ピンチザドーター7
日付間違えて二話続けて出しちゃった……
最初に公開したものは未完成版だったので現行版は若干修正入っています。
言い回しを少し直したのと運び屋組合の名称が変更されているのと、運び屋組合に依頼をかけたのが探索者協会になっていますのでご注意ください。
第四章はこれにて終了。明日は登場人物紹介のみの更新。五章はまだ完成してないので次の更新は一週間後くらいになる予定です。
「一週間ぶりですね大貫様」
「はい沢木さん。お元気そうでは……ないようですね」
「緊急対応が必要な案件がここ一ヶ月で何件もありまして」
「それは大変ですね。私も最近は忙しくて。探索者のお仕事というのは思った以上に色々とありますね」
色々とあるのはあなたの関わっているところだけです……と言いたい気持ちをグッと抑える私です。沢木です。探索協会埼玉支部の一般職員沢木でございます。
本日は平日ですので、緊急での呼び出しなどはありません。ただ、まあバタバタしてます。何しろ秩父ゲート先のランクDダンジョンでランクA魔獣のグランドアースドレイクが出たんです。
このグランドアースドレイクというのは竜種の中では空も飛べない個体であるため、比較的倒しやすいなどと言われていますがとんでもない話です。
飛べないことを帳消しにするほどの頑強な鱗に護られた巨体と、その巨体を用いた突撃は巨岩をも破壊するパワーがあります。同じ竜種が相手だろうと空に逃げられなければ、タックルで転がし、放つブレスを無視しながら捕食することもあるほどの怪物なのです。またブレスもマグマブレスというもので、その場にしばらく残り続ける厄介なものだとのこと。
そんな怪物を目の前の大貫氏は仕留めました。
普通に考えれば冗談にしか思えない。けれども大貫氏は普通ではありません。レベル50相当の召喚獣を倒したのだから、やれないことはないのでしょうね。
メイチューバーのストリーミング配信で倒す瞬間まで流れていますし、証拠保全能力のあるシーカーデバイスの映像記録もソレを事実として肯定しています。それにグランドアースドレイクの魔石も確認できましたし、先ほどグランドアースドレイクの回収にいった運び屋組合から回収の報告もありました。
大貫氏は救助優先でそのまま戻ってきましたが、こちらの判断で運び屋組合に依頼をかけさせていただきました。アレほどの獲物ですので放置はあり得ません。もちろん素材は大貫氏にお渡ししますので、この人はまた大きな収入を得ることになりました。
そのための手続きや現場報告に加えて、一応新人なのでメンタルケアの面もあっての今回の呼び出しとなっていますがメンタルケア? いる?
「沢木さん?」
「ああ、いえ。なんでもありません大貫様。担当になった案件が中々難しいものが多くて」
「分かります。私も前職の時は、上司から厳しい案件をよく回されていましたから」
「あ、あははは。ゴホン。ともかく、今回はご苦労様です。大貫さんが救助した彼女はウチのスポンサーのひとつでもある前島グループのお嬢様と彼女の護衛だったんですよ。大貫様が同盟を結んだオーガニックのスポンサーでもありますね」
「はい。そのようですね」
「今回の件では緊急対応に関しての報償金と前島グループからも謝礼が届く予定となっています。グランドアースドレイクの素材に関しましても全て大貫様のもので問題ないとのことでした」
「そうですか。承知しました」
そもそも大貫氏ひとりで倒したのだから当然ですけど、線引きはキチンとしておかないと揉めますからね。それにしても前島グループの名前が出ても反応が薄い。大貫氏は以前が企業人なのだから、下手な探索者よりも反応があって良さそうなものなんですけどね。肝が据わってるということですか。
そう思っている私に大貫氏が口を開きました。
「そうだ。沢木さん」
「なんでしょう?」
「シーカーグランプリでしたっけ。それの新人戦に参加しようと思うのですが、手続きをお願いできますでしょうか?」
「はい?」
何を言っているんですか、この人?
【次回予告】
愛する娘のために何ができるのか。
己にそう問うた男の決断は、世界に激震をもたらした。
そして太古の御技、妖精たちの秘術が今現代に蘇る。
その奇跡は果たして男に何をもたらすか。
今はまだ誰にも分からない。