AIイラストの話、いったん全部バラして並べてみようか
※考察はChatGPTと壁打ちをしながら進めております。苦手な方は、ここで読むのをやめていただいた方がいいかもしれません
※本稿は議論を目的としたものではなく、現時点での私個人の考えを整理して置いておくものです。
先日、Xで生成AIイラストについての話をいくつか見かけました。
※以下は特定の投稿からの直接引用ではなく、見かけた意見の趣旨を私なりに要約したものです。
「将来イラストレーターさんにお世話になるかもしれない物書きが、イラストレーターさんの嫌がる生成AIを使うのはどうなのか」
「表紙イラストが欲しいなら、イラストレーターさんに発注すればいいのでは」
「文章を書くという創作をしている人が、絵を描くという他人の創作を軽んじるのは嫌だ」
といった趣旨の意見がありました。
私自身が生成AIを利用してイラストを生成している以上、当然こちら側に都合よく考えてしまう可能性はあります。
なので今回は、できるだけ「AIだから良い・悪い」から離れて、一つずつ確認してみることにしました。
最初に引っかかったのは、
「AIイラストを嫌がるイラストレーターがいる」ことと、「イラストレーターはAIイラストを嫌がっている」ことは同じなのだろうか?
というところでした。
当然、生成AIについての考え方は人それぞれでしょう。
全面的に反対する人もいれば、学習方法によって判断する人もいるでしょうし、自分の仕事で使わなければ気にしない人もいるかもしれません。
そう考えると、
「嫌がる人がいる」
から、
「その職業の人たちが嫌がっている」
へ広げてしまうのは少し乱暴かなと思いました。
そしてもう一つ。
「将来仕事で関わる可能性のある人の中に、その行為を嫌がる人がいるなら避けるべき」
を一般的な原則にするなら、なかなか大変なことになりそうだと思いました。
例えば物書きの皆さん、
・自分の書いているジャンルを嫌う人がいたら?
・自分の作品の価値観を嫌う人がいたら?
・将来仕事をするかもしれない編集者やイラストレーターの中に、その作品や表現が嫌いな人がいたら?
どこまで先回りしたら「避けた」ことになるのでしょうか。
……と考えていたら、
そもそもAIイラストって、何が問題なんだろう?
というところに戻ってしまいました。
ここからが長かったんですよねぇ。
ChatGPTから著作権法の〇条の〇とか言われた時は頭を抱えそうになりました(笑)
◆まず「AIイラスト」を一個の箱に入れない
調べていて一番分かりやすかったのは、
「学習」
「生成」
「利用」
を分けることでした。
「AIイラストは良いのか悪いのか」と一気に考えるから、ごちゃごちゃする。
なら一回全部バラしてしまおう、というわけです。
① 学習段階
よく聞くのが、
「他人の絵を勝手に学習しているんだからアウトでは?」
という話です。
ここで最初に知っておいた方がいいのが、日本の著作権法第30条の4です。
(これがさっきの頭抱えたやつです)
日本では、著作物に表現された思想や感情を「享受すること」を目的としない情報解析などについて、一定の条件下で権利者の許諾なく著作物を利用できる仕組みがあります。
AIの機械学習も、この「情報解析」に含まれ得ます。
つまり、
権利者の個別許諾を取っていないAI学習=即、著作権侵害
ではありません。
もちろん、何でも自由という意味でもありません。
たとえば、AI学習用として有償提供されているデータベースについて、その市場を実質的に迂回するような利用をすれば、「著作権者の利益を不当に害する」ものとして30条の4が適用されない可能性があります。
また、単なる情報解析ではなく、特定の作品や作品群の創作的な表現を出力させることまで目的としている場合には、「享受目的」が併存すると判断され、30条の4の対象から外れる可能性があります。
要するに、
「学習したからアウト」ではなく、「何のために、どのように利用したのか」が重要。
ということでした。
ちなみに「無断学習」という言葉もよく見かけますが、法律の話をするときは「無許諾学習」と分けた方がいいそうです。
許諾がないことと、違法であることは同じではないからというのが理由でした。
