再開
中学3年の夏。外ではコオロギと鈴虫の聲が鳴り響いていた。最近の朝晩は涼しくなってきたけれどまだ少し暑くて、夏を緑に彩っていた若葉には少しずつ紅色が見え始めるようになった頃。
その季節になると私の住む地域では毎年夏祭りが行われていて、毎年他の地域からもかなりの人が来ていて、よく賑わう祭りだった。
特に私達の祭りが一番盛り上がるのは、なんといっても最後の大迫力な花火。
暗い夜空に色とりどりの花を咲かせる様子は何年見ても毎年感動するものがあった。
それで私は祭りの最後に君を呼び出した。
私には小学校の頃からずっと好きな人がいて、それが君だったから。
おしゃれ好きな友達に口紅してもらったり、髪型も君の好みだって言っていたのにしちゃったりしてさ。あと浴衣も着たな。
ドキドキしながら、呼び出した花火が見える丘で待った。
待った。来るまで待った。いつ来てくれるかなって。
待ったけど、でも。結局、君は来てくれなかったな。
気づけば賑やかだった人混みも美味しそうな屋台の匂いも大迫力の花火も全部、消えて終わってた。
…ずっと、待ってたんだけどな。
5年後
私は大学生になり遊びにサークルにアルバイトとなんだかんだ忙しい日々を送っている。
その日も友達と飲み会をした帰り道だった。
今日は気持ちよく酔った、今の私はかなり酔っている。
果たして家まで帰れるだろうか。
そんなことを考えているとき、公園を通りかかった。
自然と遊具を見つめた。
なんとなく懐かしい気持ちに襲われる。
よく、君と遊んだ。
たしか君はブランコが好きでよくそれで遊んでいた。
「⋯また君のことだ」
さらに酔うために自販機で缶ビールを買った。
もう、諦めたはずなのにな
そう思いつつ缶ビールを一気に口に注ぎ込む
さすがにここまで酔うと確実に家まで帰れないだろう。
そこで私は少し休もうと考えた。
夜風に当たれば酔いも少しは醒める。
そう考えた私の足は自然とブランコの方へと向かっていた。
ブランコに乗ったは良いものの酔い過ぎて漕ぐことはできず、ただ座って夜風に座っていた。
しばらくして横のブランコに誰かが座った。
なんとなく、顔を見た。
驚きで手に持っていた缶ビールが落ちる。
—酔い過ぎて家には帰れないだろうと思った。
だが私を満たしていたその酔いは血の気とともに一気に醒めた。