創造神だなんて余りにも残念で理不尽だ。色々と突っ込みたいが取り敢えず一番偉い神って奴だな。その創造神を遥かに超え、全てを超越した神が超越神って奴なのか?


 う~ん……まるで意味が分からない。分からないから素直に聞いてみる。


「その超越神ってのはなんだ?そいつは何者なんだ?」


『と、ところでのう、この世界には他にも神がいるんじゃ。儂はその中でも頂点の創造神じゃから一番偉い!じゃがのう、そうも言っとれんのじゃ。お主が頂点になってしまったからのう。お主の強大な魂と儂の創ったピコピコハンマー君の膨大な神力。そして【人間そっくりの人形みたいな物】その全てが統合して一体化してしまったのじゃ。それでお主は特別な存在になってしまったのじゃな。正直言って儂はお主が恐ろしいわい……』


 怯えた目で俺を見る、創造神と言う名の変態野郎。


 ハッキリしたことは、俺はこの変態より偉くて強い上位の存在らしい。つまり形勢逆転というわけか。とんだ下克上だな。


 これは、とんでもなく面白くなってきたぞ……。


「……俺の質問に答えず、俺が恐ろしいだって?それは答える気がないと判断してもよさそうだな?」


 俺がそう言うと、奴は土下座ポーズから立ち上がり、俺を射抜くように見据えた。


 あ?この野郎、謝罪したかと思ったら睨みつけるとは何事だ?


 激しくムカついたから威圧を込めて睨んでやった。ふん。足が震えているぞ。このヘタレが。


 奴は精一杯威厳を醸し出そうとしているがその顔は青白い。ねっとりと全身から脂汗をダラダラと流している。


 汗の量も尋常ではない量だ。本当にこの変態は漫画野郎だ!

 まるで恐怖のあまりに、小便を漏らした残念な奴にしか見えないよな。


『わ、儂は創造神じゃ。お主のような特別が儂の世界に存在してもらっては困るのじゃ!』


 あ?なんだと、この野郎!お前の都合なんか知るか!


 ……と、思いっきり青筋立てて怒鳴り散らそうと思ったが留まった。一応聞いてみるべきだ。情報はなによりの宝だからな。知らないより知ったほうがいいに決まっている。


「……困る?困るとはどう言うことなんだ?」


『創造神を遥かに超越した神など、儂の創造した世界に必要ないのじゃ。どこか他所に行って貰わないと儂の威厳がなくなるでのう。儂にも配下の神がおるんじゃ。儂の面子が立たんのじゃ。神にも縄張りがあるから、儂以上に偉い神など邪魔じゃよ。急なことなんじゃが、お主にはこの世界を去って貰わないと困るのじゃ。どうか別の世界に行って頂けませんかね?お願いします……わい』


 大層な戯言を吐きながら、最後は尻窄みか?この腰抜けが。


 俺の怒りの爆弾に、更に火薬を投入するとはいい度胸をしている。奴はこれっぽっちも、俺に対する配慮を考えていないのが分かった。その言動が更に俺の怒りを誘う事に、この変態は気付いてないらしい。


 どうやら創造神という役職故に、謝罪の仕方を知らないみたいだ。まったく俺を気遣う素振りも見せやしない。清々しいぐらいだ。


 ……更に激しくムカついてきたぞ、この野郎!


「……あ?なんだって?もう一回、言ってみろ。俺は頭が悪いから、分かりやすく言ってくれないと分からないんだ。明確に、しっかりと分かりやすく言ってくれないと俺には理解できないぞ?」


『……………』


 急に口調が変わった創造神に呆れを通り越して殺意を覚える。こいつは謝罪なんてこれまで一度もしたことがないのが分かる。どうしても上から目線の命令口調なんだ。なにもかも気に入らないんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