② 生成されたイラストはどうなのか
ここは驚くほど普通でした。
AIで作ったか、人間が作ったかにかかわらず、
既存著作物との「類似性」と「依拠性」があるか
などによって著作権侵害を判断します。
だから、「AIで生成した」という事実だけで、直ちに著作権侵害になるわけではありません。
逆に、AIを使って既存作品の創作的表現を利用したものを生成し、それが著作権侵害の要件を満たせば問題になる。
また、単に「作風が似ている」というだけでは、通常それだけで著作権法上の類似性が認められるわけではありません。
「作風やアイデアが共通している」ことと、「著作権で保護される創作的表現が共通している」ことは別です。
つまりここでも、
・AIだからアウト、ではない。
・出てきたものを見る。
と、ずいぶん普通の話になりました。
③ それをどう使ったのか
そして最後が利用方法。
ここにはいろいろあります。
・AIで作ったものを完全な手描き作品だと偽る
・AI禁止のコンテストにAI作品を出す
・他人の作品や作家本人のものだと誤認させる
・商標や肖像など別の権利を侵害する
・契約や投稿先の規約に違反する
こういったものは当然、それぞれ別の問題になります。
でもこれも、
「AIを使ったから問題」ではなく、「何をしたのか」が問題です。
たとえば「AIなのに手描きと偽る人が嫌い」という話なら、私にもかなり理解できます。
ただ、それはAIが問題なのではなく、制作過程について嘘をついたことが問題でしょう。
そこを混ぜてしまうと、また話がおかしくなります。
なお、ここで書いているのは「適法なら好ましい」という意味ではありません。法律上許されることと、個人がそれを好きか嫌いかは別の話です。
◆ここまで全部問題がなかったら、何が残る?
ここでようやく、
「倫理」
という話が出てきます。
仮に、学習段階・生成物・利用方法のいずれにも、具体的な法的・契約上・規約上の問題が確認されないケースであっても、
「AIイラストは他人の創作を利用しているから悪い」
と考えることはできます。
ただし、それはもう法律の話ではありません。
価値観や倫理の話です。
そして私は、
「私は嫌い」
と、
「だからあなたもやるべきではない」
は、かなり違うと思っています。
前者は個人の感情です。
後者は、他人にも適用しようとする規範です。
その価値観を他人にも「そうすべきだ」と求めるなら、
「なぜその人も従うべきなのか」
という理由が必要になります。
・権利を侵害するから
・不当に損害を与えるから
・著しく不公平だから
そうした根拠を示して、初めて他人にも適用できる倫理的な規範として議論できるのではないかと思います。
少なくとも、
「嫌がる人がいるから」
だけでは、私はそこまで届かないと思っています。
◆AIを使うことは、イラストレーターを軽んじることなのか
これも、かなり考えました。
私自身は、腕一本で自分の頭の中にある世界を絵にできるイラストレーターさんを本当にすごいと思っています。
むしろ生成AIを使っているからこそ、
「同じイラストレーターさんに継続してお願いできたなら、設定を共有しながら積み重ねていけるんだろうな」
「前回直したところも含めて、作品への理解を深めてもらえるんだろうな」
と思うことがあります。
生成AI、すぐ忘れますからね(笑)。
私は生成AIのイラスト制作でも、かなり細かく注文します。
・顔が違う
・髪が違う
・年齢感が違う
・身長差がおかしい
・頼んでいないところまで変えるな
……よくAIとケンカしています(笑)。
それでも、人間の優れたイラストレーターと同じものだとは思っていません。
だからといって、SNSに載せる一枚の補助ビジュアルまで、そのたびに数千円、数万円を支払って人間へ依頼するかと言われれば、私はしません。
予算も時間も有限です。
自分で必要な品質のものを描けるなら自分で描く。
自分では描けず、生成AIで目的を満たせるなら生成AIを使う。
その作品にとって人間の専門家にお願いする価値が大きい場面なら、人間に依頼する。
それは、
「イラストレーターという仕事に価値を感じているか」
とは別の話です。
