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★王様と侍女★

「王様、その『リンちゃん』様がお亡くなりになったと何故ご存知なんですの?」


先程芸術的なりんごウサギさんを剥いていた侍女のジョセフィーヌが

今は繕いものをしつつ王様の話相手をしている。


「んー?うん…薔薇が…、ワシの誕生日にはいつも薔薇が一輪匿名で城に届いてたんじゃが…

それがある年からぴったりと届かなくなったんじゃ。」


紫色の顔色のまま、王様は遠くをみる。


「ワシはな、リンちゃんのことをよく薔薇に譬えて口説いてたんじゃよ」


紫色の顔色の王様はほんの少し頬をピンク色に染める。

紫とピンクのまだら模様みたいでそれはカナリ気色悪い。


「美しい方だったのですね」


頬を染める王様に気を遣ってか、はたまたただたんに気持ち悪いからか

ジョセフィーヌは視線を手元の針に落したままそう呟く。


「うん、とても綺麗な女だった。

ワシもよく薔薇をプレゼントしたけど、リンちゃんの方が断然綺麗だった。

…そういえばリンちゃんの名前は薔薇に関係があったんだったかも」


あれー?とか言って王様は首を捻る。


「まあ、薔薇のお名前でしたの?

 そういえば薔薇にはよく女性の名前をつけるそうですから

 同じ名前であっても不思議はありませんわ」


「うむ…」


羽毛掛け布団をぎゅっと握りしめて王様が考え込む。

妃に見つからぬよう手紙のやりとりなどをしなかったのが悔やまれる。



「でも王様、薔薇が届かなくなったからといってその女性が亡くなったとは

限らないんじゃありません?なんらかの事情があって送る事ができなくなったのかも」


すっごいお金に困っていたとか遠くの町に引越してしまったとか…

ジョセフィーヌが人差し指をくるくる回す。


「いや、確認したんじゃよ。

いつも同じ花屋が『名前をおっしゃらない女性から王様へこの薔薇を届けるよういいつかって

参りました』と言って届けにくるから、その花屋に尋ねてみたんじゃ。

そうしたら『名前もおっしゃらない方だったし、よくわかんないんですけど

以前店にいらっしゃった時、堰をしていらしたので…

その何ヶ月か後に町中でお見かけした時も乾いた堰をしていらっしゃいました。

最近肺を侵される流行病が広がっていましたが

もしそれに感染していたのなら恐らくは…』と。」





「……でも、それはあくまでも『恐らくは」のお話しなのですよね?』


視線を落したまま静かに呟く。


「そうじゃよ。でもワシは臆病者じゃからそれ以上は調べんかった」


少し投げ遣りな調子でごろりと寝返りをうつ。




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