シンキングパパ1
本日より更新再開します。よろしくお願いします。
今章からは隔日更新となります。
凛さんとの再会、そしてグランドアースドレイクとの戦いから三日が経ちました。
ティーナさんの長距離転移によって短時間でダンジョンを出た私たちですが、外に出ると探索協会お抱えの救助部隊が現着したところでした。
彼女の動画はリアルタイムで配信されていましたし、救援要請は当然ゲート外の探索協会にも届いていて、私もシーカーデバイスでやり取りをしていました。加えて凛さんの母親、私の元奥さんでもある佐世子さんは前島グループという大企業のお偉いさんですので、対応も迅速だったのではないでしょうか。お金がある人間とない人間の差というのはこういうところで出るのですね。
治癒系スキルや飛行スキル保持者もいたようですし、もしかするとティーナさんの転移を使わずとも吉野さんは救われたのかもしれません。まあ、たらればを言っても仕方ありません。ティーナさんのお力で吉野さんが助かったのは事実で、これが間違いなく最速でした。
その後についてですが、凛さんは搬送される吉野さんに付き添って救急車に乗って去り、私は探索協会の指示で探索協会埼玉支部へと報告に行くこととなりました。
私も吉野さんとは知らぬ間柄ではありませんし、付き添うべきかと思いましたが、身内ではないために探索協会への連絡を優先しました。あのグランドアースドレイクはランクA、厄災級と呼ばれる個体の次に危険なランクの魔獣だそうで、同種の魔獣が他にもいる可能性がある以上は状況報告の義務があるのだとか。
一応前妻の佐世子さんにもショートメールを送っておきましたし、佐世子さんからは後日改めてお礼をとの返信が後に届いておりました。
倒したグランドアースドレイクについては、あの場では魔石だけを採取し、そのほかの部分は沢木さんに勧められて運び屋組合に回収依頼をかけさせていただきました。
私は知りませんでしたがそうしたサービスがあるのですね。連絡先は聞いたので必要な時があればまた利用してみようと思います。
ちなみにあの凶暴なドラゴンからは鱗や骨、肉など様々な素材が手に入ります。海の鯨、迷宮の竜と言われるだけはあります。
それとホテルに戻るとユーリさんからも感謝をされました。なんでもユーリさんは凛さんが十三歳の特別免許取得時(一般的な免許取得は十六歳からとなります)前から探索者としての教育係をしていたそうで、凛さんがおが肉所属だったのもその関係からだとのこと。
私と凛さん、それに佐世子さんの関係を彼女は初めて知ったそうで、何だか悶えておりました。まあ教え子の父親と関係があるというのは気恥ずかしいものがあるのかもしれませんね。
それにしても凛さんが探索者ですか。
私が前に会った時にはすでにダンジョンに潜っていたとなると私の先輩となるわけです。私自身も探索者なわけですし、危ないから辞めろなどと父親ヅラして言える立場でもありません。その資格が私にあるとも思えません。
けれども私はアレから凛さんがグランドアースドレイクに襲われて殺される夢を見てしまいました。それは恐ろしいことです。知らぬうちに娘が死んでいたかもしれないというのは。
「というわけで、どうにかできないものかと思いまして、何か私にできることはないでしょうか?」
「なるほど。それで私に相談を持ちかけたのはゼンジューローとしてはナイスな判断よね」
そんなわけで私はティーナさんに相談することにしたのです。彼女は私の記憶を保有しているわけですし、当然凛さんのことも私と同じくらいにご存じです。
見方を変えればティーナさんも凛さんの父親のようなものなのです。ですので何か良いアイディアをいただけるかもしれません。
【次回予告】
善十郎は親だった。
愛しき娘の死は恐怖であった。
であればどうするか?
娘を死なさぬ唯一の方法とは如何に?
そう。その答えは力である。
何者をも退ける圧倒的な力。
言葉なき時代の原初の交渉。
即ち暴力。
我が娘にはそれが必要だ。
善十郎はそう決断したのであった。