専門家へ依頼しなかったことと、専門家を軽視していることは同じではありません。
「専門家へ依頼しないことが、その専門性を軽んじることになるのか」という点だけで考えれば、
料理人を尊敬していても、毎日の夕食をプロへ発注するわけではない。
写真家を尊敬していても、旅行中の写真を全部プロに撮ってもらうわけではない。
創作も同じだと私は思っています。
もし、
「生成AIではなく人間へ発注して、イラストレーターの仕事を支えてほしい」
という話なら、私は意味が分かります。
それは業界や職業をどう支えるかという価値観の話だからです。
とは言え、私はそれを他人にまで当然の義務として求めるものではないと考えます。
でも、
「人間へ発注しない=人間の創作を軽んじている」
まで進むと、私は賛成できません。
そこには少し距離があります。
◆そして、一番気になったのは「主語」
今回いろいろ調べるきっかけになったのは、
「イラストレーターが嫌がっている」
というような表現でした。
でも、本当にそうなのでしょうか。
AIを嫌うイラストレーターがいる。
それは分かります。
けど、中にはAIを条件付きで使う人もいるかもしれない。
気にしない人もいるでしょう。
だったら、
「一部の人が嫌がっている」
と、
「その職業の人たちが嫌がっている」
は分けた方がいい。
同じことは物書きにも言えます。
「物書きはAIを嫌っている」
なんてまとめられたら、私は普通に、
「いや、勝手に私まで入れないでくれ」
と思います(笑)。
人間は職業ごとに一個の脳を共有しているわけではありません。
◆結局、私が着地したところ
長々と調べた結果、私の考えはかなり単純になりました。
「AIイラストを一括して善悪判定するのではなく、学習方法・生成物・利用方法をそれぞれ具体的に見る」
学習段階では、著作権法第30条の4などの条件から外れる利用であれば、著作権侵害となる可能性がある。
たとえば、学習用として成立している有償市場を無許諾で迂回した場合や、特定作品・作品群の創作的表現を再現させる目的で無許諾利用し、著作権法第30条の4などの権利制限規定が適用されない場合などです。
生成段階では、既存著作物との類似性・依拠性などによって著作権侵害を判断する。
利用段階では、権利侵害のほか、詐称、規約違反、契約違反、誤認を招く使い方など、それぞれの行為を考える。
そして、それらに具体的な問題がないにもかかわらず、
「AIだから悪い」
とするなら、そこから先は法律ではなく個人の価値観や倫理の問題になる。
嫌うことは自由です。
使わないことも自由です。
人間のイラストレーターへ必ず依頼すると決めることも、もちろん自由です。
ただ、その価値観を他人にまで適用して、
「あなたも使うべきではない」
「使う人は創作者を軽んじている」
と評価するなら、
なぜそう言えるのかは、もう一段説明が必要なんじゃないかなと思っています。
生成AIについては、まだ新しい技術です。
法律も社会も、これから変わる部分があるでしょう。
だからこそ私は、
「AIだから」で一つの箱に入れて判断するより、問題視するなら、どこの何が問題なのかを一つずつ分解して、整理していきたい。
今のところ、それが一番しっくりきています。
……というところまで考えるのに、著作権法第30条の4まで読むことになるとは思っていませんでした。
SNSを眺めていただけなのに、どうしてこうなった(笑)。
―――――――――――――――――
※私は法律の専門家ではありません。
本稿の法律部分は、2026年8月時点で公開されている文化庁資料をChatGPTに提示してもらい、読んだうえでの個人的な整理です。
個別の事案について法的判断を示すものではありません。
【参考資料】
文化庁
「AIと著作権について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
文化庁
「AIと著作権に関する考え方について」
※上記「AIと著作権について」のページ内にPDF掲載
文化庁
「著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/




