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震火  作者: 天彗
4/5

地は揺れ、大地が裂ける

 空を裂くような轟音とともに、無数の爆撃機が飛んできた。爆撃機は一斉に爆弾を怪物目掛けて落とした。爆弾は怪物の背中で次々と爆発を起こした。すると怪物の背びれが爆発によって吹き飛んだ。怪物は叫び、うなだれた。


「効いてる、効いてるぞ!」


 アベルは叫んだ。


 爆撃機の攻撃が終わると、すぐさま大量のヘリコプターが飛んできた。ヘリコプターは怪物を取り囲んだ。そして、一斉に射撃を開始した。怪物は微動だにしなかった。地上には戦車が並んだ。照準を怪物に合わせ、一斉に砲撃した。2隻の戦艦も砲撃した。怪物はピクリともしなかった。


「いいぞ、これなら……」


 アッルが言った。

 その時、怪物の背中で炎が燃え上がった。炎は徐々に形を変え、やがて背びれの形になり、黒く変色し、背びれに変化した。怪物が顔を上げた。前足が赤く光っていた。


「な、なんだ……?」


 マットが言った。次の瞬間、怪物が2本足で立ち上がった。前足の光度がどんどん増していく。


「ヤバいんじゃ……」


 リカルドが言いかけたその時だった。怪物が倒れ込み、前足を地面に叩き付けた。前足から地面にエネルギーが放たれ、ナークシティ全体が地震に襲われた。いくつもの建物が崩れ、土煙が舞う。隊員たちはあまりの揺れに、倒れてしまう者もいた。


「いったい……何が……」


 アッルが言った。怪物は咆哮を上げた。再び前足が赤く光る。ヘリコプター、戦車、戦艦は再び攻撃を始めた。怪物は5本の指を地面に突き刺した。すると赤い光は地面に吸い込まれていった。


 再び地面が揺れた。先ほどよりも揺れは小さいが、隊員たちはその場にしゃがみこんだり、パニックになったりしていた。


「ヤバいって!また、さっきみたいなのが……」


 アベルが叫ぶ。


「落ち着けと言いたいところだが……あれを見せられてしまってはな……」


 マットが言った。恐怖で体が震えていた。

 隊員たちは先ほどのような大地震を覚悟していた。しかし、怪物は全く別の攻撃をしてきた。


 突然、1台の戦車の下の地面が裂け、そこから赤い光がもれだした、と思ったら、その裂け目から溶岩が吹き出した。戦車はあっという間に溶岩に飲み込まれてしまった。


「……マジ?」


 アベルは呆然と呟いた。


「なんてやつだ……」


 マットが言った。リカルドが怪物を見て言った。


「やっぱり……人が戦って勝てる存在じゃないよ」


 溶岩に飲み込まれた戦車の周りにいた戦車は急いで退却しようとした。しかしその瞬間、地面が盛り上がり、怪物の咆哮と同時に、火山噴火のような爆発を起こした。戦車は周りの地面と一緒に吹き飛び、全て大破してしまった。


 吹き飛ばされた地面の破片は噴石となって隊員たちに襲いかかった。隊員たちは逃げ惑った。噴石はヘリコプターにもダメージを与えた。噴石が当たったヘリコプターは壊れて墜落した。噴石は怪物にも降り注いだが、怪物には傷一つ付かなかった。


「あ、あかん。もうおしまいや……」


 アベルが呟いた。怪物の暴走は止まらなかった。再び指を地面に刺し、噴火を起こし、街を溶岩で塗り潰していく。ナークシティはもはや地獄と化した。


「隊長、撤退するしかありません」


 マットが言った。しかしアッルは動かないでいる。


「隊長!僕たちではもうどうにもできません!」


 リカルドが叫んだ。


「……我々は軍隊だ」


 アッルが言った。


「この街を守るのが我々の役目だ、見捨てるわけには……」


「隊長さんよお!そんなこと言うてる場合やないやろ!」


 アベルはアッルに言った。


「じゃあこのまま黙って見ていろというのか⁉この街が滅びていく様子を、何もせず、ただ黙って見ていろと⁉」


 アッルが言った。


「……お前の街への愛情は、昔から変わらないな、アッル」


 マットが言った。


「マット……」


「……だが現状、あの怪物を倒せるかどうか怪しいだろう。勝てない戦をするくらいなら……」


「……クソッ!」


 アッルは吐き捨てるように言った。その時、無線機が鳴った。


「アッル!聞こえるか!」

「本部!」


 アッルが無線機に言った。マットとリカルドも無線機に耳を傾けた。無線からは男の声が聞こえてきた。男は言った。


「あの怪物に対抗できるかもしれない方法が1つだけある……核を使うんだ」


「核?……本気で言ってるんですか⁉」


 アッルが聞き返した。男は言った。


「ああ、あの怪物も所詮生き物だ。どんな生物も核の前には無力。核ならヤツを倒せる」


「いや……核なんてものを使ったら、それこそナークシティが壊滅しかねない!私は、この街を守るために……」


「アッル……もう決まったことなんだ。それに、核はすでに発射された」


「……は?」


 アッルは言った。無線の男は話を続ける。


「今から10分後には着弾する。それまでに避難しておけ。……アッル、これも街を守るためなんだ」


 無線が切れた。アッルは頭を抱えた。


「どうして……」


 マットがアッルの肩に手を置いた。


「隊長……どうかご決断を」


 アッルは微かに頷き、撤退命令を出した。隊員たちは地獄のような風景となったナークシティを走り、撤退した。背後では怪物が咆哮を上げ、足を踏み鳴らしている。何度も地面が揺れた。何度も溶岩が吹き出した。隊員たちは必死に撤退した。そして、先ほどまで隊員たちが戦っていた場所は

 青白い光に包まれた。

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