再来
事件から半年
ナークシティ冲に1隻のボートが停泊していた。そのボートには2人の男性と2人の女性が乗っていた。
「カンパーイ!」
1人の女性がビール瓶を掲げ、皆はそれにならった。
「いやー、今日は絶好の航海日和だな」
「宴会にもちょうどいい。しかも海の上って、最高かよ!」
2人の男はビールを飲みながらそんなことを言う。
「ねぇー!写真とろー!」
1人の女がカメラを取り出した。
「よし、皆並んでー!撮るよ!はい、チーズ!」
カシャッという音が鳴った。
「おー、いい感じじゃん!これ後で共有して!」
「おけー!」
「ねぇー、もう1杯飲もうよー!」
「賛成!」
4人は缶ビールを開け、もう一度乾杯をした。
「あ、ゴミどうしよ」
1人の女が周りを見る。
「ゴミなんかその辺に捨てときゃいいだろ」
1人の男が海にビールの缶を放り投げた。
「あ、確かに。海なんて天然のゴミ箱みたいなもんよね」
女もそれにならった。
「ハハッ、ウケる~」
もう1人の女も缶を投げた。そのとき、突然海中から長い岩のような物が飛び出し、缶を船に跳ね返した。
「……は?」
「なんだこれ?」
4人はその岩のような物をぽかんと見つめた。その岩のような物は、ボートに向かって倒れてきた。
その日の夜のニュース
『本日午後2時20分頃、ナークシティ沖で漂流する1隻のボートが見つかりました。ボートは原型を留めておらず、警察は事故と事件の両面から捜査しています』
ナークシティ海岸
海岸に軍隊が集まっていた。
「なんかに叩き潰されたみたいだね」
海岸に打ち上げられたボートを見て、1人の男の隊員が言った。彼の名は、リカルド。ナーク軍の隊員だ。
「やっぱクジラとかじゃねぇの?軍隊が出るほどのことじゃないと思うんだが?」
別の男の隊員が言った。彼はアベル。彼も隊員の1人だ。
「目撃者がいる。何か、岩のような物が海中から付きだし、ボートを潰したと」
また別の男の隊員が言った。彼は、マット。彼も隊員の1人だ。
「あと、近くにいた漁船のソナーに、巨大な黒い物体が映ったらしいし」
リカルドが言った。
「でもな、海にいて船を沈められる巨大生物って、クジラ以外にいるか?」
アベルの問いに2人は黙った。
「思い付かないだろ?やっぱクジラなんだよ。デカイし、岩みたいにゴツゴツしてるし」
「しかし、証言を聞いた限りだと、クジラにしてもデカい。何かもっと証拠は無いのか?」
マットが問いただした。
「見間違いかなんか……」
「そこ!静かに!」
1人の男の隊員がアベルを指差して言った。
「またお前かアベル。いつになったら分かるんだ?」
「なんで俺だけ⁉」
「まったく、仕事中は私語を慎め」
その隊員は、腕を組みアベルを睨んで言った。
「お疲れ様です。隊長」
リカルドは、その隊員に敬礼した。隊長の名はアッル。彼はナーク軍の中で1番若いが実力はトップクラスであると評判だ。
「隊長、船を潰したのはクジラなのか?」
マットがアッルに聞いた。アッルはそれに答える。
「現時点では何も言えない。私もクジラではないかと疑ってはいるが、証拠が無い。船を調査したが、生態組織のようなものはどこにも無かった」
「では、いったい何が?」
マットが訊いた。
「分からん。しかし、何かがいるのは確かだ」
アッルは言った。
「え?ええ⁉」
突然アベルが海を見て言った。
「アベル!私語!」
「いや、隊長さん!戦艦なんか使うんか⁉」
アベルは海岸に向かってくる3隻の戦艦を見て言った。
「ああ、あれか。本部が寄越したんだ。何に使うか知らんがな」
アッルがアベルの言った方向を見ながら答えた。
「戦艦を寄越すとは……ナークシティは戦争でも始めるつもりか?」
マットが顎に手を当てながら言った。
「ちょっとマットさん、物騒なこと言わないでよ!」
リカルドが言った。
「おっと、失礼した」
「しかし……戦艦……本部は何か知っているのか?」
アッルは呟いた。
「戦艦が出てくるほどなんだ。かなり手強い相手なのでは?」
「クジラが?」
マットの意見にアベルは疑問を浮かべる。
「別にクジラだと決まった訳では無い。さあ、調査を始め……」
マットがそう言ったとき、冲の方に、長く黒い物体が姿を現した。